Shopify Japan株式会社は2026年2月25日、AI検索経由の注文数がグローバルで前年比15倍に増加したと発表しました。EC運営にAIサービスが関わる場面が増え、消費者の購買行動にも変化が生まれています。
出典:Shopify Japan株式会社「AI検索経由の注文数がグローバルで前年比15倍に増加」
AIを起点とした購買体験が広がる中、注目されているのがUCP(Universal Commerce Protocol)です。本記事ではUCPとは何か、なぜ登場したのか、Shopifyでストアを運営する担当者が確認しておきたいことを解説します。
UCP(Universal Commerce Protocol)とは
UCP(Universal Commerce Protocol)とは、AIエージェント、EC事業者、決済事業者、プラットフォームなどが、商品発見から購入後のサポートまでを共通の形式で扱うための規格です。
Shopify Japan株式会社より2026年1月13日にエージェントコマースに関する重要なアップデートとして「UCP(Universal Commerce Protocol)」が発表されました。
出典:Shopify:あらゆるAIとの対話に全ての加盟店をつなぐエージェントコマースプラットフォーム
従来のECでは、ユーザーが検索エンジンやECサイト上で商品を探し、商品ページを確認し、カートに入れて購入する流れが一般的でした。一方、AIエージェントを利用した購買体験では、ユーザーがAIに条件を伝え、AIが商品情報をもとに検索・比較し、チャット画面上で購入導線につなげる場面が想定されます。
たとえば、ユーザーがAIに「来週の旅行に使える軽いスーツケースを探したい」と相談した場合、AIは商品名だけでなく、サイズや重さ、価格などの商品情報や配送予定日、返品条件のような購入に関わる条件も含めて検索・比較します。ただし、ECサイトごとに情報の形式や購入手続きの仕様が異なると、AIエージェントが正確に情報を理解できず、購入をサポートすることが難しくなります。
そこで必要になるのがUCPです。異なるブランド、カートシステム、AIエージェントのための共通ルールを定めて、AIエージェント上で商品の探索から購入までをスムーズにやり取りすることができます。
UCPが登場した背景
UCPが生まれた背景には、AIチャットやAI検索を起点とした購買行動の広がりと、個別連携だけでは対応しにくいECの多様さと複雑さがあります。
AI検索・AIチャット経由の購買行動が広がっている
近年、複数のAIエージェントがリリースされ、業務だけでなく日常的な情報収集にも活用されるようになっています。ECにおいてもAIは商品を調べる手段にとどまらず、購買行動に影響を与え始めています。
Salesforceが発表した2025年のホリデーショッピングに関する調査では、世界全体のオンライン売上は過去最高となる1兆2,900億ドルに達し、そのうちAIやAIエージェントが全売上の20%にあたる2,620億ドルの収益創出に貢献したとされています。また、ChatGPTやPerplexityなどのAI検索チャネルからのトラフィックシェアは前年比で2倍に拡大し、AI検索経由で小売サイトを訪れた消費者は、SNS経由の消費者と比べて購入に至る確率が9倍高かったと発表されています。
出典:Salesforce、AIエージェント時代のホリデー商戦を分析 過去最高の売上1.29兆ドルを支えた「自律型AI」による顧客体験の変革
このように、AIエージェントは新しい販売チャネルとして存在感を高めています。EC運営者にとっては、AIに商品情報や購入条件を正しく理解してもらい、商品候補として扱われやすい状態を整えることが重要になっていきました。
個別連携ではAI時代のECに対応しにくい
AIエージェントが商品情報や購入条件を正しく扱うには、商品名や説明文だけでなく、価格、在庫、決済方法など、購入判断に関わる情報を整理しておく必要があります。
しかし、AIサービス、ECプラットフォーム、ブランドサイトがそれぞれ異なる形式で連携しようとすると、考慮すべき組み合わせは非常に多くなります。EC事業者側は、サービスごとに商品情報の形式や連携方法を調整しなければならず、どの基準に合わせて情報を整えるべきか分かりにくくなります。
また、AIエージェント側にも同じ課題が発生します。複数のECサイトやカートシステムと連携する場合、サイトごとに商品情報の項目や、チェックアウトで選択できる決済、注文確認の仕様などを理解しなければなりません。このような複雑な条件を各サービスごとに扱おうとすると、EC事業者側にもAIエージェント側にも大きな負担がかかってしまいます。
UCPは、こうした個別連携の複雑さを減らすために登場した共通ルールです。さまざまなマーチャント、AIエージェント、決済サービスが共通のルールでやり取りできるようにするためのオープンな規格として位置づけられています。
ShopifyとGoogleにおけるUCPの活用イメージ
ShopifyはGoogleと共同でUCPを開発しました。Etsy、Target、Walmart、Wayfairや数百万のShopifyマーチャントがこの規格を支持しています。さらにChatGPT(OpenAI)、Microsoft Copilot、Google、Metaといった主要なAIチャネルが、UCPを通じたショッピングへの対応を進めています。
特定のECプラットフォームだけに閉じた機能ではなく、エージェント型コマース全体を支えるための規格として設計されています。
主要AIチャネルで広がる購入導線
Googleは、検索のAIモードやGeminiの対象リスティングに購入ボタンを表示し、ユーザーがチャットから離脱せずに購入まで進める体験を想定しています。
決済手段はチャネルによって異なります。Google検索のAIモードやGeminiではGoogleアカウントに保存された支払い方法や配送情報を使い、Microsoft CopilotではShopifyが提供するチェックアウトで決済を完了できます。
Shopifyでは商品発見から注文確認までをUCPで扱う
ShopifyにおけるUCPの活用イメージは、AIエージェントがShopify上の商品を見つけ、カートを作成し、チェックアウトへ進み、注文状況を確認できるようにすることです。AIエージェント経由の購入であっても、販売者は顧客との関係や購入後の対応を引き続き担う形になります。
Shopifyの開発者向けドキュメントでは、Shopify内外のマーチャントの商品を1つのカートにまとめられるUniversal Cart APIも紹介されています。たとえば旅行に必要な商品を複数ブランドから選び、まとめて購入導線へ進める使い方ができます。
ECサイト内を回遊せずに決済が完了するため、商品単位での訴求や、購入後にブランド自体を認知してもらう施策の検討が必要になりそうです。
UCPで変わるECの購入体験
UCPによって変わるのは、AIチャット上で商品購入ボタンが表示できるようになるだけではありません。ユーザーはAIに相談しながら商品を比較し、条件に合う商品を選び、必要な場面で購入手続きへ進めるようになります。
AIエージェントが商品情報を理解しやすくなる
AIエージェントが商品を適切に提案するには、商品情報が整理されていることが大切です。商品名・素材・決済条件などが曖昧なままだと、AIはユーザーの希望に合う商品を判断しにくくなります。
AIエージェント経由で商品が見つかる時代を見据えて、商品説明や配送情報など、購入判断に必要な情報を整理しておきましょう。
チェックアウトまでAI上で進めやすくなる
UCPを利用することで、AIエージェントは商品を探すだけでなく、カートやチェックアウトに関わる情報も扱いやすくなります。
Shopifyの開発者向けドキュメントでは、UCPは商品発見、カート、チェックアウト、注文確認など、購入体験の各段階に関わると説明されています。ただし、すべての購入手続きがAIだけで完結するわけではありません。購入者による確認や、ストア側の条件に応じた手続きが必要になる場面もあります。
必要な場面では人間に引き継げる
UCPはAIエージェントだけではなく、人間への引き継ぎも前提にしています。たとえば、高額商品の購入、年齢制限のある商品を取り扱っている場合、購入者自身による確認が必要になるケースがあります。すべての購入手続きをAI上で進めるのではなく、購入者が確認できる画面やURLへ引き継ぐことができます。
EC運営者がUCPに向けて確認したいこと
UCPは新しい取り組みであり、今すぐすべてのEC運営者が利用できるとは限りません。今後に備えて商品データ、Google Merchant Center、配送や返品の条件を見直しておくとよいでしょう。
商品情報・配送情報をAIが理解しやすい状態にする
まず確認したいのは、商品や購入条件の整理です。たとえば「高品質なバッグ」とだけ書くよりも、「防水素材」「13インチのノートパソコン対応」「重量約500グラム」「通勤向け」など、購入判断に役立つ情報を記載した方が、AIエージェントもユーザーの希望に合わせて扱いやすくなります。
商品データを改善する場合は、Agentic StorefrontやShopify Catalog、Google Merchant Centerの商品データを確認するとよいでしょう。
Agentic Storefrontについては、以下の記事で紹介しています。
Google Merchant Centerの商品データを確認する
Google経由の購買体験を見据える場合、Google Merchant Centerの商品データも重要です。
Google Merchant Centerは、Google上の商品リスティングや広告に使われる商品データを管理する場所です。
商品フィード、価格、在庫、画像、ブランド情報、配送情報、返品ポリシーなどが最新の状態になっているかを確認しましょう。ストア上の価格とフィード上の価格が異なる、在庫切れの商品が掲載されている、返品条件が曖昧な状態は、購入体験の妨げになる可能性があります。
UCPの現時点での注意点
UCPはAIエージェント時代のECに関わる重要な規格です。ただし、現時点では提供範囲や利用条件を慎重に確認する必要があります。
すべてのShopifyストアが、すぐにAIエージェント上で購入手続きまで完結できるわけではない点に注意しましょう。
Shopify側の提供範囲を確認する
2026年5月19日にShopify DevelopersのXアカウントから、UCPのグローバル対応アナウンスがされました。

開発者向けドキュメントに「Build commerce agents with UCP」が公開されています。
ただし、現時点ではUniversal Cart APIがアーリーアクセスの状態など、機能は段階的に公開されている状況です。今後Shopify公式からの情報をキャッチアップしつつ、ストアへの対応が必要かどうかを判断していきましょう。
Google UCPで利用可能な購入導線と提供国
2026年6月時点で利用可能とされているものと、今後対応予定のものは以下の通りです。
- AI Mode in Google Search
- Google検索のAI Mode上で、商品を見つけて購入手続きへ進める導線
- Gemini web application
- Web版Gemini上で、UCPを活用した購買体験を提供する導線
- Gemini app
- 今後対応予定
Google Merchant Centerヘルプ上では、UCPによる決済機能は段階的に米国・カナダ・オーストラリアで展開されており、現時点では参加加盟店向けの早期アクセス段階です。(2026年6月時点)
利用できる導線や対象国、対象となる販売者は今後変更される可能性があり、導入を検討する場合はGoogle UCP FAQやGoogle Merchant Centerの最新情報を確認しましょう。
まとめ
UCPは、AIエージェント・EC事業者・決済事業者・プラットフォームが商品発見から購入後のサポートまでを共通の仕組みで扱うための規格です。AI検索やAIチャットが新しい販売チャネルとして広がる一方で、商品情報や購入条件が整理されていないと、AIエージェントに商品内容が正しく伝わらず、ユーザーの候補に入りにくくなる可能性があります。
まずは商品情報を整理する、Google Merchant Centerの商品データを最新に保つ、配送や返品条件を明確にするなど、AIエージェントに伝わりやすいブランド情報の土台を整えていきましょう。
