ECサイトの立ち上げ時や、売上が伸び悩んだときは、断片的なノウハウを追うよりも全体像や考え方を整理するほうが前に進みやすくなります。特に、少人数でECを運営している担当者や、他業務と兼務している人ほど、全体像を整理することが重要になります。そうした土台づくりには書籍が役立ちます。
一方で、ECやツールの仕様・集客手法は変化が早く、最新の情報は公式ドキュメントやWeb記事を確認する前提になります。本はあくまで、仕組みや判断軸を理解するためのものとして捉えるのが現実的です。
この記事では、EC担当者向けの書籍をフェーズ別・課題別に6冊紹介します。立ち上げ、amazon、事業戦略、財務まで、自社の課題に合わせて選べるよう整理しました。
EC事業者向けの本を選ぶときのポイント
1. 情報の鮮度は「本+Web」で補完する
ECやデジタルマーケティングの世界は変化が速く、書籍化された時点でUIや仕様が変わっているケースも少なくありません。
特に以下などは、発行から数年経っている本ほどギャップが出やすいといえます。
- 管理画面のスクリーンショット
- 広告管理画面
- 各種ツールの仕様
そのため、書籍からは基本概念や思考プロセス・全体像を学び、最新の仕様や事例は公式ドキュメントや各社ブログ・XなどのSNSで補完する前提で選ぶことをおすすめします。
2. 自分のレベルと目的をはっきりさせる
ECに関する本でも、これからネットショップを始める人向けの入門書と、既に運営中で、集客・LTV・CRMを伸ばしたい人向けの本、越境ECやD2Cなど特定領域に踏み込んだ専門書では内容が大きく異なります。
- まずは「立ち上げ・基本を固めたい」のか
- 「月商目標を超えたい」のか
- 「次の成長エンジン(越境・D2C・事業変革)」を考えたいのか
自分のフェーズをざっくり決めてから本を選ぶと、読んだ後に結局何をすればいいのか判断できない無駄な時間を避けやすくなります。
3. モール中心か、自社EC中心かも確認する
楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングなどモール前提のノウハウと、ShopifyやカートASPを使った自社EC前提のノウハウでは、重なる部分もあれば変わる部分もあります。
- モール運営が主戦場:楽天・モール公式本やレビューで「楽天担当」「ECモール担当」の声が多い本
- 自社サイトやマルチチャネル前提:複数カート・複数チャネルを取り扱う本
自分の主戦場に近い事例やノウハウが多いかもチェックしておくことを推奨します。
ECおすすめ本の早見表
| 目的・フェーズ | 書籍名 |
|---|---|
| ECの全体像をざっくり理解したい | まんがでわかる ECビジネス |
| 売上や運営の仕組みを見直したい | 売れる!EC事業の経営・運営 |
| 少人数運営で成果を上げたい | 月商100万円を達成する 最強のEC運営術 |
| Amazonを主な販路として伸ばしたい | 決定版 一生使えるAmazon輸入ビジネス大全 |
| AI時代のEC・大企業モデルを理解したい | AI-Ready Commerce |
| EC運営に必要な税務・会計を押さえたい | ネットショップのための確定申告入門 |
ここからは、それぞれの本を具体的に紹介していきます。
ECの全体像をつかみたい人におすすめ
ECに初めて関わる人や、知識を一度整理したい人向けです。用語や業界構造、ECビジネス全体の流れを俯瞰できる本を選んでいます。
まんがでわかる ECビジネス
『まんがでわかる ECビジネス』は、ECの仕組みやビジネス全体の流れをストーリー形式で理解できる入門書です。仕入れ・集客・物流・決済といった要素が、実際のビジネスの流れに沿って描かれています。
EC担当者本人だけでなく、営業・管理部門など周辺部署がECを理解するための一冊としても使いやすい本です。
EC運営の土台を固めたい人におすすめ
運営の考え方や、売上構造・役割分担・KPIといった、事業としての整理が必要な段階向けです。 属人的な運営から脱し、再現性のあるEC運営を目指すフェーズに向いています。
売れる!EC事業の経営・運営
『売れる!EC事業の経営・運営』は、ネットショップを「作業」ではなく「事業」として捉える視点を整理した一冊です。売上構造、役割分担、KPI設計など、現場と経営の間にある論点を丁寧に解説しています。
実務ノウハウ集というより、ECを長期的に運営するための土台づくりに向いた内容です。
少人数運営で成果を上げたい人におすすめ
人手や時間に制約がある中で、売上と業務をどう伸ばしていくかに悩むEC事業者向けです。立ち上げ期を越えやることが増えてきた段階で、施策の優先順位や運営の考え方を整理したい人に向いています。
月商100万円を達成する 最強のEC運営術
『月商100万円を達成する 最強のEC運営術』は、少人数体制でECを運営している事業者が、次に何へ注力すべきかを整理するための一冊です。商品設計、集客、導線改善といった施策を闇雲に増やすのではなく、「今やるべきこと」を順序立てて解説しています。
感覚的な運営から脱し、数字と構造でECを見直したい小規模から中規模ECに向いています。
Amazonを販路として伸ばしたい人におすすめ
自社ECとは異なる前提で動く、Amazon特有の仕組みを理解したい人向けです。副業・事業いずれの視点でも参考になる本を選んでいます。
決定版 一生使えるAmazon輸入ビジネス大全
『決定版 一生使えるAmazon輸入ビジネス大全』は、Amazonを主戦場にしたECビジネスの考え方を体系的に学べる一冊です。商品リサーチから販売、リスク管理まで、Amazon特有の前提を踏まえて解説されています。
Amazon販売に取り組んでいる人や、モール型ECの仕組みを理解したい方に適しています。
AI時代・大企業ECモデルを理解したい人におすすめ
事業モデルや組織設計を考えたい人向けです。AIの活用や、中長期視点でECを捉え直したい人に向いています。
AI-Ready Commerce
『AI-Ready Commerce』は、AI時代におけるコマース事業の変化を、主に大企業視点で整理した書籍です。個別の施策よりも、組織・データ・事業モデルの再設計に焦点を当てています。
現場ノウハウを求める人よりも、ECを含めた事業全体の将来像を考えたい企画・経営層向けの内容です。現場ですぐ使える施策を求めている人には、やや抽象的に感じるかもしれません。
ECの税務・会計を理解したい人におすすめ
運営が軌道に乗り始めたEC事業者には必須の税務・会計分野の入門カテゴリです。制度の全体像を把握する目的で選定しています。
ネットショップのための確定申告入門
『ネットショップのための確定申告入門』は、EC運営に必要な税務・会計の基本を整理した実務向けの一冊です。開業時の手続きから日々の記帳、確定申告、インボイス制度までを網羅しています。
数字や制度が苦手なEC担当者でも、最低限押さえるべきポイントを把握しやすい構成です。
ECの本選びは「今の課題」から考えるのが失敗しにくい
Amazonの評価やランキング、レビュー内容を参考にしつつ、EC担当者におすすめの本をフェーズ別・目的別に紹介しました。
EC関連の本は数多くありますが、評価が高いかどうかよりも、今の自社のフェーズや課題に合っているかが重要になります。ECやマーケティング領域は変化が速いため、具体的な仕様や手法はWebの一次情報を確認しつつ、書籍は全体像や考え方を整理する目的で活用するとよいでしょう。
本は「答え」を得るためというより、「判断の軸」をつくるためのツールと捉えると活用しやすくなります。





