「Shopify Marketsって何?」「Shopifyで海外に販売する方法が知りたい」
このような疑問をお持ちの事業者の方も多いでしょう。「Shopify Markets(マーケット)」は、海外展開(越境EC)を可能にするShopifyの公式機能です。
この記事では、Shopify Marketsの概要やできること、実際の設定手順までを詳しく解説します。Shopifyで海外展開を検討している方はぜひ参考にしてください。
Shopify Markets(マーケット)とは?
Shopify Marketsは、Shopifyで海外展開(越境EC)をするために標準搭載されている機能で、複数の国や地域への販売が可能になります。
この機能は販売したい国や地域ごとに、顧客に合わせたショップの「見せ方」を細かく設定可能。例えば、「アメリカの顧客にはサイトを英語で表示し、価格は米ドルで支払ってもらう」といったカスタマイズができます。このように、ストアを現地の言語・通貨・文化に合わせて最適化することを「ローカライズ」と呼びます。ローカライズによって、海外の顧客にも快適な購買体験を提供できるため、ビジネスの成長につながるでしょう。
また、「日本では販売していない商品を、アジア限定で販売する」のように、戦略的なマーケティングにも活用できます。
Shopifyで越境ECを始める方法については、「Shopifyで始める越境ECガイド|設定方法からおすすめアプリまで」の記事を参考にしてください。
プランによるShopify Marketsの違い
Shopify Marketsはすべてのプランにおいて、無料で利用できます。ただし、一部の機能は上位プランでのみ利用可能です。主な違いは以下の通りです。
プラン名 | Starter | Basic | Grow | Advanced | Plus |
---|---|---|---|---|---|
マーケット作成 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
作成可能なマーケットの数 | 3 | 3 | 3 | 50 | 50 |
商品カタログの作成 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ドメインと言語のカスタマイズ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
マーケット毎に通貨・関税・税を管理 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
マーケットに合わせた テーマのカスタマイズ |
ー | ー | ー | ◯ | ◯ |
B2Bマーケットの作成 | ー | ー | ー | ー | ◯ |
※本記載は2025年6月時点の情報を元にしています。
下記のブログ記事では、Shopifyの各プランについて詳しく解説しています。ご参考にしてください。
Shopify Marketsの用語解説
Shopify Marketsにはいくつかの専門用語があります。それぞれの意味を解説します。
マーケット
特定の国や地域の顧客をひとまとめにしたグループのことです。「アジアマーケット」「アメリカマーケット」のように、国や地域ごとにお店を出し分けるイメージです。
この「マーケット」ごとに、表示する言語、通貨、販売する商品、商品価格、さらにはショップのデザインまで最適化できます。
親マーケット
複数の国や地域をまとめた、大きなグループ設定のことです。「北米」や「ヨーロッパ」といった大きな括りで、設定の大元となるテンプレートを作成できます。
例えば、「ヨーロッパ」という親マーケットで通貨やデザインなどを設定しておけば、その中の国々の設定を効率的に管理できます。
サブマーケット
親マーケットという大きなグループの中に作る、より具体的な国や地域ごとの設定です。親マーケットの「子」にあたります。
サブマーケットは親マーケットの設定を引き継ぐため、設定すべき項目が少なくなり、国ごとの細かな調整が楽になるでしょう。
継承(けいしょう)
親マーケットの設定が、その中のサブマーケットに自動的に「引き継がれる」ことです。
例えば、「ヨーロッパ」(親マーケット)で設定した通貨や言語、販売商品(カタログ)は、その中の「フランス」(サブマーケット)にも自動で適用されます。もちろん、引き継いだ後で「フランスだけはフランス語にする」「フランスでの価格を20%オフにする」といった個別の変更も可能です。設定の手間を大幅に省ける便利な仕組みです。
カタログ
特定のマーケットで「販売する商品をまとめたリスト」のことです。
「この商品は日本だけで販売する」「このTシャツはヨーロッパでは10%上乗せ価格で販売する」というように、マーケットごとに販売戦略を細かく設定できます。
Shopify Markets(マーケット)でできること
Shopify Marketsでできることを解説します。
ストアの言語と通貨のローカライズ
顧客がいる国に合わせて、ストアに表示される言語や通貨を自動で切り替えることができます。海外の顧客が感じる「言葉の壁」や「価格の分かりにくさ」が解消され、安心して買い物ができるようになるため、購入率の向上が期待できます。
国や地域ごとのドメイン設定によるSEO強化
販売する国や地域ごとに、専用のWebサイトアドレス(ドメイン)を設定できます。例えば、日本向けは「yourstore.jp」、アメリカ向けは「yourstore.com」と設定すると、検索エンジンが「このサイトは特定の国向けだ」と正しく認識します。
その結果、各国の検索結果で上位に表示されやすくなり(SEO強化)、顧客からのアクセス増加が期待できるでしょう。また、顧客に自国向けの公式サイトという安心感も与えられます。
国や地域ごとにドメインを取得する場合、ドメインの数だけ、毎年ドメイン代がかかります。
マーケット別の商品カタログ管理
「どの国で、どの商品を販売するか」をマーケットごとに自由に管理できる機能が「カタログ」です。例えば、「この商品は日本国内限定販売にする」「この新商品は、ヨーロッパでのみ先行販売する」といった戦略的な設定が可能です。
これにより、各国の法律や文化、需要に合わせた最適な商品ラインナップを提供できます。また、販売対象でない商品はストアに表示されないため、顧客の混乱を防ぐことにもつながるでしょう。
国ごとの柔軟な価格調整
同じ商品でも、販売する国や地域に合わせて販売価格を個別に設定可能です。海外販売では送料や関税などのコストが国によって異なるため、そうした費用を上乗せしたり、現地の物価に合わせて価格を調整したりできます。
これにより、各マーケットでしっかりと利益を確保しながら、顧客にとって競争力のある価格を提示することが可能になり、より戦略的な海外展開が実現できるでしょう。
Shopify Markets(マーケット)の設定手順
Shopify Marketsの設定手順を解説します。
Shopifyの管理画面にある「Markets」を選択。「マーケットを作成」をクリックします。

新しいマーケットの作成画面が表示されます。「名前」にマーケットの名前を入力し、「条件を追加する」をクリックします。

マーケットに含める国や地域を選択し、「完了」をクリックします。

これでマーケットが作成されました。

継承設定
続いて、継承設定をします。継承設定はサブマーケットに引き継がれます。項目は以下の通りです。
- 通貨:このマーケットで表示する通貨
- カタログ:このマーケットで販売する商品
- オンラインストア:このマーケットで表示するサイトデザイン
- ドメイン/言語:このマーケットで使用するドメインと言語
- 税および関税:このマーケットにおける税と関税

ストアのデフォルト設定が反映されていますが、「+」をクリックすれば、設定変更が可能です。
「通貨」では、マーケットで表示する通貨の種類、「価格の端数処理」と「為替レート」を設定できます。

「カタログ」については次項で詳しく解説します。
「オンラインストア」では、このマーケット専用にテーマをカスタマイズできます。

「ドメイン / 言語」では、マーケットごとにドメインや言語を設定可能です。

「税および関税」では、「売上税」と「関税と輸入税」の徴収と、「税金の表示」方法を選択できます。

カタログの作成
マーケットで販売する商品を「カタログ」として登録します。デフォルトでは「すべての商品」になっていますので、一部の商品を除外したい場合や、価格を変更して販売したい場合に活用します。
カタログの横にある「+」をクリックし、表示される「カタログを作成」をクリック。以下のような画面が表示されます。

タイトルには、わかりやすいカタログ名を付けておきましょう。
価格設定に関する項目は以下の通りです。
- 設定価格の通貨
- 全体的な価格調整
- 割引前価格
「設定価格の通貨」のデフォルトはストアの通貨ですが、現地の通貨に設定することが可能です。
※通貨を変更するには、Shopify Paymentsを導入し、多通貨に対応している必要があります。
続いて、「商品」の項目です。デフォルトではストアのすべての商品が販売対象になっています。商品を除外したい場合には、該当の商品にチェックを入れ、「カタログから除外する」をクリックします。

除外の確認が表示されますので、「商品を除外」をクリックします。

除外した商品は、「除外済み」のタブよりいつでも戻すことが可能です。設定が完了したら、「保存」しましょう。

その他の設定
その他の設定では以下の項目を設定します。
- 配送
- 割引前価格
- お客様のプライバシー

「配送」については、下記のブログ記事で詳しく解説しますので、そちらをごらんください。
欧州経済地域(EEA)には、商品の価格表示に関する特別な法律があります。 そのため、対象国にEEAの国が含まれる場合に限り、「割引前価格」を管理するこの項目が表示されます。現地の法律に対応する必要がある場合は、この項目で割引前の価格を非表示にしてください。詳しくはShopifyのヘルプページを参照してください。
「お客様のプライバシー」はプライバシーポリシーやCookieバナー、データ共有のオプトアウトページに関する設定などが可能です。詳しくはShopifyのヘルプページを参照してください。
サブマーケットの作成
サブマーケットの作成は簡単です。再度「マーケットの作成」をクリックし、対象に親マーケットに含まれている国や地域を選択します。サンプルでは親マーケット「ヨーロッパ」に含まれる、「フランス」を対象国としました。

これだけで、継承設定には親マーケットの設定が反映されます。サブマーケット独自の設定を行いたい場合には、設定項目右の「+」をクリックし、設定を行ってください。
Shopify Marketsを活用して、世界中の顧客に商品を届けよう
本記事では、Shopify Marketsの概要や設定手順について解説しました。
Shopify Marketsは海外展開の様々なハードルを大きく下げてくれる心強い機能です。言語や通貨、国ごとのルールといった壁を乗り越え、世界中の顧客に最適な購買体験を提供できるでしょう。
この記事を参考に、Shopify Marketsを活用して、世界中の顧客にあなたの商品を届けてください。