新春・お正月は、ECサイトにとって1年のスタートダッシュに大きな影響を与えやすい重要なタイミングです。「新春キャンペーン」「お正月キャンペーン」を実施することで売上を伸ばしやすい一方で、割引に頼った施策だけで終わってしまい、継続的な成果につながらないケースも見られます。
本記事では、ECサイト運営者向けに、新春・お正月キャンペーンの目的整理から、具体的な施策、スケジュール設計、実施時の注意点、さらにキャンペーン後の売上を継続させるための考え方までを体系的に解説します。
ECサイトで新春・お正月キャンペーンを実施する目的
新春・お正月キャンペーンは、単なる年始セールではなく、年明け直後の売上を作りやすい重要な施策です。年末年始ならではの消費行動を踏まえて設計することで、短期的な売上確保だけでなく、その後のEC運営にもつながる成果を狙うタイミングでもあります。
1月の売上を確保しやすいタイミングである
1月は年末商戦後で売上が落ち込みやすい一方、ボーナスやお年玉の影響で、購買意欲が高まりやすいユーザーが一定数存在する時期でもあります。新春・お正月キャンペーンを実施することで、この需要を取り込み、年明け早々の売上を作りやすくなります。
また、前年から持ち越した在庫や回転率の低い商品を、セット販売や福袋として展開すれば、値下げ一辺倒にならずに売上と在庫整理を同時に進めることも可能です。
セールをきっかけに新規顧客を獲得できる
新春・お正月キャンペーンは、新規顧客との接点を作りやすいタイミングです。年始は「新しいことを始めたい」という心理が働きやすく、初回購入のハードルが下がりやすい傾向があります。
割引や特典をきっかけに購入してもらえれば、自社ECサイトを初めて知ってもらう機会を作ることができます。ただし、値引きだけで終わらせず、次につながる導線を用意することが重要です。
キャンペーン後の売上につなげる入口になる
新春・お正月キャンペーンは、その場の売上だけでなく、その後の売上を作るための入口としても活用できます。購入時に会員登録を促したり、フォロー施策を用意したりすることで、リピート購入につなげやすくなります。
年明けのキャンペーンを「一度きり」で終わらせない設計が、EC全体の売上を底上げするポイントです。
新春・お正月キャンペーンのスケジュール設計
新春・お正月キャンペーンは、年明け直前から準備を始めるのでは対応が難しくなる場合があります。在庫・制作物・告知を段階的に進めることで、年末年始の業務負荷やトラブルを抑えながら、キャンペーン開始に備えやすくなります。
11月|在庫確保と商品選定
11月は、新春・お正月キャンペーンに向けた在庫確保と商品選定を進める時期です。年末商戦と在庫を共有する場合、想定より在庫が消化され、キャンペーン開始前に欠品が発生することもあります。そのため、通常販売分とキャンペーン用在庫をわけて考えておくことが重要です。
また、売れ筋商品に加えて、回転率の低い商品や前年からの持ち越し在庫を組み合わせることで、在庫整理を進めやすくなります。福袋やセット販売を行う場合は、この段階で内容を決めておくと、その後の準備がスムーズです。
11月下旬〜12月中旬|バナー制作とサイト改修
商品や施策が決まったら、バナー制作やサイト改修を進めます。トップページバナーや特設ページなど、ユーザーがキャンペーンに気づきやすい導線を整えておくことがポイントです。
あわせて、スマートフォン表示や読み込み速度の確認など、基本的な動作チェックも行っておくと、年明けのトラブルを避けやすくなります。
クリスマス終了後|キャンペーン告知の開始
クリスマス終了後は、消費者の関心が年末年始に向かいやすい時期です。このタイミングで新春・お正月キャンペーンの告知を始め、初売りの情報を届けていきましょう。
告知手段としては、メールマガジンやLINE配信、SNS投稿、サイト内バナーなどが考えられます。年末は情報量が多くなりやすいため、開催日・特典内容・期間などを簡潔に伝えることが重要です。
1月1日|新春・お正月キャンペーン開始
元旦はキャンペーン開始日としてアクセスが集中しやすいため、事前に在庫数や価格設定、表示内容、決済フローなどを確認しておく必要があります。また、年始は社内の稼働人数が限られるケースも多いため、問い合わせ対応や在庫管理のルールをあらかじめ整理しておくと安心です。
プッシュ通知やSNS投稿などを組み合わせて情報を発信する場合も、無理のない運用体制を前提に実施することが重要になります。
ECで効果が出る新春・お正月キャンペーン施策
新春・お正月キャンペーンでは、単に割引を行うだけでなく、目的や商材特性に応じて施策を選ぶことが重要です。ここでは、ECサイトで比較的取り入れやすく、新春キャンペーンと相性の良い施策を紹介します。
割引・クーポン施策
割引やクーポン施策は、新春・お正月キャンペーンでよく活用される施策の一つです。期間限定や数量限定と組み合わせることで、購入を検討しているユーザーの意思決定を後押ししやすくなります。
一方で、過度な値引きは利益率の低下やブランドイメージへの影響につながる可能性があるため注意が必要です。ECでは、商品単位の割引だけでなく、「◯円以上購入で利用可能」「会員限定」など条件付きで設計することで、客単価や会員登録を意識した運用もしやすくなります。
福袋・セット販売施策
福袋やセット販売は、新春・お正月ならではの特別感を演出しやすい施策です。単品では動きにくい商品も、セットにすることでまとめて販売しやすくなる場合があります。
ECで福袋を実施する場合は、「中身をすべて公開する」「一部のみ公開する」など、見せ方をあらかじめ検討しておくことが重要です。内容がわかりにくい形式は購入をためらわれたり、返品や問い合わせにつながったりすることもあるため、期待値とのズレを抑える設計が求められます。
ポイント還元施策
ポイント還元施策は、値引き感を抑えつつ、お得感を伝えやすい施策です。特に会員登録と組み合わせることで、キャンペーンをきっかけに会員数を増やしたい場合に活用しやすくなります。
即時利用できるポイントは購入判断を後押ししやすく、後日付与するポイントは再訪や再購入のきっかけになりやすい傾向があります。どちらを選ぶかは、短期的な売上を重視するか、継続利用を重視するかによって検討するとよいでしょう。
オンラインおみくじ・抽選
オンラインおみくじや抽選は、新春らしい楽しさを取り入れやすい施策です。サイト訪問時に参加できる仕組みを用意し、結果に応じてクーポンやポイントなどを付与することで、サイト内の回遊を促しやすくなります。
購入前・購入後のどちらにも組み込めるため、初回訪問者との接点づくりにも活用できます。ただし、特典内容や利用条件がわかりにくいと離脱につながることもあるため、内容はシンプルに、わかりやすく提示することが重要です。
SNSハッシュタグキャンペーン
SNSハッシュタグキャンペーンは、認知拡大や話題づくりを目的とした施策として活用されることが多い手法です。指定のハッシュタグを付けて投稿してもらうことで、ユーザーによる情報拡散が期待できます。
参加を促すためには、投稿のハードルを下げる工夫が欠かせません。購入商品やキャンペーン画面のスクリーンショットなど、簡単に投稿できるテーマを設定すると参加しやすくなります。また、特典内容や当選条件を明確にし、ルールを簡潔に伝えることで、トラブルの発生を防ぎやすくなります。
ECサイトで使いやすい新春・お正月キャンペーンの訴求ワード例
新春・お正月キャンペーンでは、施策内容そのものだけでなく、どのような言葉で伝えるかによって、ユーザーの受け取り方が大きく変わります。そのため、訴求ワードの選び方も重要な検討ポイントになります。
<代表的な訴求ワード>
- 新春セール
- 初売り
- 新春限定
- 数量限定
- 期間限定
あわせて、「◯月◯日まで」「先着◯名」といったように、条件や期限を具体的に示すことで、内容をわかりやすく伝えやすくなります。
一方で、「今だけ」「最安値」などの過度に煽る表現や、実態のない価格を基準とした割引表現は、消費者に誤解を与えるおそれがあります。表示内容によっては、不当表示として景品表示法の対象となる可能性があるため注意が必要です。
新春・お正月らしい特別感を伝えつつも、条件や期限を明確にし、誤解を招かない表現を心がけることが、キャンペーン訴求を行ううえでの基本となります。
新春・お正月キャンペーン後の売上を継続させる施策
新春・お正月キャンペーンは、実施して終わりではなく、その後の売上につなげていく視点が重要です。キャンペーンを通じて得られた購入データを活用し、適切なフォローを行うことで、次の購入につながる接点を作りやすくなります。
新春キャンペーン購入者の顧客セグメント分け
キャンペーン後の施策を考える際は、購入者を一括りにせず、属性や行動に応じて整理することがポイントです。新春キャンペーンでは、新規顧客と既存顧客が混在するため、同じ内容を一律に配信しても効果が出にくくなります。
代表的な分け方としては、「初回購入者/リピーター」「購入金額別」「購入商品カテゴリー別」などがあります。セグメントごとに情報や特典の内容を変えることで、その後のコミュニケーションを行いやすくなります。
購入者向けフォローメールの配信タイミング
フォローメールは、配信のタイミングを意識することで、ユーザーに受け入れられやすくなります。購入直後は、注文完了や配送案内とあわせて簡単な感謝メッセージを伝えることで、安心感を持ってもらいやすくなります。
商品到着後には、使い方や活用方法などの情報を届けることで、商品理解を深めてもらうきっかけになります。新春キャンペーン直後は情報が多くなりやすいため、売り込みを控え、役立つ内容を中心に構成することが重要です。
次回購入につなげる限定クーポンの設計
限定クーポンは、次回購入を検討してもらうためのきっかけとして活用できます。ただし、無条件で配布すると値引き依存につながる可能性があるため注意が必要です。
「◯円以上購入で利用可能」「対象カテゴリー限定」など条件を設けることで、利益面に配慮しながら再購入を促しやすくなります。新春キャンペーン後のクーポンは、単なる値引きではなく、継続的な関係づくりの一環として位置づけることがポイントです。
新春・お正月キャンペーン実施時の注意点
新春・お正月キャンペーンは注目されやすい一方で、運用面でのトラブルが起こりやすい時期でもあります。ここでは、事前に押さえておきたい注意点を2つ紹介します。
年末年始の物流遅延を考慮した配送日時の告知
年末年始は、配送会社の休業や荷物量の増加により、通常より配送に時間がかかる場合があります。そのため、キャンペーン実施時には、配送スケジュールに関する情報を事前に伝えておくことが重要です。
商品ページやキャンペーンページに、「◯日以降順次発送」「年始は配送に遅れが生じる場合があります」といった案内を記載しておくことで、ユーザーの認識をそろえやすくなります。
休暇期間中のカスタマーサポート体制の明記
新春・お正月期間中は、カスタマーサポートの対応時間が通常と異なるケースも少なくありません。そのため、問い合わせ対応の有無や対応可能な時間帯をあらかじめ案内しておく必要があります。
対応ができない期間がある場合は、「◯月◯日〜◯日まで休業」「お問い合わせへの返信は◯日以降」といった形で具体的に記載しておきましょう。あわせて、自動返信メールやFAQページなどを用意しておくことで、問い合わせ対応の負担を軽減しやすくなります。
新春・お正月キャンペーンの設計ポイントまとめ
本記事では、新春・お正月キャンペーンの目的や施策、準備の考え方、実施時の注意点を整理しました。
新春・お正月キャンペーンは、年始のタイミングを活かしてEC運営を見直す一つの機会です。売上づくりだけでなく、新規顧客との接点や会員化、在庫整理などを意識して設計することで、その後の運営に活かしやすくなります。
今回の内容を参考に、自社の状況に合った形で新春・お正月キャンペーンを検討してみてください。