Shopifyストアを運営する株式会社ドットミソ代表取締役のテキサスアユミが、ひとりShopify運営の実情やら売上やら赤裸々に明かしながら、ストアの成長を目指す連載【Shopify七転び八起き】。
第2回では、2024年に主催した北海道での長期ポップアップと同時開催したオフライン特設サイトでやった施策を大公開。OMO施策とかっこよく言いたいけれど、とにかく泥臭くやった施策と結果をすべてお伝えします。
北海道江別蔦屋書店で開催した長期ポップアップ
過去最大級の味噌だけの長期イベントをオフラインとオンラインで主催。
こんにちは、テキサスアユミです。私は東京に拠点を持つ全国のみそのセレクトショップ「ドットミソ」を運営しています。普段はShopifyで構築したオンラインサイトでの販売をメインに、小さなマルシェから百貨店の催事出店までさまざまな場所で出店をし、自社の味噌商品や全国各地の味噌を販売しています。
さて、そんな弊社のオフライン集大成。2024年9月21日から10月27日まで約1ヶ月と1週間、北海道江別市にある江別蔦屋書店さんにて、全精力を注ぎ込んだ過去最大級の味噌ポップアップを主催しました。
オフライン、オンラインとさまざまな施策を行った一ヶ月の会期ですが、この連載記事では、実際に私がShopifyサイトで行ったことを施策と結果を書き記したいと思います。
ポップアップでやった施策を並べる。施策の量だけはすごい。
まずは、ポップアップ期間の一ヶ月とその前後でやってきたことを、箇条書きであげてみます。
①ポップアップ全体施策でやったこと
戦略:ポップアップの具体的な内容を練る
- ポップアップの目的を設定し、目標金額を決める
- オンラインサイトと店頭販売の同時開催を決定する
- ポップアップのスピンアウト企画【MISO PEOPLE'S VOICE】の実施する
広告:ポップアップ前・最中に広告を出す
- Google広告を期間中うっすら出す
- Google Merchant Centerの無料枠でショッピング広告を出す
- インスタ広告を期間中うっすら出す
- 現地ワークショップ開催時にmeta広告を出す
そして会期2週間を残して広告をやめる判断をする。
PR:ポップアップ前と最中にPRをする
- イベント5日前にPR TIMESでプレスリリースを出す
- プレスリリースのタイミングで特に取り上げてほしいメディア13社へ個別に連絡する
- 札幌近辺のインフルエンサー18人へ個別DMを送る
- 札幌で取り上げてほしい番組関係者(アナウンサーなど)の個人アカウントへ個別DMを送る
②オンラインでやった施策
自社サイトとSNS共通でやったこと
- スピンアウトのインタビュー企画【MISO PEOPLE'S VOICE】をする
- 週替りのスペシャルセールの実施する
- 販売している味噌のレシピ情報を発信する
- 迅速丁寧な対応、カスタマーサービスに命をかける
自社サイト(Shopify)でやったこと
- ポップアップ特設サイトを作成する
- 商品ページを作り込む
- メールマガジンを19通送る
- 【MISO PEOPLE'S VOICE】のコンテンツを作成する。
SNSでやったこと
- フィード・リール・ストーリー全部合わせて229投稿する
- ハイライトを設定する
- プロフィールをポップアップ押し出しに変更する
X
- 個人アカウントで毎日1投稿以上を目標にポストする
- バナーをポップアップのビジュアルに変える
- プロフィールをポップアップに寄せる
- 公式Xの運用を外注する
③オフラインでやった施策
売り場を作り込む
- 世界観を出す展示の設計
- ビレッジバンガードのようなおすすめポップを作る
- ポップアップガイドのブックレットを作成する
- 店頭の大きなポップを会期半ば、最終日と変える
- 最終日はブックレットを配布する
現地に行ってプロモーションする
- 試食会を会期中2回開催する
- ワークショップをポップアップ初日と会期半ばの2回開催する
Shopify施策以外の施策とイベントの実際の収支
Shopify施策以外のオフライン施策の詳細、イベント全体の実際の収支などは有料記事になりますがnoteに記載しています。よろしければどうぞ。
Shopifyに避けた工数は振り返るとわずか
施策を改めてみると、なんとShopify施策が少なくシンプルなことか。とはいえ、力を抜いてたわけではなく、Shopify施策は売上に直結することなので、事前の作戦ではもっと売上を上げるために、細かい戦略をねるべきだったと反省しています。
1ヶ月のポップアップ期間で、北海道の現地にいたのは約8日間。その他は東京の事務所で施策実行です。会期中の私が何をやっていたかでいうと、ざっくり以下のような工数配分です。
インタビューの実施と記事作成 40% SNS 25% メルマガ配信 20% Shopify改善 10% 発注や発送関連 5%
ちなみに頭を使う難易度は、このような形。
Shopify改善 > SNS > メルマガ配信 > インタビューと記事作成 > 発注・発送・請求書その他(でもこれが一番ややこしい)
ポップアップ特設サイトをなんとか作ったけど、全然売れないので会期中に改善
Shopifyの自社サイトは常日頃から基本的には私一人で運営しています。なので、素早くできることももちろんあれば、凝ったデザインやシステムの導入など作り込めないこともあります。
その中で、とにかく期間が決まっていて工数が限られている中で、効果=売上につながる施策を選んでやっていきました。
まずはランディングページとしてデフォルトのページ機能で特設サイトを作りました。
特設サイトの作成で意識したことは以下の通りです。
・イベントの狙いや概要がわかる ・開催日時と場所がわかる ・イベントの最新情報がわかる ・商品がわかる ・買える ・関連コンテンツが載っている
最初はすべてを詰め混んでやりきったと思ったのですが、あまりに内容が混沌としてサイトを訪れたユーザーがアクションしない、つまり全然売れないことに気づきました。
コンバージョンにつながるランディングページを変更
そのため、特設サイトはプレスリリースなどからの受け口とし、実際に購入のアクションをしてもらうために「商品のコレクション」で、とにかく買いやすいことを意識して商品一覧を作りこみました。 それが、以下の商品一覧です。
商品一覧も、最初は杓子行儀に「米味噌、麦味噌、豆味噌…」といった分類で、完全に味噌事業者や一部の愛好者にしか伝わらない分け方で、買ってほしいユーザーには全くささらなかったのか、全然売れませんでした。
その後、なぜ売れないのか自分ではわからなくなってきたので、Shopify運用を創業時からサポートしていただいている方に意見をもらいながら会期中に加えた主な改善は以下の通り。
Shopifyで改善したこと
商品一覧ページ | ・初心者向け・中級者向け・マニア向けの選びやすいセットをつくる ・心に訴えるようなタグにする。例)人生で一度は食べてほしい味噌 ・サムネイルにイベント色を出す |
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商品個別ページ | ・商品ページのテンプレートを商品ごとにわけて、商品ごとにページを作り込み ◯おすすめレシピを掲載 ◯味噌蔵の方のインタビューを掲載 ◯関連商品を個別に選んで掲載 ・細かいアップデート:サムネイルの変更、タイトルの変更、サムネイル画像表示サイズの変更 |
注文完了メール、カゴ落ちメールなどの通知メール | ・イベント告知のバナーを貼る ・週次で内容を変えるポップアップバナーをだす |
サイト全体 | ・メインビジュアルを変更する(デザイン要素の強い画像から商品写真を使った視認性の高い画像へ) ・サイトにチャットボットを設置する |
流入が多いページごとに個別最適化したバナーを挿入
また、ドットミソでは味噌に関するブログ記事を創業時から作っており検索流入も多かったので、流入が多い記事10本の冒頭にコンテンツの内容に合わせたバナーを作成して貼りました。
(キャンプ飯の記事の冒頭に貼ったバナー)
これはバナーをつくる手間をかけた分、バナーのクリック率が10%ほどあがり成果につながったといえる施策でした。
必ずイベント前に、自分で購入テストを行うこと。
ここで、恥をしのんでいいます。イベント開始の9月21日〜9月25日まで、実は注文がゼロでした。その理由は、イベント用に設定した商品の送料にミスがあり、誰もが購入完了できない状態だったのです。
具体的には、送料設定の地域区分の設定ミス。通常送料の設定と、イベント用の特別送料の設定で、地域選択が重なってしまった部分があり、日本中のどこの地域でもエラーが発生し送料が加算されずに購入完了できていなかったのです。
カートに商品はいれられているのにチェックアウト完了しないのか、それはわかっているのに原因が全くわからず大事な初動を完全に逃してしまいました。
気づいたのは、知り合いの顧客から購入できない旨メッセージがきたこと。表示されているエラーの文言をみれば一発で原因がわかることでした。
恥ずかしい初歩的なミスでした。次回以降、何かを変えたら必ず購入テストを行うこと、肝に命じています。
期間限定のポップアップではとにかくセールやイベントは強い
会期を通してShopifyの細かな改善を行っていきましたが、イマイチ売上には繋がりません。そこで、売上に直接的につながるように、週代わりのSALEを企画しました。
(期間後半には週次の限定SALEを企画)
少し奇抜なSALEタイトルですが、SALE内容はそれぞれまとめ買いでOFF、◯◯以上でプレゼント、などオーソドックスなもの。とにかく、何かしらお得で買いやすいという状態をつくることを心がけました。こちらもInstagramとXで告知。
(イベント後半で企画したSALE内容)
後半にようやく伸びた売上
同時進行で施策をうっていったので、どれがあたった施策とはいい切れませんが、以下が期間中のShopifyの売上推移です。9月21日から始まり10月27日が最終日、前半は全く売上がない日からなんとか右肩上がりに伸びました。
(期間中の売上推移)
なお、ストア流入は期間と押して横ばい。やはり、ポップアップ期間中は売上を上げるためには、コンバージョンにつながる施策に力を入れるべきことを実感します。
(期間中のストア全体のPV推移)
なぜオンラインで思ったように売れなかったのか。
さまざまな施策をうってきましたが、会期1ヶ月のサイトでの売上は、まさかの普段より大幅減少。
とにかく売れなかった原因は自分なりの分析でしかありませんが、
・蔦屋書店さんで売れたという実績を作りたかったので現地への集客をアピール ・現地でしか買えないと思われていた ・普段からの顧客との接点の積み上げが少なく一ヶ月では爆発的に伸びない ・広告運用はやらなかった
などが考えられます。要は、事前準備がたりなかったこと、やりきれていないことばかりだったと実感しています。
オフラインとオンラインの相乗効果を狙うなら、プラットフォームはShopify一択
今回のポップアップでのShopifyサイトの売上は厳しいものでした。とはいえ、この数字が出せたのも、施策をやりきれたのもShopifyだからということは断言できます。
とにかく工数や人員がない中でもやれることがたくさんある、そして自分がやりたいことを表現できる、そんな場所であることを改めて実感しました。
Shopify七転び八起き。大きく転んだので、あとは大きく起き上がるだけ。Shopify事業者のみなさん、今年も一緒にホップステップジャンプしていきましょう!