個性が光る気鋭ブランドが集まるジュエリー・アクセサリーのマーケットプレイス & セレクトショップunigem。東京代官山にある実店舗とオンラインサイトを展開している今大注目のショップです。
unigemを運営する株式会社simplify創業者であり代表取締役の扇谷早織さんに、Shopifyで構築するマーケットプレイス型のサイト構築や運営について、お話をお伺いしました。
前編では、オンラインサイトと実店舗運営のOMOマーケティングについて詳しくお伺いします<前編>
異業種からジュエリー・アクセサリー事業への参入
ーー 本日はどうぞよろしくお願いいたします。さっそくですが、創業に至るまでの扇谷さんのご経歴をお伺いできますか?
扇谷早織さん(以下、扇谷さん) 元々はIT系のコンサルティングファームで社会人生活を開始しました。アクセサリーとは全く関係ない、金融業界や消費財業界のクライアント向けの業務改革やシステムの導入、CRM系のデータ分析やMMM(マーケティングモデリングミックス)等を専門にしていました。
一方で消費者としてアクセサリーやジュエリーが大好きで、買うだけではつまらなくなってきたので趣味として、社会人生活のかたわらジュエリースクールに通っていました。3D CADから始まり一通りのもの作りを学びました。もの作りも楽しかったんですけれど、素敵なものを作っている若手ブランドが多くいることを知って、それにフォーカスしたお店を作りたいなと思って始めたのがきっかけです。
元々コンサルタントとしてフリーランスで活動していた形を法人成りさせてできたのが、今の会社です。コンサルタントの仕事も好きですが、自分の会社をコンサルティング会社にするつもりは元々なかったので、そろそろ自分の興味のある領域に投資じゃないですが、好きなことをやろうかなみたいな感じで始まっていきましたね。
ーー 経営者として多岐に渡る業務をされているかと思いますが、扇谷さんご自身が今実際に手を動かしているお仕事の領域はどのようなものですか?
扇谷さん 店頭業務やSNSの運営はスタッフに任せて、それ以外の部分、特にシステムやデータが絡む部分は私が担当しています。あとは新規ブランドの発掘やバイイングはスタッフと一緒に行っています。
ゆくゆくは今私がやっている業務もスタッフに任せていきたいなと思っています。EC担当者が欲しいというよりは、きちんとシステムやデータの構造を理解して扱える人材が欲しいですね。
ジュエリー・アクセサリーのマーケットプレイス & セレクトショップunigem
オンライン主軸の構想の中で実感した実店舗の必要性
ーー 元々店舗が先にあったのか、オンラインストアが先にあったのか、ビジネスの構想と実情はどうだったのでしょうか?
扇谷さん 元々オンライン主軸で考えていて、事業の初めから将来的にジュエリーのマーケットプレイスを作ることはイメージとして持ってました。始めた当時はWordPressのWooCommerceで始めようとして何となくモックを作って、目ぼしいブランドさんにいくつか話を持っていったんです。でも、オンラインだけだとちょっと…といった反応がやはり多くて、実店舗がないと話にならないのだなと。
店舗を立ち上げるとなるとそこそこの初期費用がかかってしまうので、どうしようかなと思っていたところでちょうど当時のオフィスの近く、渋谷のファイヤー通りに路面店舗の空きが出まして、ご縁ということですぐ契約してお店を作っちゃったという感じです。なので、構想としてはオンラインが初めにあったんですけれども、実態としては店舗が先にできたという感じですね。
ーー すごい決断力と行動力ですね!実店舗がないとブランドさんとの取引が難しいというお話がありましたけど、そもそもアクセサリー自体をオンラインで売ることに信頼がそんなになかったということでしょうか?
扇谷さん まずはアクセサリーで実績のない会社がいきなりマーケットプレイスをやると言っても信頼してもらえなかったというのが大きいと思います(笑)。「オンラインサイトなら自分でできるので」と断られたこともありましたし。あとは、2019年当時コロナ前でしたので、今と比べると圧倒的に、”どちらかというとジュエリーはリアルで買うもの”、という風潮が強かったかなと思います。
リングがわかりやすいですが、サイズ感が非常に難しい商材で、同じ13号でもデザインによっては小さく感じることもありますし、重さや着用感もオンラインでは伝わりません。そのような不安な気持ちを持つお客様は多いですし、ブランドからしても「できれば実物を見て判断してほしい」というのが本音だと思います。
オンラインが入口になる店舗集客
ーー お客様の実際のニーズは、オンラインと実店舗で違いを感じることはありますか?
扇谷さん ニーズの違いはそこまで大きくは感じないのですが、店舗にいらっしゃるお客様は「リアルで物を見て判断したい方」「高単価なものを購入される方」「店頭スタッフと会話しながらお買い物をしたい・空間を楽しみたい方」が多いかなと思います。つまりオンラインの不安を払拭したい方、オンライン以上の体験を求めている方、です。
数値としてはオンラインが7割程ですが、店舗にいらっしゃる方にお話を伺うと、大体InstagramやWebサイト、LINE配信などオンラインの何かをきっかけにされていることが多いです。
ーー OMOで行っている独自の施策はありますか?
扇谷さん あまりオリジナリティ溢れるものはやっておらず、定番のものばかりです。例えば店頭で会員登録いただいて、オンラインでも店頭でも使えるポイントを差し上げる、とか。
店頭でしかお買い物をされないお客様についてもなるべく多くデータを収集してオンラインのデータと紐付けるようにはしていて、どんなお話をしたか、何を検討して何を買った、どんなテイストがお好みかなど、接客内容の履歴も詳細に記録しています。
あと効果を感じているのは、LINE配信やInstagramですね。先ほど店舗にいらっしゃる方はオンラインの何かをきっかけにしている、とお話しましたが、その中でも多いのがInstagramです。人気なブランドで入荷を待っている方が多い場合はLINE配信が効果的です。お客様によっては「Instagramに載っていたこれを見にきました」とスクリーンショットを見せていただくケースも多いです。
東京代官山の実店舗
男性4割の実店舗来客。実店舗だからこそ見える顧客像
ーー オンラインと実店舗のお客様で違いを感じることはありますか?
扇谷さん オンラインは当然ではあるのですがお客様の数、お住まいの範囲も日本全国も北から南まで幅広いですし年齢層も幅広く男女も問わずです。店頭のお客様の方がよりもうちょっと絞られてる印象はあって。
店頭はとにかくおしゃれな方が多いです。あとは案外男性が多いです。現状大体4割くらいでしょうか、しかも女性向けギフトというよりはご自身用の方が多いです。
ーー それはすごく新鮮な驚きですね。確かに、ユニセックスとまで明記はないですが、過剰にレディース感は感じられないサイトになっていますよね。
扇谷さん 私の意向で、「レディス」「メンズ」「ユニセックス」の表現は基本的に使っていません。明らかにフェミニンなデザインや、女性向けのサイズで作られているものもありますが、物を選ぶ基準は人それぞれですから、ご自身の価値観に合えばそれが正解だと思います。 ご来店されるお客様もそのような価値観の方が多いのでしょうね。
ーー 元々男性も視野に入れたブランディングだったのでしょうか?
扇谷さん YESでもありNOでもあります。男女の区別をしない、というのがポリシーだったので、男性を視野に入れていたというよりは、蓋を開けてみたら結果的に4割男性だった、という感じですね。
Shopify POSとSquareを併用したレジ運用
ーー 実店舗ではShopifyPOSを導入されていらっしゃいますが、Shopify POSを選んだ理由はなんでしょうか?
扇谷さん 店舗とオンラインで在庫情報をリアルタイム同期したかったからです。売上のデータもお客様のデータも一箇所にまとまっていた方が、分析しやすいですし。
ただ、Shopify POSだけでいいかというと現状そうではなくて、Shopify POSとSquareを併用したオペレーションを行っています。あまりスマートな形ではないのですが、Shopify POSでレジを打つことで在庫の調整やお客様情報の紐付けを、決済部分のみSquareを使用する二重オペレーションになっています。Shopify POSだと現状クレジットカードリーダーのような決済端末がないんです。クレジットカード番号を手入力でポチポチ入力すればできるんですけど、現実的ではないので。
ーー Shopify POSの実際の使用感はいかがですか?
扇谷さん 非常に使いやすくて、店頭のスタッフも特に迷うことなく使ってます。実店舗を持ちながらオンラインをやる事業者の方は、オペレーションとして無理がなければShopify POSは使った方がいいと思います。データを一箇所にまとめて、オンラインとリアルをシームレスに見ることに大きな意味があると思いますので。
OMO施策からShopify POSの実情まで貴重なお話しありがとうございました!「2025年1月23日(木)」公開予定の後編では、Shopifyで構築したマーケットプレイス型のサイトについて詳しくお伺いします。