お菓子作りをずっと続けてきた方で「作ったお菓子を販売してみたい」という方も多いのではないでしょうか。昨今では個人でも利用しやすい販売プラットフォームが増えてきました。
お菓子販売をビジネスとして形にするためには、正しいネット販売の知識と菓子製造に適した設備や食品衛生法で定められた資格などが必要となります。
この記事では、店頭やネットショップなど販売方法のそれぞれの特徴、お菓子の製造・販売に必要な資格や設備、そして販売を効率的に成功させるコツについて詳しく解説していきます。これから個人でお菓子販売を行いたい方はぜひ最後までごらんください。
お菓子を個人で販売する方法3選
お菓子を個人で製造・販売するには主に3つの方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、方法に寄っては大きな初期費用や運営コストがかかる場合があります。販売したい規模や自分の働き方に合った方法を慎重に選びましょう。
店舗を構えて販売する
メリット | デメリット |
---|---|
・顧客と直接コミュニケーションが取れる為、商品の魅力をより詳細に伝えやすい ・商品を実際に手に取って確認することができる ・試食など購買に繋がる施策を実施しやすい |
・設備や家賃、人件費など費用が継続してかかる ・顧客は店舗に足を運ぶ必要があり、遠方からは難しい |
・商品を実際に手に取って確認することができる
・試食など購買に繋がる施策を実施しやすい | ・設備や家賃、人件費など費用が継続してかかる
・顧客は店舗に足を運ぶ必要があり、遠方からは難しい |
まず1つ目は店舗を構え、商品を製造・販売する方法です。
メリットとして、店舗を持つことで自分の商品を販売する場所をつくりことができ、顧客はその場で購入できる手軽さがあります。顧客と直接コミュニケーションが取れるため、商品の魅力を直接伝えたり、作り手の人柄などを伝えることもできます。
さらに、試食や賞味期限間近の限定セールなど、店頭でしかできないマーケティング施策を実施できることも魅力のひとつです。
最大の課題は、初期費用と固定費がかかることです。店舗を構える費用、家賃、働くスタッフへの人件費など、場合によっては数十〜数百万円単位の費用が発生します。
また、実際に店舗に来店する人が顧客となるため、遠方の方にもわざわざ足を運んでもらうための魅力をアピールするなど、新規顧客開拓には相応の労力が必要となります。
ネットショップを開設する
メリット | デメリット |
---|---|
・店舗に行かなくても簡単に購入できる ・実店舗にかかる費用(家賃など)が必要ない ・SNSなどを活用して新規顧客の購入に繋げやすい |
・購入前に商品を実際に手に取って確認することができない ・直接コミュニケーションが取れないため、信頼関係を築くのに時間がかかる |
・実店舗にかかる費用(家賃など)が必要ない
・SNSなどを活用して新規顧客の購入に繋げやすい | ・購入前に商品を実際に手に取って確認することができない
・直接コミュニケーションが取れないため、信頼関係を築くのに時間がかかる |
2つ目はネットショップを開設し、ネット上で販売する方法です。
ネット販売の最大のメリットは、実店舗がなくても製造した菓子の販売ができることです。お菓子を製造する環境さえ整えば、家賃や光熱費など実店舗にかかる費用をかけずに製造販売ができるというのは大きな利点となります。
SNSやWeb広告などを活用して人の目に触れる機会を増やすことで、住んでいる地域にかかわらず、商品を買ってくれる新規顧客をみつけることも可能です。
デメリットとして、購入前に商品を実際に手に取ることができないという点があげられます。写真や動画、商品説明欄などできちんと商品についての情報を明確にする工夫をしないと「イメージと違った」など、購入後にがっかりされてしまう可能性もあります。
またお菓子や焼き菓子など比較的低価格の商品を販売する場合は、顧客と信頼関係を築きリピーターを作っていくことも非常に重要となります。しかしネットショップでは対面でコミュニケーションが取れないため、チャットやSNSのDMなどを活用し顧客との距離を縮める工夫が必要になるという点もあります。
マルシェやイベントで販売する
メリット | デメリット |
---|---|
・お試しで製造・販売することができる ・顧客のターゲット層にあったイベントを選べる ・ほかにも出店者がいる場合、新規の顧客の目に留まる機会が増える |
・イベントの主催者側へ出店料や販売手数料などを支払う場合がある ・出店スペースが限られる為、商品を目立たせる工夫が必要 |
・顧客のターゲット層にあったイベントを選べる
・ほかにも出店者がいる場合、新規の顧客の目に留まる機会が増える | ・イベントの主催者側へ出店料や販売手数料などを支払う場合がある
・出店スペースが限られる為、商品を目立たせる工夫が必要 |
3つ目に、マルシェやイベントに出店することで販売する方法です。
実店舗をもたずにマルシェやイベント出店をメインに始める場合、店舗を構えたりネットショップを開設するよりも、初期費用や固定費を抑えられることが最大のメリットです。また、自分がターゲットとする顧客にとって、どれくらい売上が見込めるかを検証するためにイベント出店から始めるケースもあります。
顧客のターゲット層にあった出店イベントを、自分で選べるという点もメリットとなるでしょう。例えば、グルテンフリーやオーガニックなど、自社の商品と相性の良い専門的なイベントを選ぶことで、ファンになりやすい見込み顧客へアピールすることができます。
デメリットとしてイベントへの出店料や販売手数料などがあげられますが、店舗運営などの固定費よりは安上がりのケースがほとんどです。また、イベントでは出店スペースが限られるため、ほかの出店者の商品よりいかに目立てるかなど、商品POPや看板などにコストをかけるなど商品以外の販売の工夫が必要です。
野外の場合は天候に左右されるなど、販売が安定しない、売上予測が立てづらくロスが発生する可能性があるなどもデメリットとあげられるでしょう。
個人のお菓子販売に必要な資格は?
顧客の健康や安全を守るために、お菓子に限らず食品を販売するためには保健所からの許認可が必要になります。個人でお菓子を製造・販売するために必要な資格を紹介します。
許可内容は都道府県ごとなど地域によって設定されているため、詳しくはお住まいの地域を管轄している保健所に確認してください。
菓子製造営業許可
菓子製造営業許可は、食品衛生法に基づいて保健所からの営業許可を必要とする業種のひとつです。
菓子製造営業許可を取得せずにお菓子を販売することはできず、もし販売してしまった場合は食品衛生法違反となり「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」が課せられる可能性があります。
また、営業許可を取得するためには、お菓子を製造する施設ごとに専任の「食品衛生責任者」を定めなければなりません。
食品衛生責任者
食品衛生責任者とは、食品衛生法に基づいて食品の製造や販売を行う施設において、衛生面での管理・運営や商品の品質チェックなどの役割を担う人のことを指します。
食品衛生責任者は、都道府県知事などが実施する「食品衛生責任者養成講習会」を受講修了することで取得することができます。
また調理師や栄養士など特定の資格保有者は講習免除となるため、事前に管轄の保健所などに確認が必要です。
食品表示法に基づくラベルの作り方
食品表示法は原材料や賞味期限などを表記することで、食品の安全性を確保し、消費者が食品を選択する機会を確保することを目的としています。
具体的に表示する内容は以下のとおりです。
- 食品の名称
- 原材料
- 内容量
- 消費・賞味期限
- 保存方法
- 製造者名・所在地
画像出典:消費者庁
これらの6項目の他に、イベント出店など製造した場所と異なる所で販売する場合など一定の条件に当てはまる場合には「エネルギー」「たんぱく質」「脂質」「炭水化物」「食塩相当量」の栄養成分表示の表記が必要となる場合があります。
ラベルに使用する文字のサイズなども決められているため、詳しくは消費者庁のサイトを確認してください。仕様はアップデートされていくこともあるので、常に最新の情報を手に入れるようこころがけましょう。
個人でお菓子を販売するために必要な設備は?
お菓子を製造・販売するために必要な設備にも細かく要件が設定されています。菓子製造許可で定められた基本的な基準を紹介します。製造で検討している場所が施設基準をクリアしているかどうかは、管轄の保健所に確認してください。
また、新規に製造場所を借りる場合は、菓子製造の許可がおりる条件を満たしている建物や場所かどうか、賃貸契約を結ぶ前に必ず保健所に確認しましょう。
施設基準
お菓子を製造するための施設に求められる基準には大きく2種類あります。
菓子製造だけでなくすべての業種に必要な基準である共通基準と、業種ごとに異なる特定基準が定められています。
共通基準
- 製造・販売する施設の構造
- 使用する器具や食品保管設備などの食品取扱設備
- 換気や洗浄・給排水設備 など
特定基準
- 製造、包装、保管など作業ごとの区画整理
- 製造量に応じた機能を持つミキサーやオーブン、包装機など設ける など
基準をクリアしているシェアキッチンを活用する
一般的な家庭用キッチンでは施設基準を満たすことができず、菓子製造販売を始めることはできません。基準を満たすためには自宅のキッチンとは別に、基準を満たした設備が必要になるため、ある程度の設備投資が必要ということがわかります。また、設備を維持するためにもコストがかかります。
まずはお試しで作って販売したい、イベントや行事に合わせて不定期で製造販売したいといった場合には、すでに菓子製造の施設基準を満たす設備の整ったシェアキッチンを利用する方法もあります。シェアキッチンを活用し、シェアキッチンがある地域の保健所の許可と食品衛生責任者の資格を取得すれば、個人で製造したお菓子も販売することができます。
お菓子販売に向いているネットショップは?
お菓子の販売において、まずは費用のかかる店頭販売ではなく、個人の方でも始めやすいネットショップでの販売をおすすめします。
ここでは、おすすめのネットショップを厳選して紹介します。
Shopify
Shopifyは、ネットショップを作成・運営できるクラウドベースのプラットフォームです。
豊富にあるデザインテーマの中から選ぶだけで、デザインやコーディングの知識がなくてもプロが作るサイトにも負けないようなネットショップを構築することできるのが一番の魅力です。
また、決済機能や在庫管理、マーケティングツールなどネットショップ運用に関わるさまざまな機能がすべてのプランで基本機能になっているため、Shopifyとの契約だけでお菓子販売をスタートすることができます。
現在Shopifyは、費用対効果が高く提供されるサービスの質が高いことで人気となり、ネットショップ初心者から上級者まで、幅広く選ばれるプラットフォームとなっています。
BASE
画像出典:BASE
BASEもまた、誰でも簡単にネットショップを作成・運営できるので、ネットショップを初めて構築するような初心者の方向けに人気のプラットフォームです。
shopifyと比べてサイトテンプレートやマーケティングツールの種類は若干劣るものの、初期・月額費用無料など費用が安く、商品が売れた際の決済手数料やサービス利用料、振込事務手数料でネットショップを運営することができるという特徴があります。
モール型のネットショップは?
「楽天市場」「Amazon」などモール型のネットショップに出店する方法もあります。
モール型のネットショップは利用者数が多いため、自身で運営するネットショップより集客が見込め、商品が多くの人の目に留まる機会が増えるという利点があります。
しかし出店者も多いため、その中で商品を魅力的に目立たせ検索で上位表示させる工夫が必要となります。
個人のお菓子販売で成功するためのコツ
個人経営など小規模でお菓子を販売するには、効率よく製造・販売するためにさまざまな工夫が必要となります。ここでは、個人でお菓子の製造・販売を成功させるためのポイントを3つ紹介します。
SNSなどのコストをかけない集客
現在、SNS発信はお店を運営していく上で必須条件となるほど主流のマーケティング方法となっています。
SNSから情報を収集し、口コミなどの評価を見て店を選ぶ顧客も多くなってきています。
SNSは、認知向上や集客のツールとしてさまざまな目的をもって活用することが可能です。商品に関する情報や商品で得られる体験を動画や音声を交えて発信するなど、顧客にとって身近に感じられる有益な情報を発信することが重要となります。
発信を継続することで、求めるターゲット層に見つけてもらいやすくなり、イベント出店の誘いやインフルエンサーなどに紹介してもらうきっかけにもなります。
予約販売や受注生産でロスを減らす
お菓子に限らず賞味期限を超過した商品は販売できません。製造後に売れないと、材料費や光熱費などの費用だけがかかり、利益に繋がらない「ロス」となってしまいます。
個人などの小規模であれば、製造したお菓子の在庫を抱えることはリスクともいえます。
このようなリスクを避けるために、商品は注文を受けてから製造したり、在庫をあらかじめ設定して予約販売にするなど、在庫ロスを削減する工夫が必要です。予約制といった限定販売とすることで「希少性」や「特別感」を演出し、マーケティング施策として活用することも有効です。
例:予約販売専門のRUMBLE CRUMBLE
画像出典:RUMBLE CRUMBLE
予約販売を活用するお店の例として「RUMBLE CRUMBLE」を紹介します。
RUMBLE CRUMBLEは、クッキーのクリエイティブや商品が作られる経緯、背景全体を通して独自の世界観を演出しています。
SNSを活用し公式LINEで予約販売の日程などをアナウンスし、顧客とコミュニケーションをとることで関係性を築いています。
また、年間で数回しか予約販売を開催せず、顧客に「特別感」や「高級感」を演出していることも強みのひとつです。
○○○専門店など商品を絞り込む
「品揃えがいい」という言葉の通り、取り扱う商品は種類豊富に揃えた方がいいと思われがちです。しかしその結果、顧客は目移りしてしまい、どんなお店か分からない特徴のないお店として認識されてしまう可能性があります。
思い切って取り扱う商品を少数に絞り「○○○専門店」として個性を際立たせることで、お店に特徴が出てターゲットを絞られ、「○○○といえばココ!」となるようなポジションを獲得しやすくなります。具体的な例として、グルテンフリーなどジャンルで絞る方法やチーズケーキ専門店などの商品で絞る方法が挙げられます。
例:チーズケーキ専門店のMr. CHEESECAKE
○○○専門店で成功している例として「Mr. CHEESECAKE」をご紹介します。Mr. CHEESECAKEのネットショップは、先ほど紹介したShopifyで構築されています(2024年9月現在)。
多くのサイト構築事例で紹介されており、チーズケーキという商品を極限まで突き詰め、その魅力をとても効果的に発信しているお店としても有名です。
ネットショップでお菓子販売を始めよう
この記事では、個人でお菓子の製造・販売を行う方法について解説しました。まずは小規模だからこそ自分にあった出店方法を見極めることが重要です。
必要な資格や設備を確認し、SNSの活用やターゲット選定、販売方法の工夫など、それぞれの出店方法に効果的なマーケティング施策を実施することで、ビジネスの継続・成長を目指しましょう。
下記のブログ記事ではShopifyのストア開設までの流れを詳しく紹介します。ご参考にしてください。