Instagramは、視覚的な訴求力が高く、ECサイトとも相性が良いSNSです。積極的に運用することで、商品の認知拡大やブランド構築、売上向上といったマーケティングにつなげることも可能です。
この記事では、EC事業者向けに具体的な事例や運用のポイント、Instagramを活用するための方法を解説します。
EC事業者がInstagramを活用するべき理由
EC事業者にとってInstagramの活用は、他社と差別化ができる要素をもつ必須戦略ともいえます。Instagramの活用で、どのような効果があるか紹介します。
顧客の購入を後押しする
Instagramは、単なる集客ではなく、購買意欲を高めるためのプラットフォームとしても機能します。商品の想いやストーリー、レビュー、使用感といった「購入を後押しする情報」を提供することで、購入を検討している方の背中を押して購入へつなげます。集客のあとの購入行動の促進に欠かせない強力なツールと言えるでしょう。
ショッピング機能の活用で顧客の離脱を防止
Instagramにはショッピング機能があり、ECサイトと連携することでスムーズな購入を促します。EC事業者は、商品を紹介する投稿に商品のタグ付け機能を活用することで、投稿から購入までを行う導線を構築できます。
スムーズな購入体験は、購買意欲の高い顧客がECサイトに訪問するまでにサイトからの離脱防止にもつながります。
顧客との関係構築
InstagramなどのSNSでは、顧客と店舗が直接コミュニケーションを取ることが可能です。コメントやDM、リアクション機能を通じて、顧客との距離感を縮め、親密な関係を継続的に構築できます。顧客と密にコミュニケーションがとれることは、リピーター獲得やファン化にもつながります。一時的な接触で終わってしまう可能性が高い広告との大きな違いであり、Instagrmのメリットといえるでしょう。
Instagram運用が向いていないストア
Instagram運用は時間と労力、そして継続的な観測と改善が求められるため、すべてのストアに適しているわけではありません。以下に、Instagram運用の効果を発揮しづらいケースについて解説します。
即効性のある成果を求めるストア
Instagramは短期間で売上につながる広告とは異なり、すぐに売上が上がったりフォロワーが簡単に増える施策ではありません。長期的な運用戦略と顧客との関係構築が求められるため、短期的な売上アップを目的にする運用はあまり向いていません。あくまで、積み上げ系の施策として、中長期で目標を設定し粘り強く運用していく必要があります。
運用代行会社に丸投げするストア
Instagramの運用を、社内ではなく外部への委託を前提とすることはおすすめしません。
運用のすべてを外部に委託した場合、ショップの独自性やブランドの個性に一貫性を持たせて運用することは簡単ではありません。顧客との直接的なつながりや、リアルタイムの反応を活用した柔軟な運用も難しくなります。また、社内で運用に関する知見が溜まりづらいこともあげられます。
運用の全てを社内で行うことができない場合は、コストとメリット・デメリットを十分検討して一部の施策のみ切り出すなど検討しましょう。
Instagramの最新情報をキャッチアップしないストア
Instagramは、機能やトレンドの変化が速いSNSです。Instagramを効果的に運用するためには常に新しい情報や傾向を把握し、施策に反映していく必要があります。最新情報をキャッチするリソースが取れない場合、効果的な運用は厳しいでしょう。
Instagramのアカウント設定で押さえておきたいポイント
Instagramのアカウント設定は、運用の成果を左右する重要な要素です。ユーザーがプロフィールを見た瞬間に感じる第一印象は、フォロー率や購買行動に直結します。
EC事業者にとって、プロフィール設定を厳密に行うことが顧客との効果的な接点を生み出すカギになります。以下に、アカウント設定で押さえておきたい具体的なポイントを解説します。

プロフィール画像
プロフィール画像はアカウントの「顔」ともいえます。ユーザーがぱっと見てショップを認識できるようなロゴや、商品を象徴するモチーフにした画像を設定しましょう。
画像内に取扱商品ジャンルを明記することも効果的です。文字数は5文字程度に抑え、主要なデザインを邪魔しないよう配置やバランスに配慮して画像を作成しましょう。文字サイズは可能な限り大きく、背景とのコントラストを工夫して認識しやすいデザインに仕上げることで、より効果が期待できます。
ユーザー名
ユーザー名は、@(アットマーク)のあとに続く文字列です。Instagramの検索結果に影響する重要な要素です。ブランド名や運用ジャンルに関連する英単語やローマ字を必ず含めましょうまた、ユーザー名はInstagram上で最も表示頻度が高い項目であり、フィード、ストーリーズ、メンションなどで目にする機会が多いため、認識しやすく、覚えやすい単語を使いましょう。複数の単語を含む場合は「.」や「_」などの記号を使うと視認性が向上します。。(例:tokyo_pastaなど)
アカウント名
アカウント名は、プロフィール上で表示される文字列です。Instagramの検索結果に影響します。ショップ名やブランド名はもちろん、直感的に特徴が伝わる単語を取り入れるのがポイントです。地域に根ざした要素があれば、地域名を加えることで親しみやすさを高めることもできます。また、複数の関連単語を含む場合は「/」などの記号を活用して見やすく区切りましょう。ただし、文字数が多すぎるとプロフィールに煩雑な印象を与えるため、簡潔にまとめることを意識しましょう。
プロフィール文
プロフィール文は、ユーザーが第一印象を抱く重要な情報です。最初の4行は視認性が高く、アカウントの価値を伝える重要なポイントになります。特に1行目は重要で、伝わりやすい短い言葉を使ってインパクトを与えましょう。プロフィールに具体的な数字を盛り込んだ実績を取り入れることも他のブランドとの差別化につながります。
さらに、プロフィール文の締めくくりには、ストアリンク(ECサイト)への行動を促すメッセージを忘れずに添えましょう。「こちらから購入できます」「今すぐチェック」など、具体的なアクションにつながる言葉を添えることで、プロフィールを訪れたユーザーを効果的にショップへ誘導することが可能です。
ハイライト
ハイライトの活用次第で、アカウントの魅力と利便性を大幅に向上させることができます。
設置例として以下の項目があげられます。
- ECサイトへのリンク
- お客様の声やレビュー
- よくある質問の回答
- 限定クーポンやキャンペーン情報
カバー画像には統一感のあるデザインを採用し、洗練された印象を与えましょう。題名は可能な限り6文字以内に収め、シンプルで直感的に内容が伝わるよう工夫することが重要です。 ※2025年1月現在、ハイライトの題名が6文字を超えると「...」として省略される仕様になっています。
Instagramアカウント設計の参考例
EC事業者がInstagramを活用する際には、フォロワーや潜在顧客との効果的な接点を生み出すために、戦略的なアカウント設計が重要です。ここでは、情報提供型、商品PR型、ブランディング型という3つの運用スタイルを具体例とともに紹介します。自社に最適な運用方法を見つけるヒントにしてください。
情報提供型
自社のブランドや商品に興味のある潜在層に向けた情報の投稿を行うアカウントになります。

画像出典:さつまいも専門メディア
「さつまいも専門メディア」はその名の通り、さつまいもの専門メディアです。ECショップの「おいも.com」が運用しており、ECサイトではお芋スイーツを販売しています。
お芋に絞った投稿なので、フォロワーは必然とおいも.comの販売商品に興味のあるユーザーになります。
情報提供型の運用では、商品数の少ないショップであっても商品一辺倒のコンテンツにならず、フォロワーを飽きさせることなく投稿を続けることが可能です。また、他のユーザーの投稿をリポストするリポストメディアとしての運用も可能なので、投稿のアイディア探しに困ることはあまりありません。
プロフィール文章、ハイライトの作り方などが参考になるアカウントです。
商品PR型
自社の商品そのものを魅力的に見せる投稿を行うアカウントになります。

画像参照:テナベコーヒー
「テナベコーヒー」の投稿は自社商品の手鍋焙煎されたコーヒー豆がメインです。フィードとリールの投稿のバランスがよく、投稿のキャプション文も丁寧に書かれていて、ついつい読んでしまいたくなるようなコンテンツです。リールではコーヒーを淹れる動画をメインに投稿されており、商品の”動き”を活かしたコンテンツとなっています。
Instagram→LINE→オンラインショップの導線をつくり、LINE登録した顧客には期間限定の送料無料クーポンを提供するなど購買行動にうまく繋げている点も参考にできるでしょう。
ブランディング型
ブランドの世界観を固めた投稿をし、広告を活用して運用するかたちです。
ブランディング型では、下記のような流れで戦略をたてていきます。
1. ブランドコンセプトを決める。
2. アカウント開設(ブランドコンセプトに合ったプロフィール作成)
3. 30投稿ほど初期投稿を行う。(アカウントのホームページを整える)
投稿は自社商品のみにこだわる必要はなく、ブランドの統一感をだせるものであれば、AIで制作した仮想空間、商品以外のイメージ画像なども使用できます。統一された世界観をイメージして投稿を作りましょう。
4. 広告を活用し、アカウントに興味をもってくれそうなフォロワーを獲得する。
5. ECサイトに誘導する
他の運用方法に比べると戦略立案の難易度があがりますが、広告にかけられる予算がある、ブランドの世界観があるなどのショップであれば効果的にターゲット顧客を獲得することも可能です。
Instagram運用のポイント
Instagram運用の鍵となるのは以下のふたつです。
- データを基にした戦略的な改善
- フォロワーとの交流
アカウントの状況をデータで確認し課題をみつけ、具体的なアクションに結びつけることが大切です。運用に行き詰まった時、「次の一手」の引き出しを持っているか持っていないかでは改善・運用効率に大きな差が生まれます。ここでは、成果を最大化するためのポイントをいくつか紹介します。
データ分析と改善
データ分析によりアカウントの状態の把握、プロフィールや投稿が今のままでOKか、改善をするべきかの判断ができるようになります。Instagramの分析でみるべき指標を紹介します。
ホーム率(フィード投稿分析)
ホーム率はアカウントの運用状態を示す重要な指標の一つで、計算式は下記の通りです。
ホーム率=ホーム数 / フォロワー数 (目標:50%)
ホーム率が50%以上の場合、そのアカウントはフォロワーとの日常的なコミュニケーションが十分に取れている状態と判断できる目安になります。50%を下回る場合、フォロワーとの関わり方に改善の余地があるか確認しましょう。
改善案として、コミュニケーションの起点になりやすいストーリーズの投稿に力を入れましょう。以下のポイントを意識して運用します。
1)返信をしたくなるような投げかけをする
2)アンケートやスタンプなどのリアクションツールを設置する
3)滞在時間が長くなるようなコンテンツにする
さらに、投稿時間帯の最適化も有効です。フォロワーの活動が最も多い時間帯に投稿を行うことで、ホーム率が改善する可能性もあります。Instagramのインサイト機能を活用して、フォロワーが最もアクティブな時間帯を把握し、適切なタイミングで投稿を行いましょう。
フォロワー転換率(フォロー分析)
フォロワー転換率は、プロフィールと発信内容の魅力を示す重要な指標で、計算式は下記の通りです。
フォロワー転換率=フォロー数 / プロフィールアクセス数 (目標:8%)
フォロワー転換率が高い場合、アカウントが一貫性のあるブランドコンセプトを持ち、訪問者にわかりやすく、かつ魅力的に情報を伝えている状態といえます。具体的には、「誰が」「どのような情報を発信しているか」が一目でわかり、プロフィールのデザインや情報が整然としている状態のことです。
フォロワー転換率が低い場合、アカウントが雑然としている、またはブランドの魅力を十分に伝えられていない可能性が考えられます。改善するためには、以下の点を、一貫性のある世界観で整えましょう。
- アイコン画像
- プロフィール文
- ハイライト
- 投稿のサムネ及びコンテンツ内容
フォロワー転換率があがることは、数値改善に留まらずショップが顧客にどれだけ刺さるメッセージを届けられているかの指標にもなります。訪問者が「このショップの商品はいつもチェックしたい」「このショップをフォローすれば有益な情報が得られる」と直感的に感じるようなプロフィール設計を意識しましょう。プロフィールが整えば、より多くの見込み顧客を獲得する土台となります。
フォロワーとのコミュニケーション
ECショップでは顧客と直接対面することがないため、Instagram上でどれだけ「対話」を作り出せるかが鍵となります。ショップ側の一方向の情報発信ではなく、双方向の交流となることで、ブランドへの信頼を高め、顧客との長期的な関係を築く基盤となります。
コメントやDMでのやり取りを通じてフォロワーの悩みや疑問に答える、顧客ごとに個別にメッセージを送るなどで、まるで対面で接客をうけているような瞬間を作り出すことができます。
フォロワーとのやり取りから得られるフィードバックは商品開発としても活用できます。例えば、特定の商品に対するポジティブなコメントが多ければ、その商品を強化したプロモーションを行うチャンスになります。
フォロワーとのコミュニケーションは顧客対応だけではなく、ブランドの信頼性向上や、ECショップの成長を支える重要なマーケティング施策です。
Instagramとの連携でECサイトを成長させよう!
Instagramは、顧客の興味を引きつけ、顧客とのコミュニケーションをとれる効果的なツールです。商品やブランドの認知拡大にとどまらず、フォロワーとのコミュニケーションを通じた信頼関係の構築や、購買行動の促進にもつながります。
Instagram運用を強みとする場合、自社サイトをInstagramと連携しやすいプラットフォームで構築することもひとつの手です。ShopifyはInstagramと簡単に連携でき、少ない人数でも運用しやすいプラットフォームです。Shopifyについて詳しくはこちらの記事をごらんください。