自宅で手軽に楽しめるコーヒーが多くの人々に支持される今、コーヒー豆のネット販売は新たなビジネスとして注目を集めています。焙煎に情熱を注ぐプロフェッショナルの方も、新しい趣味として始めたい方も、Shopifyなどのプラットフォームを活用することで、それぞれの想いを形にしながら個性あふれる商品・ショップを作り上げることができます。
本記事では、コーヒー豆ネット販売の基本から運営方法まで、実践的な知識とアイデアを詳しく解説します。
なぜ今コーヒー豆のネット販売が選ばれるのか
コーヒー豆のネット販売が注目される背景には、商品の特性や市場動向、消費者のライフスタイルの変化があります。
ライフスタイルの変化による市場拡大
コロナ禍以降のおうち時間の増加やリモートワークなどさまざまな要因により、家庭でのコーヒー需要が伸びています。全日本コーヒー協会が発表しているデータによると、ひとりあたりの1週間当たりの杯数は7.67杯数と、喫茶店やコーヒーショップで飲む杯数(0.2杯)を大きく超えています。昨今のスペシャリティコーヒーへの注目度も高く、今後も、家庭でのコーヒー飲用率は引き続き堅調であることが見込まれます。
参照:全日本コーヒー協会 日本のコーヒー飲用状況 調査(2023)
保存が効き配送しやすい商品
コーヒー豆は生鮮食品とは異なり、適切な保存方法で長期間品質を保てるため、ネット販売に適しています。また、軽量で小さく梱包してポスト便や簡易梱包での配送も可能なため、配送業務のコストを抑えた運営が可能です。
差別化を図りやすい商品とリピーターの獲得
コーヒー豆は種類も多く、焙煎度、産地の特徴などを活かした多様な商品展開が可能なプロダクトです。自家焙煎で独自性を出すか、仕入れによる多品種展開で広く顧客を獲得するか、運営方法の自由度が高く、必ずしも実店舗がなくても始められることもメリットといえるでしょう。また嗜好性が高く、一度気に入った豆を見つけた顧客がリピーターになる可能性が高い点も魅力のひとつです。
コーヒー豆のネット販売を始める前の事前準備
コーヒー豆のネット販売を始めるには、事前の準備や計画をしっかり練りましょう。法的手続きや設備の整備、ブランドの方向性を明確にすることで、安定した運営基盤を築いた状態でスタートできます。ここでは、販売開始前に押さえておくべき重要なポイントを詳しく解説します。
コーヒー豆販売で必要な許可と手続き
コーヒー豆を販売するために必要な許可は、カフェなどで自家焙煎を行うか、仕入れた豆を自分で包装するか、完成密封された商品を仕入れて販売するかなどによっても異なります。
2021年の食品衛生法の改正により、焙煎した豆を仕入れて自分で密封包装する場合でも「営業届」が必要となっています。焙煎場所が飲食店の営業許可を取得している場合でも、コーヒー製造業の届け出が必要になります。営業届を出す場合、「食品衛生責任者」の資格を取得することが求められます。
これらの手続きは保健所で行うことができますが、自治体ごとに要件が異なる場合があるため、事前に事業所の所在地を管轄している保健所に確認しましょう。
自家焙煎か仕入れか?選択ポイント
コーヒー豆の販売方法として、自家焙煎か仕入れのどちらかを選ぶ必要があります。自家焙煎では、独自の風味や品質を追求できる一方で、焙煎設備や技術が必要になります。一方、仕入れによる販売は初期投資を抑えつつ、多様な商品を扱える利点があります。
どちらを選ぶかは、ビジネスの目指す方向性や初期費用、運営体制に応じて判断するのがポイントです。独自性を重視する場合は自家焙煎を、手軽にスタートしたい場合は仕入れを選ぶとよいでしょう。
仕入れ先の選定
仕入れ先の選定は、コーヒー豆の品質と価格に大きく影響します。信頼性の高い生豆業者や農園との直接取引が不可欠です。また、国内外の生豆輸入業者が提供する豆の産地や特徴を比較し、ブランドに合った豆を選びましょう。
ブランドのターゲットが求める豆の特性やトレンドの把握も必要となります。たとえば、フェアトレードやオーガニック認証を受けた豆は高付加価値の製品として。
初期費用と設備の準備
ネット販売を始めるための初期費用は、どのような規模でどのように販売するかによって異なります。自社の形態にあった必要な設備を検討し、費用の目処をつけてから運用を始めましょう。
設備 | 費用目安 | |
---|---|---|
自家焙煎 | 焙煎機 | 数万円~数百万円 |
自家焙煎 | 手網または鍋などの焙煎道具 | 数千円~数万円 |
自家焙煎 | パッケージ資材(ロゴ入り袋やシールなど) | 数千円~ 資材による |
自家焙煎/仕入れ共通 | ネットショップ構築・運用費用 (初期構築費用や月額利用料) |
数千円~数百万円/月 |
ブランディング
コーヒー豆のネット販売では、ブランドイメージが顧客の購買意欲を左右します。ロゴデザインやパッケージデザインはもちろん、商品説明や感情に訴えるストーリーを通じてブランドイメージを構築することが大切です。
また、ブランドコンセプトに一貫性を持たせることで、他店との差別化を図りやすくなります。例えば、「地元農園との協業」や「体に優しい有機商品」といったテーマを掲げることは、顧客の共感を得るきっかけになるでしょう。
コーヒー豆ネット販売の始め方
ネット販売を始めるには、販売プラットフォームの選定やショップ構築が必要です。ここでは、ネット販売をスムーズに進めるための基本ステップを解説します。
販売プラットフォームの選び方
コーヒー豆のネット販売を始める際、販売プラットフォームの選定は重要なステップです。目的や予算に応じて、適切なプラットフォームを選びましょう。
販売プラットフォーム | メリット | デメリット |
---|---|---|
ECモール | 圧倒的な集客力を活用できる | 手数料が高く利益が圧縮されやすい ブランド構築が難しい |
オンラインサイト | 初期費用がかからない 操作が簡単で手軽に始められる |
デザインや機能に限界がある プラットフォーム依存する |
自社サイト | 自由度が高く、ブランド独自に構築可能 SEO、買い物周りなどの施策が打ちやすい アプリが豊富で追加機能が実装しやすい |
集客を自分で行う必要がある 初期設定や運営に一定の知識が必要 |
Shopifyでネットショップを作成する基本手順
Shopifyはカナダ発全世界で使われているECサイトを構築するプラットフォームです。専門的な知識がなくてもECストアを構築することができるため、初心者でも扱いやすいプラットフォームです。以下にショップをオープンするまでの基本的な手順を紹介します。
1. Shopifyでアカウント作りサイトの作成を開始する
2. ネットショップのベースとなるデザイン(テーマ)を選択する
3. トップページや商品ページを作成する
4. 配送や決済の設定を行う
5. ショップをオープンする
Shopifyの始め方について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
Shopifyの始め方(構築方法)|会員登録からストア開設(立ち上げ)までの流れ
コーヒー豆販売の集客方法
ネットショップを軌道に乗せるためには、集客と販売戦略が欠かせません。ここでは、SEO、SNS、メールマーケティングという3つの主要な手法を活用し、顧客との接点を増やす方法を紹介します。
SEOを活用したネットショップ集客術
SEO(検索エンジン最適化)は、ネットショップにおける集客の基本です。コーヒー豆販売のようなニッチな市場では、「スペシャルティコーヒー 通販」や「自家焙煎 コーヒー豆」などのキーワードに基づいたブログ記事や商品ページを作成することが重要です。
「コーヒー豆の選び方」や「おすすめの抽出方法」といったコンテンツを充実させることで、検索エンジンからの流入を増やすことにつながります。こういった記事は集客・販売促進だけでなく、ブランドの専門性のアピールにもなるでしょう。
SNSを使ったプロモーション
InstagramやTwitterなどのSNSは、コーヒー豆のネット販売において効果的なプロモーションツールです。焙煎中の様子や、綺麗なラテアート、パッケージデザインなどの写真や動画を投稿することで、ブランドの信頼を築きながら顧客の購買意欲を高めることができます。
さらに、SNSを通じたコミュニケーションは、消費者の声を直接知る貴重な機会です。顧客の関心や反応を把握し、それをもとにプロモーションや商品展開を行うことで、ブランドの魅力・信頼を深めるきっかけとなります。このようなアプローチは、ブランドの価値を高めるだけでなく、長期的なファンを育て、売上拡大に繋がっていきます。
初心者でもできるメールマーケティングの活用法
メールマーケティングは、初めてネット販売を行う方でも取り組みやすい効果的な方法です。新商品の案内や季節限定キャンペーンの告知、買い物忘れ(カゴ落ち)へのフォローなど、さまざまな場面で活用できます。
メール配信では顧客が気軽に受け入れられるコミュニケーションを意識しましょう。たとえば、購入特典やコーヒーに関する豆知識など、役立つ情報を提供することで、メールの内容に価値を感じてもらい、信頼を高める効果が期待できます。
さらに、配信のタイミングや内容を工夫することで、再購入を促すだけでなく、顧客が他の人にブランドを紹介したくなるようなきっかけを作ることが可能です。
コーヒー豆のネット販売の事例4選
オンラインショップでコーヒー豆を販売する際、他社の成功例を参考にすることは非常に有益です。ここでは、個性あふれる4つのショップを取り上げ、それぞれの強みや特徴をもとに、自分のショップ運営に活かせるポイントを紹介します。
森とコーヒー。
画像引用:森とコーヒー。
福岡県糸島市に位置する「森とコーヒー。」は、森の中で自家焙煎のコーヒーを提供するショップで、オンライン販売も展開しています。
視覚的な魅力
ブランドの世界観を伝える写真やデザインを採用し、コーヒーそのものだけでなく、「森とコーヒー。」という体験を販売しています。
ストーリー性
「自分に帰ろう、森へ行こう。」という唯一無二のブランドメッセージが、顧客の共感を呼びます。
Instagramの活用
商品やイベント情報・お店での新たな取り組みを定期的に発信しています。また、営業前は必ずライブ配信するなど顧客とのコミュニケーションを欠かさず行っています。
テナベコーヒー
画像引用:テナベコーヒー
テナベコーヒーは、手鍋焙煎のコーヒー豆を手頃な価格で提供しつつ、地元のイベントに参加したり、オンライン手鍋焙煎教室を開催するなど、顧客との直接的なコミュニケーションも重視している点が特徴です。
SNSの導線
Instagram→LINE→オンラインショップの導線をつくり、LINE登録した顧客には期間限定の送料無料クーポンを提供するなど購買行動に繋げています。
ストーリー性
「病気になった母に親孝行したくて手鍋焙煎」というキャッチコピーが、顧客の興味を惹きつけます。
納品物
商品の丁寧な梱包はもちろん、領収書、手書きのお礼のコメント、購入したコーヒー豆の挽き具合(挽き目)のサンプル、入れ方の説明書が同梱されています。(2024年12月時点) 購入して終わりではなく、顧客ファーストのアフターフォローはブランドの信頼やファン化に繋がります。
BLUE BOTTLE COFFEE
画像引用:BLUE BOTTLE COFFEE
BLUE BOTTLE COFFEEは、世界的に有名なコーヒーチェーンです。オンラインショップではShopifyを使って構築しています。
視覚的な魅力
ShopifyのテンプレートPrestigeを活用したサイトは、使いやすいUI・高級感と親しみやすさを兼ね備えた顧客体験を提供しています。
ギフト機能
Shopifyのアプリを活用したギフト機能により、購入者は相手の住所を知らなくても商品を贈ることができます。オンラインの繋がりが増えた現在にマッチした機能で、新たな市場であるギフト需要にも対応しています。
買い物まわり対策
サイトのわかりやすい構成や、商品一覧ページにある「絞り込み機能」、商品ページにある「パンクズリスト」や「よく一緒に購入される商品セクション」は顧客がスムーズに商品を選びやすくなるだけでなく、サイト内での回遊性が高まり、購入意欲をさらに高める仕組みとなっています。
みちみち種や
画像引用:みちみち種や
みちみち種やは北海道にある、自家焙煎コーヒー豆専門の間借り店舗兼オンラインショップです。北海道を中心にそれぞれのお店のイメージに合わせてつくる珈琲豆の卸売も行っています。
視覚的な魅力
写真や動画、イラスト、背景色を上手く組み合わせて”楽しめる”ショッピング体験を提供しています。
ストーリー性
コーヒー豆に対するこだわりや想いを生産者の顔が見える形で紹介しています。「誰が、どのように育てた豆か」をクリアに説明することで、顧客への信頼を獲得します。
定期便サービス
お気に入りのコーヒー豆を定期的に届けるサブスクリプションサービスを展開し、顧客との長期的な関係構築を図っています。価格、送料、配送周期、解約方法がわかりやすく明記されており、購入障壁の低い商品ページとなっています。
コーヒー豆のネット販売のポイントを押さえよう!
コーヒー豆のネット販売を運営するためには、以下の点を押さえることが重要です。
- 許可や手続きの適正化:営業届、税務関連の手続きなど、顧客と店舗の安全を守るためにも法令遵守を徹底しましょう。
- ブランドコンセプトの明確化:他店との差別化できる独自のブランドストーリーと商品を設計しましょう。
- 顧客体験の向上:パッケージや商品説明の工夫、迅速な配送対応、アフターフォローなどで、顧客満足度を高めましょう。
- 継続的なマーケティング:SEOやSNS、メールマーケティングを組み合わせ、集客・リピータ獲得に注力しましょう。
コーヒー豆のネット販売は、自分の情熱やこだわりを多くの人々と共有できる魅力的なビジネスです。特別な風味やストーリーを持つコーヒー豆は、多くの顧客に喜ばれる商品となるでしょう。
新たな一歩を踏み出し、誰かの日常に特別な時間を提供するショップを作りませんか?