Shopifyストアをモバイルアプリ化することは、多くのEC事業者にとって重要な選択肢のひとつとなりつつあります。公式APIや開発ツールの進化により、以前よりも容易に自分のオンラインショップをiOSやAndroid端末向けのアプリとして提供できるようになりました。
本記事では、Shopifyストアのアプリ化における基本概念から、アプリ化できる主要なShopifyアプリの紹介、料金プラン、そして導入時の注意点まで、包括的に解説します。Apple App StoreやGoogle Playでの審査プロセス、セキュリティとプライバシーの配慮など、実践的な情報も含めて、アプリ化を検討する際の判断材料を提供します。
Shopifyストアのアプリ化とは
Shopifyストアのアプリ化とは、Shopifyで作成したECサイトをApp StoreやGoogle Playなどのアプリケーションストア経由でダウンロードできるネイティブアプリに変換することです。
ユーザーはスマートフォンのホーム画面から直接ストアにアクセスでき、商品の閲覧や購入がより簡単に行えるようになります。
注意点: この記事で紹介するのは、Shopifyストアをネイティブアプリにするためのツールであり、Shopifyストアに機能を追加する「Shopifyアプリ」とは異なる概念です。
Shopifyストアをアプリ化するメリット
ユーザビリティの向上
Shopifyストアをアプリ化することで、ユーザーはスマートフォンのホーム画面から直接ストアにアクセスできるため、商品検索や購入が格段に手軽になります。
販売チャネルの拡大とリピーター獲得
アプリという新たな販売チャネルを追加することで、これまでWebサイトやSNSだけでは届かなかった顧客層にアプローチできる可能性が高まります。スマートフォンを日常的に使用するユーザーが多い現在、アプリ化によってストアへのアクセス頻度が増加し、リピーターの増加が期待できます。
プッシュ通知機能の活用
アプリ化により、ストアに関するお知らせやキャンペーン情報をプッシュ通知機能で直接ユーザーに配信できるようになります。この機能を活用することで、カゴ落ち対策、商品の再入荷情報、おすすめ商品の紹介など、ユーザーがストアにアクセスするきっかけを効果的に作ることができます。
下記のブログ記事では、Shopifyで実施できるカゴ落ち対策を紹介しています。ご参考にしてください。
また、下記のブログ記事では、Shopifyでおすすめの再入荷通知アプリを紹介しています。ご参考にしてください。
実店舗との連携強化
実店舗とオンラインの両方で商品販売を行っている場合、アプリを通じて店舗でのプロモーションやセール情報を発信でき、実店舗の利用者には来店時に直接アプリのダウンロードを促すことが可能です。これにより、実店舗の顧客をオンラインへ、オンラインの顧客を実店舗へ相互に誘導し、より濃厚なファン層を構築できます。
Shopifyストアアプリ化のデメリット
開発・運営コストの負担
アプリ化には高額な開発コストがかかり、定期的なメンテナンスやアップデート対応によって継続的な費用が発生します。自社で内製すれば外注コストは抑えられますが、リソースがない場合は制作会社への外注が必要となり、予算の確保が重要な課題となります。
ユーザーのダウンロード促進と継続利用の課題
アプリは通常のWebサイトと異なり、ユーザーにインストールしてもらう必要があります。ダウンロードを促すためのマーケティング活動や、アプリの評判向上への努力が必要です。また、ユーザーのスマートフォンのストレージ容量を消費するため、継続的に利用してもらうための価値提供と施策が重要になります。
アプリストア審査とOSアップデート対応
AppleとGoogleのアプリストアでの公開には審査が必要で、このプロセスには時間がかかり、予期しない問題が発生することもあります。審査が通過しない場合は修正が必要となり、リリーススケジュールに遅れが生じる可能性があります。さらに、OSがアップデートされた際の対応も継続的に必要となり、永続的な保守体制の構築が求められます。
セキュリティとプライバシーの配慮
アプリはユーザーの端末から情報を取得できるため、個人情報の適切な保護と安全な管理が必要不可欠です。ユーザーのプライバシーに関する問題への対策を講じながら、アプリ化のメリットを最大限に活用することが重要です。
Shopifyストアのアプリ化方法
Shopifyストアをモバイルアプリ化する方法は、主にフルスクラッチ開発とアプリビルダーの利用の2通りに分かれます。
フルスクラッチ開発
フルスクラッチ開発は、アプリケーションを一から全て開発する方法です。機能や画面レイアウトを自社の要望に合わせて自由に決められるため、競合他社との差別化が図りやすいのが特徴です。Shopifyが提供するAPIを活用することで、商品情報の取得、カートへの商品追加、注文処理、顧客情報の管理などの機能を実現できます。
ただし、自由度が高い反面、開発コストや工数が大幅にかかるため、予算や開発期間に十分な余裕があるかの検討が必要です。
アプリ化できるShopifyアプリの利用
より簡単で効率的な方法として、Shopifyアプリストアで提供されているアプリ化できるShopifyアプリを利用する方法があります。フルスクラッチ開発と比較して開発コストや工数を大幅に削減でき、低コストかつスピーディーなリリースが可能です。
機能面や画面レイアウトは各アプリが定めている範囲から選択して作成するため自由度は制限されますが、どのアプリもShopifyの利便性やデザイン性を損なわない仕様となっており、実用的なアプリを構築できます。
アプリ化できるShopifyアプリ 5選
Appify
出典:Appify|Shopifyアプリストア
Appifyは、Shopifyと連携し、自社ブランド専用のネイティブアプリをノーコードで構築・運用できるShopifyアプリです。商品・会員情報・ポイントなどをShopifyと連携しながら、モバイルに最適化された購入体験を提供します。
アプリ限定のプッシュ通知や抽選販売、会員証・チケット配布など、店舗・EC・アプリの垣根を越えた施策が可能です。
下記のブログ記事では、Appifyの特徴やおすすめ機能、セットアップ方法を詳しく紹介しています。ご参考にしてください。
Appifyの料金プラン
プラン名 | 料金 | 内容 |
---|---|---|
ベーシック(年間契約) | 月額150,000円 | ・次年度の利用料金は基本料金の月額15万円に加えて、従量課金が発生する場合があります ・前年度の販売チャネル「モバイルアプリ」の年間売上実績が5,000万円を超えるごとに、90万円分の従量課金が契約更新時に発生します |
エンタープライズ(年間契約) | 月額300,000円〜 | ・追加料金は導入時にお見積となります |
Mobile App Builder ‑ Plobal

出典:Mobile App Builder ‑ Plobal|Shopifyアプリストア
簡単な操作とグラフィカルインターフェースを特徴とするアプリビルダーです。多種のテンプレートやデザインオプションが提供され、開発者がアプリ開発に不慣れな場合でも使いやすく設計されています。効率的にアプリを作成したい場合に適したツールです。
最上位のENTERPRISEプランでは、Shopify SDK統合、Apple Pay、Android Pay、Native Checkout、高度な分析、専用アカウントマネージャーなどの機能も利用できます。
Mobile App Builder ‑ Plobalの料金プラン
プラン名 | 料金 | 内容 |
---|---|---|
Starter Plan | 無料 ※初期費用なし、アプリ内売上の3%の成功報酬のみ(アプリがライブになってから支払い) |
・2つの標準統合 ・ネイティブiOS+Android ・ドラッグ&ドロップアプリビルダー ・無制限プッシュ通知 ・メール&ライブチャットサポート ・リアルタイム分析 |
Growth | 月額199ドル 年額1,990ドル(17%お得) |
・4つの標準統合 ・ネイティブiOS+Android ・ドラッグ&ドロップアプリビルダー ・無制限プッシュ通知 ・メール&ライブチャットサポート ・リアルタイム分析 ・30日間の無料体験 |
Essential | 月額499ドル 年額4,990ドル(17%お得) |
・7つの標準統合 ・放棄された閲覧キャンペーン ・ユーザーセグメント通知 ・商品フィルター ・Apple Pay ・専任サクセスマネージャー ・30日間の無料体験 |
Enterprise | 月額1,199ドル 年額11,990ドル(17%お得)※アプリ内売上の1%の成功報酬 |
・無制限の高度な統合 ・アプリパーソナライゼーション ・マルチページ設定 ・カスタマイズ可能フォント ・優先サポート ・30日間の無料体験 |
ハルクモバイルアプリビルダー

出典:ハルクモバイルアプリビルダー|Shopifyアプリストア
高度なコーディングスキルを必要としない、完全モバイル対応のアプリビルダーです。iOSとAndroidの両方に対応しており、各アプリストアへ迅速にアプリを展開できます。SNSアカウント情報を利用したログイン機能や、最適化された検索結果により商品を素早く見つけられる機能など、ユーザビリティを重視した機能が充実しています。
ハルクモバイルアプリビルダーの料金プラン
プラン名 | 料金 | 内容 |
---|---|---|
ベーシックプラン | 月額79ドル 年額790ドル(17%お得) |
・ネイティブiOSおよびAndroidアプリ ・無制限の製品 ・無制限のセクション ・5プッシュ通知 ・メールサポート ・すべての一般的なモバイルアプリ機能 ・14日間の無料体験 |
プロプラン | 月額149ドル 年額1,490ドル(17%お得) |
・プッシュ通知をスケジュール配信 ・高度なレポート ・10プッシュ通知 ・チャットとメールのサポート ・Facebookアプリイベント ・14日間の無料体験 |
グローバルプラン | 月額249ドル 年額2,479ドル(17%お得) |
・プロプランのすべて ・放棄されたカートプッシュオートメーション ・高度なアプリ統合 ・無制限のプッシュ通知 ・専用実装スペシャリスト ・14日間の無料体験 |
モバイルアプリビルダー‑OneMobile

出典:モバイルアプリビルダー‑OneMobile|Shopifyアプリストア
iOSおよびAndroid対応のモバイルアプリを最短30分で構築できるアプリビルダーです。既存のテーマを活用することで迅速なモバイルアプリ構築を実現し、カウントダウンタイマーやアナウンスバーなど、ユーザーの購入意欲を促進する機能が組み込まれています。上位プランでは専門エンジニアによるカスタマイズサービスも提供されており、より細かな要望にも対応可能です。
モバイルアプリビルダー‑OneMobileの料金プラン
プラン名 | 料金 | 内容 |
---|---|---|
FREE | 無料 | ・デフォルトテーマ1+5デザイン ・カスタム1+デフォルト4スクリーン ・ブランドカラー設定 ・アプリ内ほしい物リスト ・リンク ・アプリ提出用コンテンツ(1回) ・商品おすすめ機能 ・テキスト検索機能 ・メールサポート |
SCALE•UP | 月額99ドル ※モバイル収入が月2,000ドル以下の場合は成功報酬なし、注文1件につき2.9%の手数料が適用 |
・全機能FREEプランに含む ・7テーマ+25デザインブロック ・セグメント&自動プッシュ通知 ・テキスト&音声検索 ・大量AIコンテンツ作成(50回) ・多言語&通貨対応 ・高度なデータ分析&連携 ・ライブチャットサポート ・14日間の無料体験 |
BRAND•UP | 月額299ドル ※モバイル収入が月10,000ドル以下の場合は成功報酬なし、注文1件につき1.9%の手数料が適用 |
・全機能SCALEUPプランに含む ・カスタムインターフェース設計 ・35ブロック&スケジュール設定 ・ショッパーテイメント&動画販売 ・テキスト ・音声 ・バーコード検索 ・実装スペシャリスト対応 ・カスタマーサクセス担当 ・30日間満足保証 ・14日間の無料体験 |
OMNI | 月額990ドル ※モバイル収入が月100,000ドル以下の場合は成功報酬なし、注文1件につき1.2%の手数料が適用 |
・全機能BRANDUPプランに含む ・60ブロック+追加10画面 ・店舗専用の機能 ・社内システムと連携 ・アップデート随時または四半期 ・OneLoyalty月額無料 ・専任サクセスマネージャー ・30日間満足保証 |
Shopney ‑ Mobile App Builder

出典:Shopney ‑ Mobile App Builder|Shopifyアプリストア
コードやデザインスキルがなくても、Shopifyストアを数分でモバイルアプリに変換できるアプリビルダーです。ファッション系やニッチなジャンルなど、さまざまな分野に対応したデザインテーマが系統ごとに用意されており、事業のイメージに合うテーマを選択できます。
ユーザーとのコミュニケーションを促進するアプリ内チャット機能により、会話を通じて購入意欲を高め、売上向上につなげることができます。また、アプリの使い方や事業者の悩みを解決する充実したカスタマーサポートも提供されています。
Shopney ‑ Mobile App Builderの料金プラン
プラン名 | 料金 | 内容 |
---|---|---|
Silver Plan | 月額149ドル 年額1,428ドル(20%お得) |
・柔軟なデザイン(7要素まで) ・無制限プッシュ通知 ・再入荷通知 ・テーマオプション ・アプリ内ライブチャット ・Google、Facebook広告連携 ・30日間無料体験 |
Gold Plan | 月額299ドル 年額2,868ドル(20%お得) |
・デザイン(20要素まで) ・スケジュール配信プッシュ通知 ・カート放棄通知 ・多言語 ・多通貨対応 ・商品レビュー連携 ・高度な検索機能連携 ・30日間無料体験 |
Platinum Plan | 月額599ドル 年額5,988ドル(17%お得) |
・無制限デザイン要素 ・スケジュール配信アプリデザイン ・ロイヤルティ ・リワード連携 ・Klaviyo、Gorgias連携 ・拡張現実(AR)、バーコードスキャナー ・専用サポート ・30日間無料体験 |
まとめ
Shopifyストアのアプリ化は、ユーザビリティの向上、販売チャネルの拡大、リピーター獲得など多くのメリットをもたらす一方で、開発コストやメンテナンス、ユーザーのダウンロード促進などの課題も存在します。
フルスクラッチ開発は高い自由度を実現できますが、アプリビルダーを利用することで、コストを抑えながら効率的にアプリ化を進めることが可能です。各アプリビルダーはそれぞれ特徴が異なるため、自社のビジネス規模、予算、求める機能に応じて最適なツールを選択することが成功への鍵となります。
アプリ化を検討する際は、事前に予算の確保、マーケティング戦略、継続的な運営体制の構築を十分に計画し、長期的な視点でプロジェクトを進めることが重要です。
最後に、下記のブログ記事ではアプリ化するShopifyアプリ以外にも売上拡大や業務効率化に役立つおすすめアプリを紹介しています。Shopifyアプリ選びのご参考にしてください。