2026年8月5日、Shopifyはブラウザ上のAIエージェントが商品検索やカート操作などを行える「WebMCPツール」の提供を発表しました。WebMCPに対応したブラウザとAIエージェントを利用する環境では、お客様がAIへ希望を伝えながら、閲覧中のストアで商品を検索したり、カートを操作したりできます。
参照:WebMCP support for Liquid and Hydrogen storefronts
本記事ではShopify WebMCPの仕組みやできること、Shopifyで利用されるMCPとの違い、ストア運営者が確認しておきたいポイントを解説します。
※本記載は2026年9月時点の情報を基にしています。
ShopifyのWebMCPツールとは
WebMCPはWebサイトがブラウザ上のAIエージェントに対して、商品検索やカート操作などの機能を提供するための仕組みです。Shopifyでは、WebMCPを通じてAIエージェントが利用できる商品検索、カート操作、チェックアウトへの移動などの個別機能を「WebMCPツール」として提供しています。
WebMCPはAIエージェント向けに提案されているWeb標準
WebMCPはShopify独自の仕組みではなく、WebサイトがAIエージェント向けの操作手段をブラウザへ提供するために提案されているWeb標準です。仕様はW3CのWeb Machine Learningコミュニティグループで検討が進められています。
WebMCPを利用するには、Webサイト、ブラウザ、AIエージェントのそれぞれが対応している必要があります。2026年9月時点では、Chrome 149以降でオリジントライアル(試験提供)が行われており、ShopifyもAIエージェント側の対応はChromium系ブラウザに限られるとしています。今後、利用できるブラウザやAIエージェント、WebMCPの仕様が変更される可能性があります。
参照:Chrome for Developers「WebMCP」
Shopifyテーマを利用しているストアにはWebMCPツールが標準提供されている
Shopifyテーマ(Liquid)で構築されたストアでは、WebMCPツールが標準で提供されています。WebMCPを利用するために専用アプリをインストールしたり、設定を変更したりする必要はありません。Shopifyが提供する開発フレームワーク「Hydrogen」でも、開発者プレビュー版で構築したストアフロントでWebMCPツールが提供されています。
ただし、Shopify側でWebMCPツールが提供されていても、お客様側のブラウザやAIエージェントが未対応の場合は利用できません。
Shopify WebMCPの仕組み
WebMCPではWebサイトが用意したツールをブラウザに登録し、AIエージェントが必要に応じて呼び出します。AIがWebサイト内を自由に操作できるわけではなく、Webサイト側からWebMCPツールとして提供されている操作を実行します。
Webサイト・ブラウザ・AIエージェントの役割
WebMCPを利用する際の、それぞれの役割は以下のとおりです。
| 対象 | 主な役割 |
|---|---|
| Webサイト | 商品検索やカート操作など、AIが利用できる機能を提供する |
| ブラウザ | Webサイトが提供するWebMCPツールをAIエージェントが利用できるようにする |
| AIエージェント | お客様の依頼を理解し、必要なWebMCPツールを選んで利用する |
| お客様 | AIエージェントに商品検索やカート操作などを依頼する |
一般的なWebサイトがWebMCPに対応するには、サイト側でAIが利用できる機能を用意する必要があります。Shopifyでは商品検索やカート操作などのツールが標準提供されているため、通常のストアでは個別に用意する必要はありません。
AIがWebページを読み取って操作する方法との違い
WebMCPを使わずにAIがWebサイトを操作する場合、AIがページの構造を読み取り、ボタンや入力欄を探して操作する方法があります。
たとえば商品をカートへ追加する場合、AI自身がページ上から「カートに追加」ボタンを見つけて操作します。ただし、Webサイトごとにページの構成が異なるため、操作する場所を正しく判断できないこともあります。
WebMCPでは、Webサイト側が商品検索やカート変更などの操作をツールとしてブラウザに登録します。AIは画面上から操作箇所を探すのではなく、お客様の依頼に合ったツールを呼び出します。テーマごとに異なるボタンの位置をAIが探す必要はありません。
ChromeチームのAlexandra Klepper氏が、WebMCPを使う場合と使わない場合の操作を比べたデモ動画を公開しています。
出典:YouTube「Agentic booking with and without WebMCP」(Alexandra Klepper)
お客様が閲覧しているストア上で動作する
ShopifyのWebMCPツールは、お客様が現在閲覧しているストアのセッション上で動作します。
AIが商品をカートへ追加すると、お客様が画面上で確認しているカートにも変更が反映されます。商品ページやチェックアウトへ移動した場合も、お客様が閲覧しているタブが移動します。
カートの操作には、Shopifyが提供する標準的なストアフロントの機能が利用されます。テーマ側で商品追加時にカートドロワーを開くように設定されている場合は、AIによる追加操作でも同様の動作が実行されます。商品やコレクションの情報は、ShopifyのStorefront APIを通じて取得されます。
Shopify WebMCPでできること
Shopifyでは商品検索やカート操作、チェックアウトへの移動などに対応するWebMCPツールが提供されています。2026年9月時点で提供されている主なツールは以下のとおりです。
| 分類 | ツール | 主な機能 |
|---|---|---|
| 商品検索 | search_catalog |
商品、コレクション、記事、ページを検索 |
| ストア閲覧 | browse_store |
コレクションや商品を確認 |
| 商品情報 | get_product |
商品、価格、バリエーション、在庫状況などを確認 |
| バリエーション | show_variant |
指定したバリエーションの商品ページへ移動 |
| カート | get_cart |
カート内容を確認 |
| カート | update_cart |
商品追加、数量変更、削除 |
| カート | cancel_cart |
カートを空にする |
| チェックアウト | proceed_to_checkout |
チェックアウトへ移動 |
| 注文 | manage_orders |
注文履歴ページへ移動 |
| ストア情報 | search_shop_policies_and_faqs |
配送、返品などの情報を確認 |
参照:Shopify Developer「WebMCP tools」
商品・コレクションなどを検索する
search_catalogでは、ストア内の商品だけでなく、コレクション、記事、ページを検索できます。商品を検索した場合は、価格や販売状況なども確認でき、検索結果ページへのリンクも取得できます。
browse_storeでは、ストアのコレクションを一覧で確認したり、特定のコレクションに含まれる商品を探したりできます。お客様をコレクションページへ移動させることも可能です。
気になる商品が見つかった場合は、get_productを利用して価格、バリエーション、購入可能なオプションの組み合わせなど、詳細な情報を取得します。
show_variantは、指定されたカラーやサイズなどのバリエーションが選択された商品ページへ移動するツールです。色のみが指定された場合など、オプションの指定が一部だけでも、条件に合う購入可能なバリエーションを選択できます。
カートの商品を追加・変更・削除する
お客様がAIへ「黒のバッグをカートに追加して」「数量を2個に変更して」と依頼すると、update_cartを利用してカートを変更できます。商品を特定できない場合は、候補を返してお客様へ確認することも可能です。たとえば、同じ商品に複数のサイズがあり、お客様がサイズを指定していない場合などは、カートを変更する前に確認できます。
カートの内容を確認する場合はget_cart、すべての商品を削除する場合はcancel_cartが利用されます。
チェックアウトや注文履歴へ移動する
proceed_to_checkoutは、お客様をチェックアウトへ移動させるツールです。カートに商品が入っていることを確認してから、購入手続きの画面へ移動します。Shopifyが提供するWebMCPツールの一覧に決済を完了するツールはなく、支払い情報の入力や注文の確定はお客様がチェックアウト画面で行います。
manage_ordersは、お客様をShopifyストアの注文履歴ページへ移動させます。お客様がログインしていない場合は、注文履歴を表示する前にログインが必要です。AIが注文情報そのものを直接取得するツールではなく、お客様が注文状況や配送情報を確認できるページへ移動するために利用されます。
配送・返品などのポリシーを確認する
search_shop_policies_and_faqsでは、ストア内のコンテンツをもとに配送、返品、営業時間などの情報を確認できます。
たとえばお客様が「返品できる期間は何日ですか?」「土日も発送していますか?」と質問した場合、AIはストアに掲載されているポリシーや案内を検索し、回答に必要な情報を取得します。ストア内の情報を参照するため、配送条件や返品ポリシーなどが変更された際は、掲載内容も更新しておく必要があります。
Shopify WebMCPとShopify MCPの違い
WebMCPとShopifyで利用されるMCPは、どちらもAIからShopifyの商品情報や機能を利用するときに関係する技術です。ただし、AIを利用する場所やShopifyへの接続方法が異なります。
主な違いは以下のとおりです。
| 比較項目 | WebMCP | ShopifyのMCPサーバー |
|---|---|---|
| 接続方法 | Webページがブラウザへツールを提供 | AIアプリなどがMCPサーバーへ接続 |
| 主な利用場面 | お客様がShopifyストアを閲覧しているとき | AIサービスやAIアプリからShopifyを利用するとき |
| AIを利用する場所 | お客様のブラウザ | AIサービスやAIアプリなど |
| カート操作 | お客様が閲覧中のカートを操作 | Cart MCPなどでカートを作成・管理 |
| 主な用途 | 商品検索、カート操作、ページ移動など | 商品検索、カート、チェックアウトなど |
| 対応方法 | Liquidテーマのストアでは追加設定不要(お客様側に対応ブラウザ・AIエージェントが必要) | AIアプリ側で接続の実装が必要になる場合がある |
Shopify MCPはAIサービスやAIアプリとShopifyをつなぐ
MCP(Model Context Protocol)は、AIアプリなどが外部のデータやツールとやり取りするための規格です。Shopifyでは商品検索を担うCatalog MCP、カートを管理するCart MCP、チェックアウトを扱うCheckout MCPなど、用途別のMCPサーバーが提供されています。AIサービスやAIアプリ側からShopifyの商品情報やコマース機能を利用する場合は、MCPサーバーへ接続します。
Shopifyで利用されるMCPの種類や役割については、以下の記事をごらんください。
Shopify WebMCPとAgentic Storefrontの違い
AIを使った商品検索や購入に関連して「Agentic Storefront」という言葉もありますが、WebMCPとは異なる仕組みです。Agentic StorefrontはChatGPTなどのAIチャネル上での商品発見や購入を支援する仕組みで、WebMCPはお客様が閲覧しているShopifyストア上で、AIエージェントが商品検索やカート操作を行うための仕組みです。
Agentic StorefrontやAIチャネルでの商品発見については、以下の記事で詳しく解説しています。
Shopifyストア運営者がWebMCPに向けて確認しておきたいこと
通常のShopifyテーマを利用しているストアではWebMCPの追加設定は必要ありません。2026年9月時点で、Shopifyの開発者向けドキュメントにはWebMCPツールを無効化・カスタマイズする設定についての記載はありません。ストア運営者は、AIエージェントが参照する商品情報やストアポリシーを整備しておきましょう。
WebMCPの商品検索では、Shopifyに登録されている商品情報が利用されます。商品タイトル、説明文、価格、バリエーション、在庫状況などを正確に管理しておく必要があります。
たとえば、雨の日に使えるバッグを販売している場合、商品説明に撥水加工の有無や素材を記載しておくと、AIがお客様の希望に合う商品を探す際の判断材料になります。
配送や返品に関する質問には、ストアに掲載されているポリシーやFAQが利用されます。送料、配送地域、返品・交換条件などを変更した際は、ストア内の案内も更新してください。
まとめ
ShopifyのWebMCPツールは、Webサイト・ブラウザ・AIエージェントがそれぞれ対応することで利用できます。Shopifyテーマ(Liquid)で構築されたストアには標準で提供されていますが、2026年9月時点でお客様側が利用できるのはChromium系ブラウザのオリジントライアルに限られます。
ストア運営者が今すぐ設定することはありません。今後の利用拡大に備えてWebMCPの仕組みやできることを理解し、商品情報や在庫、配送・返品ポリシーなどを正確に管理しておきましょう。

