「お酒をネット販売するには新たに免許が必要だと知ったけれど、具体的な手続きがわからない…」
ネットで酒類を販売するには、「通信販売酒類小売業免許」の取得が必須です。ただし、申請には税務署の審査があり、一定の条件をクリアする必要があります。
<通信販売酒類小売業免許を取得するために準備すること>
- 販売する酒類の種類と販売方法を決める
- 事業計画書や販売拠点の証明など申請に必要な書類を準備する
- 所轄の税務署に申請し、審査を受ける(審査期間は約2か月程度)
- 免許取得後、年齢確認の仕組みを整えた上で販売を開始する
この記事では、免許の取得条件・手続き・運営ルールをわかりやすく解説します。なお、本記事で記載の情報は2025年2月現在のものになります。免許取得の要件などについては、必ず最新の情報を国税庁のホームページで確認してください。
通信販売酒類小売業免許とは?
インターネットでお酒を販売するときには「通信販売酒類小売業免許」という、酒類をオンラインで販売するための許可が必要です。
通信販売酒類小売業免許は、実店舗の酒販免許とは異なるので、オンラインで酒類を販売をする際には必ず取得してください。免許を取得せずに販売を行うと法律違反に該当してしまいます。
通信販売酒類小売業免許で販売できる酒類
免許を取れば、どんなお酒でも自由に売れるわけではありません。販売できる酒類にはルールがあります。
販売可能な酒類
- 酒造メーカーや卸売業者から仕入れた酒類(正規ルートから入手した商品)
- 酒税法に適合している商品(ラベルや表示が正しい商品)
- 未成年者飲酒防止対策が整っているもの(年齢確認機能の導入が必須)
販売不可な酒類
- 自家製の梅酒や果実酒(家庭で作ったものは販売不可)
- 個人が所有しているお酒の転売(例:コレクションしていたウイスキーを売るのはNG)
販売時には「20歳未満の飲酒は禁止」「妊娠中や授乳期の飲酒は控えましょう」といった表示義務もあります。販売に関するルールを守らないと、行政指導や罰則の対象になります。
インターネット上で酒類を販売できる場所
通信販売酒類小売業免許を取得すれば、お酒をネット上で販売できるようになります。ここからは、具体的にどこで販売できるのか見ていきましょう。
ECプラットフォームでの販売

画像出典:Shopify
ShopifyやBASEのようなECプラットフォームを利用すれば、手軽にオンラインショップを開設し酒類の販売をスタートできます。
Shopifyでは3日間の無料期間に加え、3ヶ月間150円で試せるキャンペーン中です。この機会にぜひお試しください。(※ 2025年2月時点)
ECプラットフォーム例
プラットフォーム名 | 免許取得 | 特徴 |
---|---|---|
Shopify | 通信販売酒類小売業免許 | 年齢確認用のアプリを使用が必須・20歳未満の飲酒禁止の表記を明示する |
BASE | 通信販売酒類小売業免許 | 年齢確認用のアプリを使用が必須・20歳未満の飲酒禁止の表記を明示する |
楽天市場 | 通信販売酒類小売業免許 | 購入前に年齢確認のチェックを入れる仕組みを作る、20歳未満の飲酒禁止の表記を明示する |
Amazon | 通信販売酒類小売業免許 | 購入前に年齢確認のチェックを入れる仕組みを作る、20歳未満の飲酒禁止の表記を明示する |
自社サイトでの販売はShopifyがおすすめ
酒類をネット販売するなら、Shopifyの利用が便利です。
- カスタマイズ性の高さ:年齢確認機能を簡単に追加できる
- ブランド運営の自由度:独自ドメインやデザインを自在に設定できる
- 越境ECにも対応:海外向けの酒類販売にも活用できる
- 豊富なアプリ連携:酒類専用の在庫管理・販売管理ツールを導入できる
また、Shopifyは自社ECサイトとして楽天市場やAmazonと異なり、プラットフォームの制限を受けずに販売ルールを設定できるのも大きなメリットです。
免許取得後の販売プラットフォームとして、Shopifyは自由度が高く、成長しやすい選択肢のひとつになります。
Shopifyの開設について詳しくは以下の記事をごらんください。
フリマアプリ・オークションサイトでの販売
フリマアプリやオークションサイトでも酒類を販売することが可能です。ただし、出品には通信販売酒類小売業免許の取得が必須など、他のECプラットフォームと同様に規制やルールが定められています。各サービスによってルールが異なるため、詳しくは各サービスの酒類販売に関する条項を確認してください。
ふるさと納税サイトでの販売

画像出典:さとふる
酒類は、ふるさと納税の返礼品としても人気があります。 各自治体が運営するふるさと納税サイトに出品することで、全国の消費者に向けた販売が可能になります。
ふるさと納税サイトを利用する場合は、自治体の許可が必要になるため、直接問い合わせをして販売条件を確認してください。
サービス例
サービス名 | 免許取得 | 特徴 |
---|---|---|
ふるさとチョイス | 一般酒類小売業免許 | 自治体が許可すれば酒類の取り扱い可能 |
さとふる | 一般酒類小売業免許 | 自治体が許可すれば酒類の取り扱い可能 |
通信販売酒類小売業免許の取得条件
一定の条件をクリアすれば、個人でも法人でも取得可能です。ただし、すべての人が申請すれば通るわけではなく、審査を通過するための要件があります。
ここでは、取得に必要な4つの要件と、事前に準備すべきことを詳しく解説します。
免許取得に必要な4つの要件
通信販売酒類小売業免許を受けるためには、人的要件・場所的要件・経営基礎要件・需給調整要件の4つの要件を満たさなければなりません。
1)人的要件
人的要件では、反社会的勢力ではないか、過去に酒税法違反などで罰則を受けていないかなどを確認します。
1 酒税法 10 条1号から8号関係の要件(人的要件)
(1) 申請者が酒類等の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消 処分を受けた者である場合には、取消処分を受けた日から3年を経過していること
(2) 申請者が酒類の製造免許若しくは酒類の販売業免許又はアルコール事業法の許可の取消処 分を受けたことがある法人のその取消原因があった日以前1年以内にその法人の業務を執行 する役員であった者の場合には、その法人が取消処分を受けた日から3年を経過していること
(3) 申請者が申請前2年内において国税又は地方税の滞納処分を受けたことがないこと
(4) 申請者が国税又は地方税に関する法令等に違反して、罰金の刑に処せられ又は通告処分を受 けた者である場合には、それぞれ、その刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなく なった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過していること
(5) 申請者が、二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律、風俗営業等の規制及び業務の適正化 等に関する法律(20 歳未満の者に対する酒類の提供に係る部分に限る。)、暴力団員による不 当な行為の防止等に関する法律、刑法(傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合及び結集、脅迫 又は背任の罪)又は暴力行為等処罰に関する法律の規定により、罰金刑に処せられた者である 場合には、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過している こと
(6) 申請者が禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなっ た日から3年を経過していること
2)場所的要件
場所的要件では、販売場が酒類の製造場、販売場、酒場、料理店などと同一の場所ではないかどうかを確認します。
2 酒税法 10 条9号関係の要件(場所的要件)
正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けようとしていな いこと
3)経営基礎要件
経営基礎要件は、申請者が酒類の販売を継続しておこなえるかどうかを資金面や設備面などでチェックします。
3 酒税法 10 条 10 号関係の要件(経営基礎要件)
免許の申請者が破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合のほか、その経営の基 礎が薄弱であると認められる場合に該当しないこと
4)需給調整要件
需給調整要件は、需給と供給のバランスを維持した販売ができるかどうかを確認します。
4 酒税法 10 条 11 号関係の要件(需給調整要件)
酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の販売業免許を与えるこ とが適当でないと認められる場合に該当しないこと
通信販売酒類小売業免許の取得方法(申請手続きの流れ)
通信販売酒類小売業免許を取得するには、所轄の税務署に申請を行い、審査を受ける必要があります。まずは取得までの流れを整理していきます。
申請に必要な書類一覧
税務署での審査を通過するために、事前に以下の書類を準備しておきましょう。
<申請時に必要な書類>
- 酒類小売業免許申請書
- 販売業免許申請書(次葉1~6)※業務を行う場所の詳細や事業計画など
- 酒類販売業免許の免許要件誓約書
- 申請者の履歴書(法人の場合は、監査役を含めた役員全員分の職歴を記載)
- 定款の写し
- 契約書等の写し
- 地方税の納税証明書(法人の場合は、証明事項に「特別法人事業税」を含める)
- 最終事業年度以前3事業年度の財務諸表(申請者が個人の場合は、収支計算書等を添付)
- 土地及び建物の登記事項証明書
- その他参考書類(販売予定の酒類についての証明書など)
- 通信販売酒類小売業免許申請書チェック表
なお、申請書は国税庁のHPからダウンロードできます。また、国税庁「通信販売酒類小売業免許申請の手引」の19ページに申請書の記入例が載っているので、あわせてご覧ください。
申請の流れ
手続きは大きくわけて 「申請の準備」「審査」「免許取得」 の3つのステップにわかれます。
ステップ1. 申請書類の準備と提出
- 必要書類をすべてそろえ、所轄の税務署に申請を行う
- 書類に不備があると審査が長引くため、記入ミスがないかチェックする
ステップ2. 審査(標準処理期間2か月程度)
- 申請内容をもとに、税務署が審査を行う
- 追加の書類提出を求められることがあるため、すぐに対応できるよう準備しておく
ステップ3. 審査結果の通知と免許の取得
- 問題なく審査を通過すれば、税務署から免許付与の通知が届く
- 免許取得後、正式に酒類のネット販売が可能になる
書類の申請から免許取得までは数か月かかることを考慮し、販売計画を立てましょう。
取得にかかる費用
通信販売酒類小売業免許の取得にかかる費用は登録免許税です。免許1件につき3万円を免許付与時に税務署または金融機関等で納付します。また、事業計画書の作成や税理士への相談が必要な場合は、追加費用が発生します。
免許取得後の運営ルールと注意点
通信販売酒類小売業免許を取得すれば、オンラインでお酒を販売できるようになります。 ただし、免許を取得したあとも未成年者の飲酒を防ぐための対策や、酒税法に基づいた適切な運営が求められます。
未成年者飲酒防止のための表示基準
酒類を販売する事業者には、未成年者飲酒防止のためのルールが義務付けられています。 ルールを守らないと、行政指導や罰則の対象になるため、販売ページの設計には注意が必要です。
<必須の表示内容>
- 「20歳未満の飲酒は禁止されています」の表記を明示する
- 購入時に年齢確認を行う(注文時に「20歳以上であることを確認しました」とチェックを入れる仕組みを導入)
- 商品ページやカート内で未成年飲酒防止の注意書きを掲載する
年齢確認の方法は、ECプラットフォームごとにルールが異なります。例えば、楽天市場では年齢確認の仕組みを設定しないと酒類の販売ができない仕様になっています。 ShopifyやBASEを利用する場合も、年齢確認機能をカスタマイズして追加する必要があるため、事前に確認しておきましょう。
違反した場合の罰則
酒類のインターネット販売でも規制されている違反行為があります。それぞれ違反行為に対する罰則もあるので必ず確認しましょう。
違反行為 | 免許取得 |
---|---|
未成年者に販売した | 免許取消・罰金・最大2年以下の懲役 |
年齢確認を怠った | 行政指導・販売停止処分 |
無許可で販売した | 1年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
酒税法違反 | 追加課税・営業停止命令 |
一度罰則を受けると、再び免許を取得するのが難しくなる可能性があります。 「知らなかった」では済まされないため、事前にしっかりルールを把握しておきましょう。
まとめ|免許を取得して酒類のネット販売を始めよう
酒類のネット販売を始めるには、通信販売酒類小売業免許の取得が必須です。 免許の取得には人的要件・場所的要件・経営基礎要件・需給調整要件という4つの条件があり、審査を通過するためには事前の準備が欠かせません。
また、免許を取得した後も、未成年者飲酒防止のルールを守ることや、販売プラットフォームごとの条件を確認することが重要です。 違反が発覚すると免許の取り消しや罰則の対象になるため、適切な運営を行いましょう。