AIサービスを利用して、会話や画像から商品を探す機会が増えています。AI経由の商品検索には、価格や在庫、バリエーションなどの情報を取得し、購入先まで案内できる仕組みが必要です。
Shopifyが開発者向けに提供している仕組みが「Shopify Catalog API」です。Shopify Catalog APIを利用すると複数のShopifyストアを横断する比較ショッピングエージェントや、特定ストアの商品だけを案内するAIアシスタントなどを開発できます。
本記事ではShopifyアプリやAIエージェントを開発する方に向けて、Shopify Catalog APIの仕組み、Global CatalogとStorefront Catalogの違い、利用できる3つのMCPツールについて解説します。
※本記事は2026年7月時点の情報をもとにしています。
Shopify Catalog APIとは
Shopify Catalog APIは、AIエージェントがShopifyの商品を検索し、最新の商品情報を取得して、購入先まで案内するための商品情報基盤です。2026年6月18日に公開されたShopify Spring ’26 Editionでは、画像を使った検索、最大50件の商品情報を取得するBulk Lookup(一括検索)など、新しい利用方法が紹介されました。
参考動画:Shopify公式チャンネル「Catalog APIとUCPを活用した開発」
Shopify Catalogには、Shopify上の商品情報が構造化され、検索できる形式でまとめられています。AIエージェントはCatalog APIを通じて、商品名や価格だけでなく、商品説明、画像、バリエーション、在庫状況、販売元、購入リンクなどを取得できます。
商品情報を共通の形式で扱えるため、AIエージェントは購入者の希望条件に合う商品を検索し、比較や購入へ案内しやすくなります。
Shopify Catalog APIはUCP対応のMCPサーバーとして提供される
Catalog APIの接続先として「Global Catalog MCP」と「Storefront Catalog MCP」が提供されています。両方ともUniversal Commerce Protocol(以下UCP)のCatalog capabilityを実装しています。UCPとは、商品検索、カート、チェックアウト、注文などのコマース処理を共通の形式で扱うためのプロトコルです。Shopify Catalog APIはその中で商品の検索や情報取得を担います。
現時点でShopifyが公開しているCatalogの接続先はMCPサーバーです。実装時はGlobal Catalog MCPまたはStorefront Catalog MCPを利用します。実装を確認する際は、Global Catalog MCPとStorefront Catalog MCPのリファレンスを参照してください。
Admin API・Storefront APIとの違い
Shopifyの商品情報を扱う仕組みには、Admin APIやStorefront APIもあります。Shopify Catalog APIとの主な違いは、利用目的と検索対象です。
| API | 主な用途 | 対象範囲 | 主な利用例 |
|---|---|---|---|
| Admin API | ストア運用や管理機能の開発 | アプリが権限を持つストア | 商品登録、在庫更新、注文管理 |
| Storefront API | カスタムストアフロントの構築 | 接続先となる特定の1ストア | 商品一覧、商品詳細、検索、カート |
| Shopify Catalog API | AIによる商品発見や比較 | 複数のShopifyマーチャント、または特定の1ストア | AIショッピング、比較検索、商品案内 |
Admin APIとStorefront APIは特定のShopifyストアの商品情報を管理したり、ストアフロントに表示したりするAPIなのに対して、Shopify Catalog APIは、AIエージェントによる自然言語検索や比較ショッピングを想定した仕組みです。
Shopify Catalog APIとAIチャネルの関係
ShopifyはAgentic Storefrontsを通じて、ChatGPT、Microsoft Copilot、Google AI Mode、GeminiなどのAIチャネルへ商品を展開しています。一方、独自サービスからCatalog APIを利用する場合は、取得した商品をどのように選び、並べ、説明するかを開発者側で設計します。
Shopify Catalogに商品が含まれていても、特定のAIチャネルで必ず表示されるとは限りません。最終的な表示順位、回答文、商品選定、購入体験は、接続先のAIチャネルや開発したサービスが決定します。
商品検索の仕組みを設計する際は、次の点を整理する必要があります。
- 購入者のどの条件を検索へ利用するか
- 商品をどの順番で提示するか
- 推薦理由をどのように説明するか
- プロモーション商品をどのように区別するか
- 購入前に確認してもらう情報は何か
検索結果の並び順や推薦理由の説明方法は、AIエージェント側で設計します。
Global CatalogとStorefront Catalogの違い
Shopify Catalog APIには、Global CatalogとStorefront Catalogの2つの利用方法があります。両方とも共通のMCPツールを利用しますが、検索対象や取得上限、一部の検索方法が異なります。何を開発するかに合わせて選択する必要があります。
| 項目 | Global Catalog | Storefront Catalog |
|---|---|---|
| 検索対象 | Shopify上の対象マーチャント | 特定の1ストア |
| 主な用途 | 横断検索、比較ショッピング | ブランド内の商品案内 |
| 検索方法 | テキスト、画像、商品参照による類似検索 | テキスト検索(画像検索は公式リファレンスに記載なし) |
| 商品のまとめ方 | UPIDを基準に商品と複数販売元のオファーを整理 | 対象ストアの商品単位 |
| lookup_catalogの上限 | 1回につき最大50件 | 1回につき最大10件 |
| 適したサービス | 比較検索AI、商品発見サービス | ブランド専用AI、商品検索チャット |
Global Catalogは複数のShopifyストアを横断して検索する
Global Catalogは複数のShopifyマーチャントから、購入者の希望条件に合う商品を検索できます。
次のような依頼を処理するAIエージェントを開発できます。商品カテゴリー、カラー、サイズ、価格帯、配送先、発送元、評価などを検索条件として利用可能です。
- 20,000円以内で雨の日にも履ける黒いスニーカーを探す
- 日本へ配送できるオーガニックコットンのセーターを比較する
- 評価4.5以上で在庫のあるバッグを探す
- 複数の販売店が扱う同一商品の価格や在庫を比較する
Global Catalogの検索結果は、Universal Product IDと呼ばれるUPIDを基準に整理されます。同じ商品を複数のマーチャントが販売している場合は、価格や販売状況が異なる検索結果をまとめて扱えます。
複数の販売元を比較するショッピングエージェントや、特定カテゴリーの商品を横断検索するサービスにはGlobal Catalogが適しています。
Storefront Catalogは特定ストアの商品だけを検索する
Storefront Catalogは検索対象を特定の1ストアに限定できます。ブランド専用のAI接客チャットや、ストア内の商品を比較するショッピングアシスタントなどに利用できます。
次のようなブランド専用の体験に適しています。
- 自社商品の質問に回答するAI接客チャット
- 用途や予算を聞いて商品を提案する診断コンテンツ
- サイズやカラーの在庫を確認する商品案内
- ストア内の商品を比較するショッピングアシスタント
- 商品候補から購入リンクへ案内する機能
複数の販売元を比較する必要がなく、特定ブランドの商品だけを案内したい場合はStorefront Catalogが候補になります。
Shopify Catalog APIで利用できる3つのMCPツール
Global CatalogとStorefront Catalogには、AIエージェントがMCP経由で呼び出す次の3つのツールが用意されています。
-
search_catalog:条件に合う商品を検索する -
lookup_catalog:商品IDなどから最新の商品情報を取得する -
get_product:1つの商品の詳細やバリエーションを取得する
AIエージェントが把握している情報に応じて、呼び出すツールを選択します。
条件に合う商品を検索するsearch_catalog
search_catalogは、購入者が入力した希望条件をもとに商品を検索するツールです。
購入者が「予算20,000円以内で、雨の日にも履ける黒いスニーカーを探して」と入力した場合、AIエージェントは希望を検索文やフィルターへ変換し、条件に近い商品を取得します。
Global Catalogでは、自由文に加えて、販売状況、配送先、発送元、価格帯、カテゴリー、カラー、サイズ、対象ジェンダー、評価などを指定できます。また、画像を検索条件に指定すると、見た目が似た商品を検索できます。検索文と画像を組み合わせた検索にも対応可能です。
商品IDやURLから最新情報を取得するlookup_catalog
lookup_catalogは、商品IDや商品URLが分かっている場合に、現在の商品情報を取得するツールです。新しいキーワード検索を行わず、既知の参照先を最新のCatalogデータへ反映します。
主な利用場面は次のとおりです。
- 過去の検索結果にある商品の価格や在庫を再確認する
- 購入者が共有したShopify商品URLから商品情報を取得する
- 保存リストに含まれる複数商品の販売状況をまとめて更新する
- カートへ追加する前に商品やバリエーションの状態を検証する
Global Catalogでは、1回のリクエストで1件から50件まで指定できます。公開リファレンスで対応が明示されている入力は、UPID、Shopifyの商品バリエーションID、Shopify商品URLです。Storefront Catalogは商品またはバリエーションの識別子を最大10件まで処理します。
商品詳細と購入可能なバリエーションを取得するget_product
get_productは、1つの商品について詳しい情報を取得するツールです。通常はsearch_catalogまたはlookup_catalogで候補を見つけ、購入者が商品を選んだ後に使用します。
取得できる情報には、商品名、説明、メディア、価格、オプション、バリエーション、販売状況、販売元、購入リンクなどがあります。オプション値には、組み合わせが存在するか、現在購入できるかを示す情報も含まれます。
selectedを指定すると、「カラーはブラック」「サイズはM」など、購入者が選択した条件を基準にバリエーションを絞り込めます。selectedはGlobal CatalogとStorefront Catalogの両方で利用できます。
Global Catalogではpreferencesも利用できます。完全に一致する組み合わせがない場合に、どのオプションから条件を緩めるかを優先順で指定するパラメータです。
Spring ’26 Editionで強化されたShopify Catalog API
Shopify Spring ’26 EditionではShopify Catalog APIの新機能として、画像を使った商品検索、複数の商品情報をまとめて取得する機能、取得できる商品情報の拡充が紹介されました。
Image Searchで画像から類似商品を検索できる
Image Searchは、画像をもとに見た目が似ている商品を検索する機能です。
次のような体験を構築できます。
- 街で見かけた服の写真から似た商品を探す
- 部屋の画像から近い家具やインテリアを提案する
- 商品画像と「もう少しカジュアル」などの文章を組み合わせる
- 参考画像に近く、指定予算内で日本へ配送できる商品を探す
テキストだけでは説明しにくいデザインや雰囲気を検索条件として扱えるため、ファッション、家具、雑貨、アクセサリーなどと相性がよい機能です。
Bulk Lookupで任意のURLから商品情報をまとめて取得できる
Bulk Lookup(一括検索)は、複数の商品参照やURLをまとめて最新のCatalogデータへ解決する機能です。Shopifyの発表では、フォーラム、レビューサイト、YouTube動画などの任意のURLを送信すると、ページ内容を解析し、Shopify Catalog内で特定された商品のリアルタイムデータを返すエンドポイントとして紹介されています。
たとえば、次のようなサービスに利用できます。
- レビュー記事や紹介動画に登場する商品の、現在の価格や在庫を表示する
- 購入者が貼り付けたURLをまとめてCatalogの商品データへ解決する
- 記事で紹介している商品の購入可否をまとめて確認する
商品を一件ずつ問い合わせる必要がないため、外部のコンテンツと商品情報をつなぐサービスに適しています。
Catalog APIで作られた5つのデモアプリ
ShopifyはSpring ’26 Editionにあわせて、Catalog APIとUCPを使って制作した5つのショッピングアプリを紹介しています。
これらは一般公開されているストアの導入事例ではなく、Shopifyのデザイナーと開発者が制作したデモアプリです。Catalog APIによる商品検索と、UCPによる購入までの処理を組み合わせることで、旅行、動画、占い、部屋づくりなど、さまざまな場面に商品購入機能を組み込めることを示しています。
動画に登場する商品を探せるShowroom
Showroomは映画やドラマなどの映像に映った家具や衣服を起点に、似ている商品を検索するアプリです。

画像出典:デモアプリShowroom
たとえば、動画に映ったデスクライトを選択すると、形状、素材、デザインなどが近い商品を複数のマーチャントから探し、購入可能な候補として表示します。
AIによる画像認識だけでは、実際に販売されている商品や現在の在庫までは確認できません。Showroomでは、AIが映像内の商品を認識し、Catalog APIが構造化された商品情報から類似商品を検索することで、映像から購入先までをつなげています。

画像出典:デモアプリShowroom
旅行先に合わせた持ち物を提案するAll Set
All Setは旅行先や季節に合わせて、衣服や持ち物を提案するショッピングアプリです。

画像出典:デモアプリAll Set
購入者が「春の京都」「夏のパリ」などの行き先を選ぶと、気候や旅行の雰囲気に合う商品をまとめて表示します。単に商品カテゴリーで検索するのではなく、旅行の目的や場面を踏まえて商品を提案する点が特徴です。
Catalog APIを利用すると、複数のShopifyマーチャントの商品から、サイズ、カラー、対象ジェンダー、画像、動画などの情報をもとに候補を絞り込めます。AIによる文脈の理解と、現在購入できる商品情報を組み合わせた事例です。
占いの内容に合わせて商品を提案するStarred
Starredは毎日の占いと商品提案を組み合わせたアプリです。

画像出典:デモアプリStarred
星座を選択すると、占いの内容とともに、天然石、入浴剤、キャンドルなど、その日のテーマに合う商品を表示します。たとえば、「気持ちを落ち着かせる」「眠りを支える」といった商品の用途や特徴をもとに検索し、占いの内容に合う商品を複数のShopifyマーチャントから探します。商品カテゴリーだけでなく、商品の用途や利用場面をもとに提案できることを示す事例です。

画像出典:デモアプリStarred
部屋の画像から家具や雑貨を探すSourced
Sourcedは部屋の画像をアップロードすると、画像内にある家具や雑貨に近い商品を検索するアプリです。

画像出典:デモアプリSourced
たとえば、子ども部屋の画像から、ベッド、ポスター、ぬいぐるみ、照明、収納家具などを認識し、それぞれに似ている商品を表示します。表示された商品を選択すると、さらに近い候補を探すこともできます。
Catalog APIの画像検索を利用し、1枚の画像に含まれる複数のアイテムを商品検索へつなげる事例です。商品名が分からない場合でも、部屋やコーディネートの画像から商品を探せます。

画像出典:デモアプリSourced
会話からボードゲームを提案するPippin
Pippinは購入者との音声会話を通じて、条件に合うボードゲームを提案するアプリです。

画像出典:デモアプリPippin
プレイ人数、所要時間、ゲームの雰囲気などを質問し、回答内容に合う商品をShopifyマーチャントから検索します。
Webサイトの検索画面だけでなく、音声アシスタント、チャットボット、家電の画面など、さまざまな接点からCatalog APIを利用できることを示しています。

画像出典:デモアプリPippin
Catalog APIは商品検索をさまざまな場面へ組み込める
Shopifyが紹介した5つのアプリに共通するのは、購入者が最初から商品名を入力していない点です。動画、旅行先、占い、部屋の画像、会話などを起点に購入者の意図を読み取り、Catalog APIから条件に合う商品を検索しています。Catalog APIが商品発見を担い、UCPがカートやチェックアウトなどの購入処理を担うことで、従来の商品検索画面とは異なるショッピングサービスを開発できます。
まとめ
Shopify Catalog APIはAIエージェントがShopifyの商品を検索し、最新の商品情報を取得して、購入先まで案内するための仕組みです。
Shopify Spring ’26 Editionでは画像検索や、URLから商品を特定するBulk Lookupなどが紹介され、商品検索から購入案内までを組み込める範囲が広がりました。
ただし、日本向けストアで利用できる範囲や購入までの導線は、Shopify Marketsの販売地域設定や接続するAIチャネルの対応状況によって異なります。実装時は、Shopifyの開発者ドキュメントと各チャネルの最新の利用条件を確認してください。