<Shopify事業者のインタビュー特集>
国産野菜を使った常温保存スープ「野菜をMOTTO」。運営するモンマルシェ株式会社は、物流を本業とする鈴与グループの食品事業から生まれた会社です。
鈴与グループ食品事業のルーツは1929年創業の清水食品。世界大恐慌で失業者があふれた時代に、仕事を作る意味合いも兼ねて、ツナ缶の製造から始まりました。地域と共に、従業員と共に生きる。鈴与の「共生(ともいき)」という理念がその出発点にあります。グループには清水食品とエスエスケイフーズというメーカーが並び、モンマルシェは小売りの立ち位置で、ダイレクトマーケティングによる直接販売を担ってきました。
モンマルシェ株式会社 常務取締役 河野雄士さんがこの事業に携わったのは2016年。鈴与で貿易の輸出入と倉庫物流に従事し、通販は未経験の異動でした。当時のオンラインショップは、事業全体のごくわずかを占めるにすぎませんでした。それが今では、事業の7割を支えるまでに成長しています。
リスティング広告に依存すれば、クリック単価の高騰で事業モデルは一気に崩壊する。だから認知度を高めて売る。カートシステムを課題に合わせて移行しながら、売り方の軸はぶらさずにやってきた同社のEC戦略を伺いました。

月5万のオンラインが、事業の7割を支えるまで
いまでこそEC中心に見える「野菜をMOTTO」ですが、実店舗と電話注文で顧客と直接やりとりする、ダイレクトマーケティングが事業の基盤にあります。オンラインショップは当初、その傍らのごく小さな存在でした。そのオンラインが、いまや事業の主戦場です。売上の7割を担うまでに育ってきました。

(野菜をMOTTO オンラインサイト)
—— 「野菜をMOTTO」は、どのように始まった事業なのでしょうか。
河野雄士さん(以下、河野さん) 一番最初は実店舗と電話注文ありきで、それを一年くらいやりながらECを導入し始めました。実店舗とアナログ通販を合わせると、最初は年商でいくと2億いくかいかないかぐらいで、オンラインショップは1ヶ月5万とか10万といったところで、本当に小さいところから始まった感じですね。
—— そうだったのですね。今はECとそれ以外でどれくらいの割合になっているのでしょうか。
河野さん 最初は実店舗とオフライン通販が1対1ぐらいで、オンラインショップはそこにほとんど数えられないぐらいでしたけど、最近はオンラインが事業全体の7割ぐらいを支えるようになってきています。それに対して、実店舗とオフラインがどこまで伸びているかというと、当時と比べても1.5倍ずつぐらいですね。
ただ、あくまで実店舗やオフラインの事業を強化するわけではなく、あくまで私たちの主戦場はオンラインと考えています。店舗については、採算収支ももちろん重要なんですけど、知ってもらう場としてギャラリー的な立ち位置にしているんです。そこで採算を取ろうとは考えていない。店舗をたくさん増やして、都内で100店舗にして利益を取る、という考え方でもないですね。

(店舗写真)
—— 店舗は拡大しないけれども、ECとともに広がる可能性はあるのでしょうか。
河野さん もちろん機会があればという話なんですが。私たちの会社は結果論かもしれませんが、少数精鋭みたいな形でやっています。いろんなやることがあって、縦割りになってしまうと、これはオンラインではこうだけど実店舗ではこう、という弊害が起こるわけですね。だから横串しでやっているんですけど、そうすると、実店舗まで手が回るかというのが大事になってくる。
実店舗は人が関わるので、接客のしっかりしたレクチャーが必要なんですね。そこまで手をかけて広げるのがいいかというと、やはり違うかなと思っています。
小手先で売らない。認知度を高めて売る
—— お客様の層は、オンラインと他のチャネルとで違いがあるのでしょうか。
河野さん 最近は顕著ですけど、やはり電話注文だと年齢層高めの方で、オンラインショップの方はそれより若い層ですね。定着度でいうと、電話注文のお客様の方が高くて、ウェブの方が低い。これはEC全般で言えることかなと思います。
10年くらい前に電話注文でいただいていたようなお客様、例えば50歳ぐらいの人とかも、今はオンラインを使われるケースが増えてきました。ただ、世代がどう変わったというよりも、オンラインを日常使いする方そのものが増えてきていて、そのボリュームが増しているなという印象ですね。
—— お客様の最初のタッチポイントは、基本的にウェブになるのでしょうか。それともオフラインの接点を意識して設計されていますか?
河野さん 例えば、オンラインでいかに完結するかというのはウェブマーケティングの考え方ですね。デジタルマーケティングの考え方は、オフラインで知ってオンラインで買うといった形になるわけです。私たちのビジネスモデルは、自分たちのブランドをまず他で知ってもらって、買うときに自社サイトに来てもらう。そういう持っていき方を目指しています。
たまたまウェブで出会って購入される方もいらっしゃれば、交通広告やテレビCMなど何かしらで「野菜をMOTTO」を知って、機会があって自社サイトで購入される方もいる。そうやって知ってもらった上で、サイトに来てもらうことを考えています。
ただ、私たちが目指すのは、小手先のマーケティング手法で売り上げを伸ばすことではなく、やはり認知度を高めて売り上げを伸ばしていく。それが目標ですね。
—— 効率を追う売り方とは、あえて距離を置いていると。
河野さん そうですね。リスティング広告で、いかに効率的にCPAを安く1件獲得していかに売り上げを増やすか、という形ですよね。でもそのやり方だと、インプレッションやクリック単価が高くなった時点で、一気に事業モデルは崩壊するわけです。そういう先が見えているので、私たちは認知を高めるという手法を取っているというところでしょうかね。
ECが主戦場でも、ECが目的ではない
—— ECは事業の中でどんな役割を担っているのでしょうか。
河野さん ECというのはあくまでも買い方や使い方だけの手段でしかないので、ECに特化した事業というよりも、ECでも展開できるという形だと思います。「ECで何とかしたい」というよりは、食品小売の事業として、どういう立ち回りがいいかが大事ですね。
事業ではECに加えて実店舗や電話注文などのアナログもやっているので、あえてそれを縦割りにせずに横串しにしていくことで、相乗効果を生むような事業体系ではありますね。
—— 売り先として、スーパーマーケットなどtoB向けは考えていらっしゃらないのでしょうか。
河野さん 売上だけを考えると、スーパーマーケットなどに販売するBtoBの方がやりやすいんですけど、私たちの商材は国産野菜にこだわっていますし、仮に不作の年があれば作らなかったりとか、その自由度を一つの武器にしているところもあります。安定供給が必要なBtoBになっては、自社のユニークさというか、尖っている部分がうまく出せないと思っているので、そこには挑戦しないという、それだけですね。
あと、私たちの商材は、素材にこだわっているので原価率は高いんです。お客様に還元するという意味合いでも、あいだに流通が入るビジネスモデルを展開してしまうと、どうしても価格が上がるか、質を落とさなくちゃいけない。ただ、それは私たちのコンセプトに反するので、しっかりといいものを使って、納得できる価格帯で出したい。そういった形で貫き通しているというところですね。
ECの土台の乗り換えを重ねて、Shopifyに移すまで
日本のEC黎明期、手早く始められるASP型のカート(ベンダー提供の月額型ECカート)は、多くの事業者の入口でした。初期費用を抑えられる反面、機能の追加やカスタマイズには限界があります。一方、2017年に日本法人を設立したShopifyは、当初こそ越境EC向けという立ち位置でしたが、日本語対応とアプリによる拡張性を武器に、D2Cの広がりとともに国内へ浸透していきました。
「野菜をMOTTO」も、やりたいことができないという理由で乗り換えを重ね、たどり着いたのがShopify。ASP型から数えて、4つ目のカートシステムへの移行でした。
—— ECサイトの立ち上げ当初は別のプラットフォーム。その後、今はShopifyで構築されていますね。
河野さん ECの事業を始めた当初は、カートシステムをどこにするか正直右も左もわからなくて、まずはASP型で始めてみようとカートを選んでいました。ASP型にも良し悪しがありますし、フルスクラッチも良し悪しがあり、現在のShopifyにも良し悪しがあるんですけど、私たちがどこに重要度を置くかで試行錯誤してるのが現状です。
今のShopifyは一番最初から数えて4つ目のカートになるかと思います。結局はやりたいことがASP型だとできないからという理由で変えてきましたね。
—— そのカートを選ぶ上で重要視していた指標は、やってみて変わってきたものはありますか?
河野さん ECは他の事業よりも変化が激しいものなので、その変化に対応していく、すなわちマーケットインの考え方に基づいて、トレンドや時流に沿った動き方をしていかなくちゃいけない。なので、元々当初想定していたものと違うところもあれば、今だからこそ、こういう形にしていこう、というのもある。そうやって変えてきました。
例えば、今だとAIとの付き合い方は非常に重要です。ShopifyとAIでどうしていこうか、といった動き方になりますね。
売り方の軸は変えず、それを載せる器は変え続けてきました。4つ目にたどり着いたShopifyで、「野菜をMOTTO」はどんな運用をしてきたのか。
後編では、実際のShopify構築や運用を担っているモンマルシェ株式会社 販売促進課課長 竹中有紀子さんを交えて、移行の実際とアプリの選び方、ブランドを育てる取り組みまで伺います。