ChatGPTやGeminiに「おすすめの商品を教えて」と尋ね、提示された商品をその場で買う、あるいはリンク先の販売ページで買う。こうしたAIチャネル経由の購買が広がり始めています。
このような流れのなか、Shopifyは2026年3月に「Agenticプラン」の一般提供を開始しました。これは、Shopify以外のEC基盤を使っている事業者向けのプランで、既存のECサイトをShopifyへ移行することなく、AI販売用の追加基盤としてShopifyを利用できるものです。
ただし日本の事業者が使う場合は、対象地域や条件などを事前に確認する必要があります。また、すでにShopifyでストアを運営している場合には、このプランへの加入は不要です。
この記事では、Agenticプランの仕組みや料金、利用条件をわかりやすく整理します。
※本記載は2026年7月時点の情報を元にしています。
Shopify Agenticプランとは?
はじめに、Agenticプランの基本を押さえましょう。
Shopify以外のECサイトを利用する事業者向けの無料プラン

参考:AIチャネル上での商品提案例
Agenticプランは、Shopify以外のEC基盤を使う事業者向けの無料プランです。既存のECサイトをShopifyへ移行せず、Shopify Catalogを通じてAIチャネルへ商品情報を提供できます。2026年3月に一般提供が始まりました。
ただし、Shopifyを全く使わないわけではありません。Shopifyの管理画面に商品データを取り込み、既存ECサイトを維持したまま、AI販売用の追加基盤として利用します。
大がかりなシステム移行をせずにAI経由の販売を試したい事業者や、AIチャネルごとの個別連携を減らしたい事業者に適したプランです。
Agenticプランの関連用語を整理
Agenticプランを理解するうえで、あわせて押さえておきたい関連用語を整理します。
| 用語 | 役割 |
|---|---|
| Agentic Storefronts | ChatGPTやCopilotなどのAIチャネル上で、商品を発見・購入してもらうための機能群 |
| Shopify Catalog | 商品情報を構造化し、AIや外部チャネルへ提供するための商品データ基盤 |
Agenticプランでは、Shopify Catalogを通じて各チャネルへ商品情報を提供し、Agentic StorefrontsによってAI上での商品発見や購入につなげます。既存のShopifyストアでもAgentic Storefrontsを利用できるのに対し、Agenticプランは、Shopify以外のEC基盤を使う事業者がオンラインストアなしで利用するためのプランです。
Agenticプランでできることと料金
Agenticプランでできることと料金をあわせて解説します。
複数のAIチャネルに商品情報を提供できる
Shopifyに商品を取り込み、掲載要件を満たすと、ChatGPT、Microsoft Copilot、Google AI Mode・Gemini、MetaといったAIチャネルへ商品情報を提供できます。このほか、Shopify Catalogのデータを利用する販売チャネルとしてShopなどもあげられています。
一番のメリットは、複数のチャネルをShopifyの管理画面から管理できるため、チャネルごとに商品フィードや連携基盤を一から構築する負担を抑えられることです。
商品の購入方法は、チャネルによって次の2種類に分かれます。
| 主なチャネル | 購入の流れ |
|---|---|
| ChatGPT | AIが商品を提示し、自社ECサイトのチェックアウトで購入する |
| Microsoft Copilot、Google AI Mode・Geminiなど | AIチャネルや対応サービスの画面上で、Shopifyのチェックアウトを利用して購入する |
ChatGPTでは既存ECサイトのチェックアウト機能を利用するため、事業者が現在導入している決済方法や購入体験をそのまま維持できます。一方、ダイレクトチェックアウトを利用する場合は、Shopify側で決済・配送・税金・注文管理の設定が必要です。
Agenticプランでは既存のEC基盤を維持できますが、商品・価格・在庫などのデータをShopifyに取り込み、最新の状態に保つ必要があります。商品数が多い場合や更新頻度が高い場合、既存の受注管理システムを使い続ける場合は、API連携などの追加開発が必要になる可能性があります。
なお、Shopify Catalogへの掲載によって、特定のAI回答への表示や掲載順位が保証されるわけではありません。Shopifyが担うのは、商品情報をAIが読み取れる形式で各チャネルへ提供するところまでで、実際にどの商品を提示するかはAI側が判断します。
月額無料だが販売時の手数料などは発生する
Agenticプランの月額料金は無料です。ただし、コストが全くかからないわけではありません。
| 項目 | 発生する費用 |
|---|---|
| 既存ECサイトで購入される場合 | 既存サイト側の決済手数料が発生 |
| ダイレクトチェックアウトで購入される場合 | Shopifyペイメント、または利用する外部決済サービスに応じた手数料が発生 |
なお、Agenticプランには無料ティアのほかに上位の「Enterprise」ティアもあります。無制限のスタッフアカウントや運送会社料金の自動計算、拡張APIなどが利用できますが、料金は個別の問い合わせが必要です。
商品・在庫・注文データの同期を自動化する場合には、別途開発費がかかる可能性もあります。
利用できない機能や商品がある
AgenticプランはAI販売に特化しているため、次の機能は利用できません。
- オンラインストア
- Shopify Messaging
- ギフトカードの販売
- 管理画面からの手動での注文作成
- Shopの購入後オファー
また、ダイレクトチェックアウトでは、定期購入(サブスクリプション)・商品バンドル・カスタマイズ可能な商品・B2B専用商品がサポートされていません。これらが主力商品の場合は、導入前に利用できる範囲を確認しておきましょう。
日本の事業者が確認すべきAgenticプランの利用条件
Agenticプランの利用条件について解説します。
AIチャネルごとに対象地域や販売条件が異なる
利用条件はチャネルごとに異なります。以下は執筆時点の公式ヘルプに基づく整理です。
| チャネル | 主な条件 |
|---|---|
| ChatGPT | 米国のお客様に販売していること。ストアの拠点は米国外でも可 |
| Microsoft Copilot | 米国のお客様に販売している、要件を満たすストアが対象。ダイレクトチェックアウトは米国のお客様にのみ表示される |
| Google AI Mode・Gemini | チャネル自体が早期アクセス中で、全ストアには未提供。ストアの拠点が米国・英国・オーストラリア・カナダのいずれかにあり、それらの国のいずれかのお客様に販売していること。販売チャネルアプリ「Google & YouTube」による商品・配送情報の同期が必要。ダイレクトチェックアウトは米国のお客様にのみ表示される |
| Meta | ストアの所在地が米国で、米国のお客様に販売していること。販売チャネルアプリ「Facebook and Instagram by Meta」による商品同期が必要。ダイレクトチェックアウトは限定リリース中 |
Googleについては、対象4カ国のストアが商品発見の対象になり得ますが、チャット内での購入(ダイレクトチェックアウト)が表示されるのは米国在住のお客様に限られます。これはCopilotやMetaも同様です。
加えて、日本語版公式ヘルプでは、Shopify Catalogへの掲載要件として「商品をアメリカまたはカナダへ配送できること」があげられています。なお、この記載は2026年7月時点で英語版の同ページには見当たらず、日本語版にのみ存在します。
つまり現時点では、米国向けに販売している事業者がもっとも活用しやすい仕組みです。ただし、ChatGPTについてはストアの拠点を問わず、米国のお客様に販売していることが条件のため、米国向けに越境販売をしている日本拠点の事業者であれば対象になり得ます。
一方、日本国内向けに販売している事業者にとっては、Shopify Catalogや各AIチャネルの地域要件を満たしにくく、AgenticプランのAI販売機能を活用しづらい状況にあります。
DNSを管理できるドメインと商品データの準備が必要
Agenticプランを使うには、DNS設定を管理できる既存ECサイトのドメインを保有していることが、実質的な前提になります。公式の設定手順で求められる主な準備は次のとおりです。
- 既存ECサイトのドメインをShopify管理画面に追加し、DNSのTXTレコードで所有権を認証する
- 各商品に、既存ECサイトの商品ページへリンクする「外部商品URL」を設定する
- 商品名・価格・在庫・商品画像などの商品情報を登録し、最新の状態に保つ
- 利用規約、プライバシーポリシー、返品・返金ポリシーをShopify管理画面で公開する
ここで注意したいのが、楽天市場やAmazonだけで販売しているケースです。モールのドメインは出店者側でDNS設定を変更できないため、TXTレコードによる所有権の認証が行えず、そのままでは利用が難しい可能性があります。
Agenticプランを始める流れ
Agenticプランの導入は、大きく次の4つのステップに分かれます。
- Agenticプランのストアを作成する
- 商品情報を登録し、既存ECサイトのドメインを認証する
- ダイレクトチェックアウトを利用する場合は、決済・配送・税金・注文管理を設定する
- 利用したいAIチャネルを有効にする
ChatGPTでは既存ECサイトのチェックアウトを利用するため、商品発見に必要な設定まで行えば利用できます。一方、ダイレクトチェックアウト対応チャネルでは、Shopify側で決済・配送・税金・注文管理を設定し、利用するAIチャネルを手動で有効にする必要があります。
まずは商品データの整備から始めよう
Agenticプランは、既存のECサイトを維持したまま、Shopifyを追加基盤としてAIチャネルでの販売に対応できる無料プランです。特に、DNSを管理できる自社ドメインを持ち、商品や在庫情報をShopifyと連携できる事業者に向いています。
ただし、現時点ではShopify Catalogや主要なAIチャネルの地域要件が北米を中心に設定されているため、日本国内向けに販売する事業者には活用しづらい状況です。
AIがどの商品を提案するかは、最終的にAI側が判断します。対象地域の拡大に備え、商品名・説明文・価格・在庫などの情報を正確に整え、すぐに連携できる状態を作っておくとよいでしょう。