Shopify事業者様のインタビューシリーズ。2024年4月からShopifyに移行した長野県の老舗味噌蔵の新田醸造さん。Shopify運用を担当している新田醸造の若女将もりえさんにお話しを伺いました!
新田醸造 若女将 もりえさん
信州白樺印みそをつくる長野の老舗味噌蔵「新田醸造」
長野県坂城町にある新田醸造
もりえさん 新田醸造は江戸末期に創業したといわれている味噌屋です。新田醸造は私の夫の実家の家業でやっている蔵で、夫で6代目になります。長野県の坂城町という上田市の隣の町にあります。
ーー 新田醸造さんで一番人気の商品はどれですか?
もりえさん 信州白樺印みそが看板商品です。普通の信州みそは米味噌がメインなのですが、新田醸造の信州白樺印みそは大麦も少し入ってます。米と大麦を原材料にして作った味噌を木桶で1年寝かせ、その後にまた違う味噌を2種類ブレンドして作っています。
今年の4月にリブランディングでロゴを変えたり、オンラインストアのリニューアルを行いました。リニューアル前は信州白樺印みその2kgが一番人気でしたが、今Shopifyの管理画面を見たら、500gのジッパー式が圧倒的に多く売れていますね。Shopifyのデータを今みて自分でもびっくりしました(笑)。リニューアルして新規のお客様が増えたことが理由だと思います。
一番人気の信州白樺印みそ
約10年前から始めたECサイト、2024年4月にShopifyに移行
ーー 新田醸造さんではいつからECサイトを始めたのでしょうか?
もりえさん 私が関わるよりもっと前の、10年ぐらい前からECサイトはやっていました。
一番最初にサイトを立ち上げたプラットフォームから、6、7年前にMakeShopに移行しました。その後、2024年の4月にShopifyに移行した形ですね。
MakeShopに移行したときには、夫も別の仕事をしながら副業として関わっていたのですが、MakeShop側のサポートがあったことや、顧客データがそこまで多くなかったことから、大変ではあるけどそこまで大掛かりではなかったようです。
今年4月のShopify移行には大変なポイントが2つあって。顧客情報の移行やサイトの作り込みと、移行とは別になるのですが、ロゴを新しくしたりパッケージを新しくしたリブランディングがあったので、移行のタイミングで変えたことがすごく多くて大変でしたね。
リブランディングした新しいロゴのタイポグラフィー
ーー Shopify移行はどれくらい前から計画していたんですか?
もりえさん 移行の前は2年くらい準備していました。元々、私が新田醸造の仕事を始める前から、夫が中小企業のリブランディングをやっている知り合いの会社に相談していて、最終的に「味噌の可能性をとき放つ」というキャッチコピーと、ブランドコンセプトの整理をしてもらいました。コロナ禍もあってすごく時間がかかってしまったんですが、1年くらいかかりました。
コンセプトが定まった後に、リブランディングにも参加してもらった私の大学の友人のデザイナーにロゴのアップデートをお願いしました。新田醸造のロゴや、商品の味噌のロゴデザインもバージョンアップして、メインの商品の信州白樺印みそは、パッケージの袋を新しくしたり容量も変えました。「信州白樺印みそ オリジナル」というこれまで販売していなかった味噌も同じタイミングで出したり、そんな準備をさらに1年かけてやってたという感じですね。
Shopify引っ越しを後押しした一言「移行するなら早い方がいい」
もりえさん ECのサイトの移行やShopify構築は、専門の会社ではなく友人から紹介してもらったエンジニアさんにやってもらいました。2年ぐらい前から相談していて、これもコロナもあり日程がズレていった中で、2024年4月のリリース日から逆算して構築を進めてもらったっていう感じですね
ーー 移行先をShopifyに決めた一番の決め手はなんですか?
もりえさん 前職をやめて新田醸造の仕事を始めたばかりで何をしたらいいのか全然わからないときに、知り合いから紹介していただいた方にShopifyを勧められました。具体的に何がいいというより、Shopifyがいいよ、移行するならとにかく早い方がいい、と(笑)。
当時、私の夫がMakeShopに移行したときもそれなりに大変だったので、いつかはShopifyに移行したいけど大変そうだなという思いがあったんですが、それを言われたときに、確かに今後ECをゴリゴリやっていくのだったら、顧客情報が溜まってから引っ越しするのは大変だから引っ越しプロジェクトとしてガッツリ進めようと決めました。
2年ぐらい前からShopifyに引っ越ししようと考えながら、優先度の高いリブランディングもあるので、そのタイミングに合わせよう、と。
Shopifyでリニューアル構築されたオンラインサイト
ーー Shopifyに移行するにあたり、準備期間はどれくらいが適切だと思いましたか?
もりえさん ゼロからブランドを立ち上げてスタートするのか、既にやっているものを引越しするだけなのか、それともうちみたいにリブランディングするのかによって違うと思います。
おそらく、ゼロから立ち上げるのはそんなに難しくないと思っています。例えば1つの商品だけでECを立ち上げますという感じだったら、サイトを始めてからいろいろコンテンツを増やしていくことができると思います。
どちらかというと、Shopifyのストアをスタートさせる前の、ブランドコンセプトや商品のパッケージをどうするかとかに時間がかかると思いますね。
ーーShopifyは、表現はしやすいけど、その表現するものがないと結局すごい難しいですよね。
Shopifyでは困ったことを聞ける場所を自分でみつけること
ーー Shopify運用では主にメルマガやSNS、お客様とのやりとりをご担当されていますね。
もりえさん メルマガやSNS配信はMakeShopのときからやっていました。ただ、最初は本当に何の順番でやったらいいのかわからなくて。最初はInstagramをちょこちょこやり始めても何をしたらいいのかわからなくて、夫と相談しレシピ投稿を始めました。私はレシピが作れないから、夫の知り合いの料理家さんとカメラマンさんに副業でお願いして投稿するようになりました。
MakeShopはメルマガ配信が使いづらそうで、しかも月額料金とは別料金がかかるので、SendGridというツールを使ってやっていました。
Shopifyに移行をする前あたりからEC運営のコミュニティサロンをやってらっしゃるミウラタクヤさんのサロンに入ってから、施策の優先順位づけや何を頑張るべきかが結構みえてきたので、そこからはメルマガもSNSも頻度を上げてしっかり配信するようになりましたね。
新田醸造さんのInstagramアカウントは現在1万人のフォロワーに
ーー Shopifyで困ったことは聞けるコミュニティに入られて、しっかり聞けたり交流できたりっていうところが良かったのですね。
もりえさん Shopifyの中の人って巷にいなくないですか(笑)。MakeShopのときは担当の人がついていて、カスタマーサポートも平日9時から18時で電話ができたんですよ。機能としてはShopifyの方がいろいろできるんですけど、わからないことをすぐ聞けるという面では国産のカートシステムは強いなと思っています。
アプリに頼らない構築と運用の基本スタンス
もりえさん うちは基本的には、むやみやたらにたくさんのアプリは使いたくないっていうスタンスなんです。アプリをいれると、どこまでも機能拡張できるところはいいところなんですが、気づいたら固定費がやばいことになるなと思ってまして。
初期にストアを構築してもらったエンジニアさんと定期的にミーティングしていて、結構細かいところを構築してもらったりしています。
例えば、今お歳暮の時期でギフトをやり始めたんですけど、人におすすめしてもらったアプリをインストールしたらアプリの機能がトゥーマッチすぎて逆に使いづらかったんです。
色々調べてみると、 Liquid(Shopify独自のコード)を少しいじるだけで解決できそうだったので、それをエンジニアさんに送ってこれで構築して欲しいですと話して。アプリじゃなくても構築で解決できるところはなるべく構築で解決するっていうスタンスでやってるって感じですね。
新田醸造さんのサイトで入れているアプリを特別にみせていただきました。
ーー それはコストと使い勝手の両軸からみても構築のほうがいいという判断でしょうか?
もりえさん ケースバイケースですが、構築のほうがよいことも多いと思います。
よく使われているアプリだけど導入をやめた事例でいうと、簡単にランディングページを作ることができるPageflyとかGempagesのアプリ。
うちはレシピの投稿を最初はnoteでやっていたんですが、Shopifyのブログだと文字の大きさとか見やすいボタンを入れたりすることができないので、Gempagesを導入しようかなと思っていたんです。でもいろんな方に相談していく中で、結構コストがかかることや、Gempagesで作ったページの利用を止めちゃうと公開できなくなっちゃうみたいなことを聞いて。そういった難点を聞くと微妙そうだなと思って、結局やめました。
今はレシピのブログをnoteのような体裁にしたくて、メタフィールドをエンジニアさんに設定してもらったり、できる範囲で構築で理想に近づけていくという運用をしています。
急激な売上増加に対応できるような出荷体制が課題
ーー 今後、Shopifyを伸ばすために優先順位をあげていきたい施策はなんですか?
もりえさん MakeShopのときにMeta広告を出していたんですが、MakeShopではピクセルが埋め込めなかったんですよ。MakeShopのデフォルトデザインだとできるけど、サイトのデザインをいじっちゃっているとピクセル埋め込みができなかった。そうすると機械学習が進まなくて、それが原因のひとつだと思うんですが、そんなに売り上げが上がらなかったんですね。
ピクセル埋め込みができるShopifyに移行してMeta広告をもう1回やろうと思って、一度出してみたときにすごく効果が良くて、3ヶ月で売り上げが3倍になったんですよ。
そしたら、うちの味噌の充填機が1個しかないので出荷が追いつかなくなっちゃって。やろうと思えば売り上げを伸ばせるんだけど、出荷が限界だからもう無理ですってなってしまったので、まずは充填機を増やして出荷の体制を整えることが課題です。
その後は、Meta広告のクリエイティブを増やしたり予算を増やしたりがポイントになってくると思ってます。
Meta広告・Shopify メール・Shopify Flowのかけ合わせ施策
もりえさん 今 Shopify メールを頑張っていて、「メルマガ登録しませんか」というポップアップをShopify Formsでもだしているんですが、Meta広告で流入してきた人の中で、買わないけどメールアドレスだけ登録しておく人が結構いて。何回かメルマガを受信して何かの拍子に買われる方が結構いらっしゃるんですよ。
だから、Meta広告頑張る、Shopify Formsでメルマガ登録できるようにしておく、Shopify メールでメルマガ頑張るみたいな、この3つの掛け合わせがいいのかなと思っています。
ーー その掛け合わせの施策をやりやすいのがShopifyともいえますね。
もりえさん そうですね。プラットフォームのシステムにもよると思うんですけど、MakeShopはポップアップは出せなかった気がします。
デフォルトでポップアップが設定できるのはいいですよね。そして、Shopify メールだと、商品ページに写真を登録しておけば、メルマガを作るときにすぐその画像の呼び出しができることがすごくいいですね。
Shopifyのデフォルト機能の充実に期待
ーー 今後のShopifyやShopifyアプリに期待することはなんですか?
もりえさん まずはShopifyのデフォルト機能がもっと充実してほしいですね。あとは、レシピブログをもっと見やすくしたい。
あとはLINEとの連携。Shopify メールでは、「1ヶ月に3回以上開封した人」のようなセグメントを作成したときに、2回開封した人がもう1回開封したら自動でそのセグメントに入るんですよ。LINEのデフォルトの機能だと、「1ヶ月に3回以上開封した人」のようなオーディエンス作りはできるんですけど、その後ユーザーのステータスが変わってもオーディエンスは更新されないんです。
Shopify メールのセグメントをダウンロードしてアップロードすることもできるんですけど、それも更新は反映されないんですよね。Shopify メールとLINEで同じセグメントで配信できるように、自動連携できるようになるといいなと思います。
Shopifyが向いているかどうかは担当者次第
ーー ズバリ、Shopifyはおすすめできますか?
もりえさん Shopifyが向いているかどうかは事業者のリテラシーとやる気によると思っています。元々私もIT業界出身なんですが、自分はコードがかけなくても何となく構造が理解できるとか、自分で情報を探せるとか、構築できる人をみつけて依頼できるとか、そういう人だったらShopifyでいいと思うんですよ。
例えば地方の、ネットで全く買い物しないような年齢の高い人しか会社にいなくて、EC担当も同じような感じだとハードルが高いと思います。
事業者側に、ITとかウェブに対するリテラシーがどれぐらいあるか、どれぐらい覚悟を持ってできるかによって違う気がしますね。
覚悟をもってShopify運用にとりくむこと
ーー Shopifyをこれから始める方や、運用している方々に向けて一言お願いします。
もりえさん Shopifyは覚悟が一番大事ですね。使いこなして売り上げを上げるぞっていう覚悟を持って、Shopifyに向き合うことが一番大事な気がします。松岡修造みたいなんですが(笑)
ーー すごく実感のこもった言葉、ありがとうございました!