年末年始は、ECサイトにとって一年の売上に大きな影響を与えやすい重要な商戦期です。
短期間で大きな売上を作りやすい一方で、計画的に実施しないと「値引きしすぎて利益が残らない」「配送トラブルでクレームが増えた」「思ったほど売上が伸びない」といった失敗が起こることも。
本記事では、年末年始における消費行動の特徴から、成果につながるプロモーション施策、スケジュール設計、実施時の注意点までを、EC運営者向けにわかりやすく解説します。
年末年始における消費行動の特徴
はじめに年末年始におけるEC市場と消費行動について確認をしておきましょう。
年末年始は最も売れる商戦期
日本の小売業に関する経済産業省の調査によると、近年の統計では、12月は年間でも特に販売額が高水準になりやすい月であり、年末商戦が日本の消費市場全体において重要な時期であることがわかります。
これはEC市場においても当てはまることで、ブラックフライデーやクリスマス、年末年始商戦の影響を受け、12月を中心に購買活動が活発化する傾向が見られます。
加えて、日本国内の調査では、年末年始のセール期間中に「1万円以上の買い物をした」と回答した人が53.2%に上るという調査結果もあります。この時期に消費者の購買意欲が大きく高まることが確認されています。
参考:経済産業省|令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました
参考:ナイル|オンラインショッピング利用者の約7割がセールの開催情報を事前に把握(Appliv TOPICS調べ)
ギフト需要から「自分へのご褒美」へのニーズ転換
日本では年末年始のギフト需要は依然として大きく、2023年のギフト市場規模は約10.9兆円と堅調に推移しています。一方で、近年は、「自分へのご褒美(セルフギフト)」という消費行動も広がりつつあり、化粧品やリラクゼーション、体験型商品などを自分用に購入する動きが目立っています。
特に年末期は一年の労いとして「少し高価なものを自分に買う」意識が高まり、1万円前後を目安にした購買が増える傾向にあります。
年末年始のECでは、贈答用ギフトに加えてセルフギフト需要も意識した商品訴求やプロモーション設計を行うことが、重要なポイントの一つになります。
参考:株式会社矢野経済研究所|ギフト市場に関する調査を実施(2024年)
参考:アマゾンジャパン合同会社|「Amazon ブラックフライデー」に合わせて、「年末のギフトに関する調査」を実施。今年の年末のギフト購入の3大ポイントは、「お買い得」「品揃え」「利便性」
年末年始プロモーションの全体スケジュール
年末年始商戦は、準備から実施までを計画的に進めることで、売上だけでなく運用面のトラブルも防ぐことにつながります。
ここでは、EC運営者が無理なく進められる時系列の基本スケジュールを紹介します。
〜11月中旬:目的・KPIと対象商品の確定
この時期は、年末年始プロモーション全体の土台を作るフェーズです。
「売上を伸ばす」「新規顧客を増やす」「在庫を消化する」など目的を明確にし、それに紐づくKPI(売上、注文数、新規率、客単価など)を設定しましょう。
同時に、セールやキャンペーンの中心となる対象商品や重点カテゴリを決め、在庫数量の確認や追加発注の可否も整理しておきましょう。
11月後半:キャンペーン条件(割引・特典・対象)を確定
プロモーションの具体的な中身を固めるタイミングです。
割引率、クーポン金額、送料無料ライン、特典内容などを決め、対象商品や対象外商品を明確にします。あわせて、プロモーションの併用可否や利用回数制限などのルールもこの段階で決定し、利益が残る設計になっているかを確認しましょう。
12月前半:LP・バナー・配信文の制作
確定した条件をもとに、集客と訴求に使うクリエイティブを制作します。
キャンペーン専用LP、トップページバナー、広告のクリエイティブ、LINEやメルマガの配信文などを用意し、セール開始前に一通りテスト・確認を行いましょう。誤字脱字や表示崩れ、クーポン適用漏れなどのチェックも、この時期に済ませておくことが重要です。
12月中旬:先行予約・事前告知開始
本格的な販売開始前に、事前告知や先行予約で期待感を高めるフェーズです。
LINEやメルマガ、SNSなどで「もうすぐ開始」「予約受付中」といった情報を発信し、顧客リストへのリマインドを行います。福袋や数量限定商品は、この段階で予約受付を開始すると、販売初動の伸びを作りやすくなります。
12月後半〜1月上旬:年末年始セールの実施
いよいよプロモーションの本番期間です。
年末セール、初売り、お年玉クーポンなどを順番に展開し、在庫状況や売れ行きを見ながら必要に応じて訴求内容や広告配分を調整します。同時に、配送遅延や問い合わせ対応にも備え、スムーズに運用できる体制を維持することが重要です。
年末年始に効果的なプロモーション施策5選
年末年始は購買意欲が高まりやすいため、施策次第で大きく売上を伸ばせる時期です。ここでは、ECサイトで実践しやすく、かつ成果につながりやすい代表的なプロモーション施策を5つ紹介します。
福袋の予約販売
福袋の予約販売は、年末年始ならではの定番施策であり、売上の初動を作りやすい方法です。販売開始前から予約を受け付けることで、需要予測がしやすくなり、在庫管理や出荷準備の計画も立てやすくなります。
また「数量限定」「期間限定」といった条件を設けることで、購入を後押ししやすくなる点もメリットです。中身の一部を事前に公開すれば、購入前の不安を軽減し、予約率の向上にもつながります。
カウントダウンタイマー
カウントダウンタイマーは、セールやクーポンの終了までの残り時間をサイト上に表示し、「今すぐ買う理由」を作るための施策です。終了期限を視覚的に伝えることで、迷っているユーザーに対して行動を促しやすくなります。
トップページだけでなく、商品詳細ページやカートページなど、購入の最終決定を行う導線上に配置するのも効果的です。
お年玉クーポン
お年玉クーポンは、年始の購買意欲を刺激するシンプルで効果的な施策です。新年のあいさつとともに配信することで、開封率や利用率が高まりやすく、初売りへの集客にもつながります。新規顧客限定、リピーター限定など対象を分けて配布すれば、目的別の施策としても活用できます。
利用期限を短めに設定すれば、購入の後回しを防ぎ、早期の売上創出が期待できるでしょう。
セット販売
セット販売は、関連商品をまとめて販売することで客単価を引き上げやすい施策です。年末年始はまとめ買いの需要が高まるため、人気商品と関連商品を組み合わせることで、在庫回転を良くする効果も期待できます。
単品購入よりも割安感を出しやすく、「これだけで揃う」「届いてすぐ使える」といった利便性を訴求できる点も強みです。福袋より中身が明確なため、安心感を持って選ばれやすいのも特徴です。
LINE配信
LINEは、年末年始のプロモーション情報をタイムリーに届けられる有力なチャネルです。セール開始やクーポン配布の告知をリアルタイムで行えるため、来店・購入のきっかけを作りやすくなります。
ステップ配信やセグメント配信を活用すれば、新規顧客と既存顧客で訴求内容を変えることも可能。LINEは開封率が高く、短期間でのリマインド配信にも向いており、初売りやカウントダウン施策との相性も抜群です。
年末年始プロモーション実施時の注意点
プロモーションを安全に運用し、かつ成果につなげるために、EC運営者が必ず押さえておきたい注意点を解説します。
利益が残る割引条件の設計
年末年始は値引き競争になりやすく、割引を強くしすぎると「売れたのに利益が残らない」という状態に陥りがちです。割引率を決める際は、商品原価だけでなく、送料負担や広告費も含めた実質的な粗利を確認することが重要です。
また、クーポンの併用可否や割引上限金額をあらかじめ設定し、想定外の値引きが重ならないように設計しておくことで、利益を守りながら売上を伸ばしやすくなります。
景品表示法に抵触しない表示と運用
「通常価格から◯%OFF」といった表現や、購入特典・抽選プレゼントは、表示内容によっては景品表示法に抵触するリスクがあります。特に二重価格表示では、通常価格の販売実績など根拠が必要です。
また、プレゼント企画は景品の上限金額や総額にルールが定められています。キャンペーンページには、対象条件・期間・当選数・連絡方法などを明記し、誤解を招かない表示に整えることが重要です。
在庫切れ・配送トラブルを見越した事前告知
年末年始は物流量の増加や倉庫の休業により、通常より配送遅延が発生しやすくなります。販売期間を設定する際は、年内お届けの締切日を商品ごとに明確にし、遅延の可能性がある場合は事前に告知しておくことが重要です。
また、在庫数に応じて販売数量を制限したり、予約販売を活用したりすることで、欠品やクレームの発生を防ぎやすくなります。
休業期間中のカスタマーサポート運用
年末年始の休業期間中は、問い合わせ対応や返品交換の対応が滞りやすく、トラブルに発展しやすい時期です。自動返信メールで返信再開日やFAQページを案内したり、返品期限を一時的に延長したりするなど、休業中でも顧客が不安にならない運用を整えておくことが重要です。
あらかじめ対応ルールを明記しておくことで、クレームやキャンセルの増加を防ぎやすくなります。
システム負荷と不正注文への対策
年末年始はアクセスや注文が集中しやすく、ページ表示遅延や決済エラーが発生しやすい時期です。事前にテスト注文を行い、クーポン適用や在庫減算、メール送信までの一連の流れを確認しておくことが重要です。
また、高額注文や短時間での連続注文など不正利用の兆候にも注意し、購入制限や監視ルールを設けておけば、売上機会の損失やトラブルを防ぎやすくなります。
早めに準備して、年末年始プロモーションを成功させよう
年末年始の消費行動やプロモーション施策、スケジュール、注意点などを解説しました。
年末年始は、ECサイトにとって一年の中でも特に大きな売上を作れる期間です。一方で、準備不足や設計ミスがそのまま利益低下やクレームにつながりやすい、難易度の高い時期でもあります。
スケジュールに沿って計画的に準備を進め、利益と満足度の両方を高めるプロモーションを実現しましょう。