年末年始は、EC事業者にとって年間売上を左右する大きな商戦期です。一方で、さまざまな企業のセール案内や挨拶メールが一気に増え、受信箱がメールであふれる時期でもあります。
「とりあえず挨拶メールだけ送って終わってしまった」「他のメールに埋もれて開封率が上がらない」といった悩みをもつ担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、この時期ならではの購買フェーズと顧客セグメントに合わせた、具体的なメルマガ配信の考え方と設計方法をまとめました。さらに、開封率を高める配信スケジュールやすぐに使えるテンプレートなども紹介します。
年末年始商戦で開封率を高めるメルマガスケジュール
年末年始のメルマガは、「いつ・誰に・どの内容を」届けるかで成果が大きく変わります。多くの企業のメールに埋もれないためには、この時期特有の生活リズムや購買行動を押さえたうえで、フェーズに合った情報を届けることが重要です。
12月上旬~中旬:潜在顧客向け「商品検討」を促す配信
この時期は、ボーナス支給や連休の予定を見据えながら、「何を買おうか」「年末年始に何が必要か」を考え始める段階です。まだ具体的な購入商品が決まっていない顧客に、自社サイトを思い出してもらうきっかけを作ることが目的になります。
目的
サイト回遊と情報収集の促進、年末セールや福袋情報の事前告知
配信タイミングの目安
平日夜(20〜22時)は、仕事や家事が落ち着いてスマホを見る人が増え、年末セール本番前でメールが読まれやすい時間帯です。
土曜の午前(10〜12時)は、休日に入ってゆっくり商品を見たい気持ちが高まりやすく、ギフト特集などへの誘導に適しています。
内容のポイント
具体的な値引きよりも、「今年頑張った自分へのご褒美特集」「一年の締めくくりにおすすめのアイテム」など、読み物としても楽しめる企画を交え、購買意欲をじわっと高めていく構成が効果的です。
12月下旬:既存顧客向け「配送締め切り」と「年内最終営業日」のアナウンス
年末が近づくにつれ、顧客の関心は「年内に届くかどうか」「いつまでに注文すれば間に合うか」といった実務的な情報に移っていきます。このタイミングでは、不安を解消しつつ、年内最後の駆け込み需要を逃さないための案内が重要です。
目的
駆け込み需要の創出、配送トラブルの回避、信頼感の向上
配信タイミングの目安
発送締め切りの2日前は、「あと◯日で締め切り」という訴求で購入を後押しでき、年内に買い物を済ませたい人が増える時期でもあるため、読まれやすいタイミングです。
休業前日(最終営業日)には、休業期間や出荷再開日を改めて知らせ、「【最終確認】年末年始の営業と配送について」など件名で重要なお知らせだと明示すると、顧客に安心感を与えられるでしょう。
内容のポイント
配送業者名、地域によるお届け日数の違い、遅延の可能性などをできるだけ具体的に記載し、「思っていたより遅かった」というギャップを減らしましょう。あいまいな表現は避け、目安となる日時を明示することが大切です。
1月1日〜3日:「初売り」の告知配信
新年のスタートは、多くの方が「初売り」「福袋」「新年セール」といったキーワードに自然と目が向くタイミングです。ただし、関心の高まりは長く続かないため、短期間でしっかりとアプローチすることが大切です。
目的
初売り・福袋販売へのスムーズな導線づくり、購買モチベーションの維持
配信タイミングの目安
元旦の午前中は家族行事や初詣でメールを確認しづらいため避け、1月1日の午後(14〜17時)や夜(20〜22時)のようにスマホを見やすい時間帯が適しています。
配信は1日は1通に抑え、2日・3日は「在庫わずか」「再入荷」「本日終了」など切り口を変えて短期間で続けると、初売りの高い熱量を維持できます。
内容のポイント
セール終了日時や限定数などの条件は、メールの冒頭やファーストビューに配置。画像とボタンを上部にまとめ、「パッと見て内容がわかる」構成を意識すると効果的です。
連休最終日:ラストスパートの駆け込み需要喚起
正月休みの最終日は、「明日から仕事(学校)が始まる」という現実を意識しつつ、最後の自由時間を過ごす日でもあります。この連休の締めくくりは、「気になっていたものを買っておこう」という気持ちが高まりやすいタイミングです。
目的
買い忘れの防止、リピート購入の獲得、在庫の整理
配信タイミングの目安
連休最終日の夕方(17時〜19時)の自宅でゆっくり過ごし始める時間帯を狙い、「連休が終わる前にチェック」「本日中で終了」といった訴求で、最後のひと押しを行いましょう。
件名の工夫
「本日23:59まで」「連休最終日限定」「休みが終わる前にチェック」など、期限がイメージしやすい言葉を入れて、開封と行動を促します。
内容のポイント
初売り期間中に閲覧があった商品や、人気商品で残りわずかになっているものをピックアップして案内すると、反応が取りやすくなります。カゴ落ちと組み合わせたリマインドも有効です。
コピー&ペーストで使える年末年始のメルマガテンプレート
年末年始は、メルマガ担当者にとっても非常に忙しい時期です。一から挨拶文やセール案内の文章を考えるのは負担になりがちです。
ここでは、顧客との関係構築と売上の両方を意識した、汎用性の高いテンプレートを紹介します。必要な箇所を自社の情報に差し替えて使ってください。
年末ご挨拶のテンプレート
年末の挨拶メールは、一年の感謝をきちんとお伝えする大切なタイミング。休業案内とあわせて送ることで、安心感も与えることができます。
件名:年末のご挨拶/本年も誠にありがとうございました
[顧客名] 様
平素より [ECサイト名] をご利用いただき、誠にありがとうございます。
運営担当の [担当者名] でございます。
今年も残すところあとわずかとなりました。
[ECサイト名] では、[今年力を入れたことやサービス改善点 例:新商品の拡充やサイトの使いやすさ向上] に取り組み、少しでも皆様のお役に立てていれば幸いです。
日頃より温かいご支援を賜り、心より御礼申し上げます。
―― 年末年始の営業と発送について ――
誠に勝手ながら、下記の期間を休業とさせていただきます。
- 休業期間:12月XX日(◯)〜1月XX日(◯)
- 年内最終出荷:12月XX日(◯)正午までのご注文分
休業期間中もご注文は24時間承っておりますが、発送およびお問い合わせへのご返信は、1月XX日(◯)以降、順次対応させていただきます。
ご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
来年も、皆様に喜んでいただける商品とサービスをお届けできるよう、スタッフ一同努めてまいります。
どうぞ良いお年をお迎えください。
[ECサイト名] 運営事務局
[署名/お問い合わせ先など]
初売り・福袋販売のテンプレート
年始のセールメールは、新年のご挨拶とお得な情報をバランスよく盛り込むことがポイントです。テンションは上げつつも、押しつけがましくならない表現を意識しましょう。
件名:【新年のご挨拶】初売りセールのご案内
[顧客名] 様
新年あけましておめでとうございます。
旧年中は [ECサイト名] をご利用いただき、誠にありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
日頃のご愛顧に感謝を込めて、毎年ご好評いただいている初売りセールを開催いたします。
―― 初売りセールのおすすめポイント ――
- 最大◯%OFFの特別価格
- 数量限定の福袋
- ポイント〇倍
この期間だけの特別な内容となっておりますので、ぜひお早めにご覧ください。
▼ 初売り会場はこちら
[初売り特設ページへのリンクボタン]
【セール期間】
1月1日(◯)00:00 〜 1月7日(◯)23:59
【福袋に関するご注意】
人気商品のため、販売開始直後はアクセスが集中する場合がございます。
売り切れ次第終了となりますので、あらかじめご了承ください。
本年も [ECサイト名] をご愛顧賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
[ECサイト名] 運営事務局
顧客セグメント別メルマガ活用術
年末年始は配信メールが増えるため、「また同じ内容だ」と思われると開封率が下がり、配信停止につながる恐れもあります。これを避けるには、顧客の状態に合わせてセグメント分けを行い、件名やオファー内容を変えて届けることが有効です。
休眠顧客:福袋・特別クーポンの訴求で呼び戻し
過去に購入履歴はあるものの、直近数ヶ月はアクセスや購入がない「休眠顧客」は、一度は自社を選んでくれた経験のある大切な顧客です。年末年始のタイミングで、「久しぶりに見てみよう」と思ってもらえるきっかけを用意しましょう。
件名の工夫
「特別感」と「期限」が伝わる表現を意識する。 例)【期間限定】[ECサイト名] からの期間限定特別クーポンのご案内
本文のポイント
過去の利用へのお礼を最初に伝え、「久しぶりの方限定で、特別なご案内です」という位置づけを明確にします。
注意点
休眠復帰後は、他の顧客と同様の配信頻度に戻すか、あらかじめ頻度を選べるようにしておくと、負担感を与えにくくなります。
優良顧客:先行販売・感謝を込めた特別な挨拶
リピート購入が多く、売上への貢献度が高い「優良顧客」には、割引だけでなく「特別に案内してもらっている」という実感を持ってもらうことが重要です。年末年始は、顧客が他社の情報に触れやすい時期でもあるため、自社とのつながりを保つ工夫が欠かせません。
件名の工夫
「日頃のご愛顧への感謝」と「特別なご案内」であることが伝わるようにします。 例)【ご優待】[顧客名] 様だけの先行セールのご案内
本文のポイント
一年間の感謝を丁寧にお伝えしたうえで、「一般公開より早く購入できる先行URL」や「通常セール対象外の商品を含む特別セット」など、特別感のある内容を明示します。
配信タイミング
一般顧客向けの案内より、半日〜1日程度早く配信するだけでも「自分は優先されている」という印象が生まれやすくなります。
カゴ落ち顧客:年末年始限定の追客
カートに商品を入れたまま購入に至っていない「カゴ落ち顧客」は、ニーズが明確な分、適切なフォローで購入につながりやすい層です。年末年始ならではの「お届け時期」「セール適用」などを組み合わせて案内しましょう。
件名の工夫
検討中の商品とタイミングをあわせて伝えます。
例)【年内お届けはあと少し】カートの商品をご確認ください
本文のポイント
カートに入っている商品の画像や名称を再掲し、「年内に届くための締め切り日時」や「初売り期間中の割引適用」など、「今ならどうなるのか」を具体的に示します。
自動配信の活用
MAツールやカートシステムの機能を利用し、「カート投入から◯時間後」「セッション終了から◯時間後」などで自動配信を設定しておくと、休業期間中でも一定の追客が可能になります。
年末年始休業・配送情報の伝達ポイント
年末年始は注文が増える一方で、配送会社や決済機関も休業や繁忙期に入り、配送遅延や問い合わせ対応の遅れが発生しやすくなります。こうしたトラブルは事前の説明次第で大きく防げるため、「信頼を守るための重要な案内」と位置づけてメルマガを発信することが大切です。
問い合わせ・カスタマーサポートの対応期間を明確に伝達
休業期間中に問い合わせをした顧客は、「いつ返事が来るのか」がわからないと不安になりやすく、その不安がクレームにつながることもあります。あらかじめ、対応スケジュールをはっきり示しておくことが大切です。
必ず伝えたい情報
- 休業期間
- 休業期間中に受け付けた問い合わせへの返信開始日
- 休業前の最終受付日時
表現の工夫
「休業明けはお問い合わせが集中する可能性があるため、ご返信まで通常よりお時間を頂戴する場合がございます。」といった一文を添えて、事前に顧客の期待値を調整しておきましょう。
ポイント
問い合わせフォームの自動返信メールにも同じ内容を記載しておくと、顧客がすぐに確認でき、安心感が高まります。
連休前後の注文・配送に関するアナウンスを徹底
年末年始は、道路状況や天候、取扱量の増加などにより、配送遅延のリスクが高まります。後から「聞いていない」とならないよう、影響が出る可能性のある期間と、注文締め切りを事前に共有しましょう。
必ず伝えたい情報
- 年内最終出荷の注文締め切り日時
- 年明け初回出荷の開始日
- 離島や一部地域では、さらに日数がかかる可能性があること
表現の工夫
「◯日以降のご注文は年明けの出荷となります。」と明確にしたうえで、「年内のお届けをご希望の場合は、お早めのご注文にご協力いただけますと幸いです。」といった、協力をお願いする表現を添えると、丁寧な印象になります。
ポイント
配送会社の案内を踏まえつつも、「必ずこの日に届きます」と断定する表現は避け、「目安」「予定」という言葉を用いるようにしましょう。
トップページへの掲載とリンク設定
重要なお知らせをメルマガだけに掲載してしまうと、「後から探しにくい」という不便さが残ります。年末年始の営業・配送情報は、サイト内のわかりやすい場所にも掲載し、メルマガとも連携させましょう。
導線の工夫
メルマガ本文の目立つ位置に、「年末年始の営業・配送スケジュールはこちら」といったリンクボタンを設置。
リンク先の内容
サイトトップに掲載したバナーや、お知らせページの上部に固定表示した特設ページなど、最新の情報をまとめて確認できるページが理想的です。
緊急連絡先の案内
システムトラブルやBtoB取引先からの急ぎの連絡などに備えて、休業期間中も確認できるメールアドレスなどを明記しておくと、安心感が高まります。
メルマガのモバイル最適化のポイント
年末年始は、自宅のPCではなく、帰省先・旅行先・リビングなどでスマートフォンからメールを確認する方が一気に増える時期です。このモバイル前提の状況に合わせた、メルマガ設計ができているかどうかは、同じ内容を送っていても成果に大きな差を生みます。
件名と本文の文字数を最適化
スマートフォンはPCに比べて画面が小さいため、件名の冒頭数文字や本文の最初の1〜2行で、メールを読むかどうかがほとんど判断されます。件名には、たとえば「◯%OFF」「福袋予約開始」「本日最終日」など、伝えたい要点をできるだけ件名の冒頭15文字程度に入れると効果的です。
【】(隅カッコ)といった記号を使う場合も、長くなりすぎないよう注意し、ひと目で内容が伝わる工夫をしましょう。
本文は一文に詰め込みすぎず、適度に改行して読みやすくします。特に価格や割引率、終了日時といった重要な情報は、太字や行頭の配置で目に入りやすくすると、スマホでもスムーズに伝わります。
CTAボタンと余白の調整
スマートフォンは指で操作するため、CTA(行動喚起)ボタンやリンクの間隔が狭いと誤ってタップしてしまう可能性が高くなります。ボタン同士やテキストとの間には適度な余白を設け、誤操作を防ぎながら見やすさも確保しましょう。
CTAボタンはメールの最後だけでなく、ファーストビューや各セクションの締めなど複数の場所に配置しておくと、ユーザーが気になったタイミングでスムーズに遷移しやすくなります。
年末年始の売上を伸ばすメルマガ施策を実践しよう
本記事では、EC事業者が年末年始の商戦でメルマガを活用する際に押さえておきたいポイントやスケジュール、テンプレートなどを紹介しました。
メルマガは広告費を抑えつつ既存顧客との関係を深められる、年末年始と特に相性の良い施策です。ただし、多くの事業者が同じタイミングで配信を行うため、戦略的な運用が欠かせません。
今回の内容を参考に、自社のメルマガ運用を整え、年末年始の売上最大化にぜひ役立ててください。