Shopify Network Intelligenceは、Shopifyが複数のストアで蓄積されたデータをもとに、パーソナライズや検索性向上、広告最適化などの高度な機能に活用する仕組みです。
便利な機能に見える一方で、有効化するとプライバシーポリシーの見直しや販売地域ごとの法対応が必要になる場合があり、無効化すると一部のShopifyの純正アプリが使えなくなります。
有効化するべきかどうかを感覚で決めずに、自社のストア運営や販売地域、現在使っている機能に照らして検討することが大切です。
この記事では、Shopify Network Intelligenceを有効化するべきケースや、有効化に向けて必要な準備まで整理して解説します。
Shopify Network Intelligence とは
Shopify Network Intelligenceは単独の機能ではなく、複数のShopifyアプリの利用に必要な基盤です。ここでは基本的な仕組みと、ストア運営への影響を整理します。
仕組みと基本的な考え方
Shopify Network Intelligenceは、Shopifyが自社ストアの顧客データを他マーチャント由来のデータやShopifyのデータと安全に組み合わせ、高度な機能に活用する仕組みです。
有効化すると、Shopifyは顧客データを他のマーチャントのデータと安全に組み合わせて分析し、Enhanced Services(拡張サービス)と呼ばれる高度な機能を提供します。
誤解されやすい点ですが、他のマーチャントが自社の顧客データへ直接アクセスすることはありません。データが他社に直接見える仕組みではなく、Shopifyが集約・分析したうえで各拡張サービスに活用します。
Shopify Network Intelligenceを有効化すると使えるアプリ
Shopify Network Intelligenceを有効化すると、以下のアプリ・機能を利用できます。
- Shop チャンネル
- Shopify Messaging
- Shopify Search & Discovery
- Shopify Audiences
- Shopify Collabs
- Shopify Product Network
日本を拠点にするストアで影響が大きいのは、Shop チャンネル・Shopify Messaging・Shopify Search & Discovery かと思います。
Shopify Audiences、Shopify Product Networkは拠点やShopify プランの制限があり、日本国内のストアはあまり聞き馴染みのないアプリかもしれません。
Shopify Network Intelligenceを無効化するとどうなるか
Shopify Network Intelligenceを無効化すると、対象アプリや機能へのアクセス制限やアンインストールが即時に反映されます。
Shopify 管理画面の設定 > お客様のプライバシー から「無効化」を選び、影響を確認したうえで「アンインストール」と入力して実行します。
無効化前には影響を受ける機能一覧が表示されるため、現在利用中のアプリや機能を確認したうえで実施しましょう。
また、再度有効化してもアンインストール済みアプリは自動で復元されません。再インストールと再設定が必要になります。

Shopify管理画面:Shopify Network Intelligenceを無効にする
Shopify Network Intelligenceを有効化するかの判断基準
Shopify Network Intelligenceを有効化する必要があるかどうかは、ストアが利用している機能や販売先に左右されます。
有効化が向いているストア
Shop チャンネル・Shopify Messaging・Shopify Search & DiscoveryなどのShopify標準機能を活用したいストア、自社で大規模な分析基盤を持たずShopifyの機能拡張で成果を上げたいストアは、有効化に向けて準備を進める必要があります。
標準機能を活かして運用負荷を下げたい事業者ほど、オンにするメリットを感じやすいでしょう。
慎重に判断したいストア
複数の国や地域に向けて販売しているストアは、導入を慎重に検討する必要があります。
地域ごとに求められるプライバシー対応が異なり、たとえば米国の一部州では、この機能を有効にすると顧客データの利用が「広告目的の共有」や「ターゲティング広告」にあたると見なされる可能性があります。対象となる顧客がこうしたデータ利用を拒否できるよう、オプトアウトの手段を求められています。
また、EEA・英国・スイスでは、広告目的などで顧客データを利用する際に、あらかじめ同意を得ることや、同意を後から撤回できる仕組みが必要です。
越境ECを行うストアでは、法務や個人情報保護の担当者と一緒に、Shopify Network Intelligenceで利用する顧客データの範囲を確認しましょう。
日本のEC事業者が確認したい法規制
日本国内のみで販売しているストアは個人情報保護法への対応が中心になりますが、越境ECを行っている場合は販売先の地域ごとに追加の対応が必要です。
個人情報保護法との関係
自社のプライバシーポリシーや利用目的の説明が、実際のデータ処理内容とずれていないかを確認することが重要です。
詳細なデータ利用の説明はプライバシーポリシーに記載し、利用規約では「個人情報の取扱いはプライバシーポリシーに従う」と整理する形が一般的です。
最終的には法務確認が必要ですが、以下の内容をプライバシーポリシーに盛り込むとよいでしょう。
- ストアがShopifyを利用して運営されていること
- Shopifyが顧客データを処理すること
- 取得・利用する情報の種類(例:閲覧履歴、購買履歴、検索行動、サイト利用状況など)
- データの利用目的(例:注文処理、顧客対応、サービス改善、パーソナライズ、広告・マーケティング最適化、検索やレコメンドの改善など)
- Shopify Network Intelligence などの機能により、顧客データが分析・活用される場合があること
- Shopifyや第三者と情報を共有する可能性があること
- 外国に所在する事業者・第三者にデータが移転・共有される可能性があること
- その場合の提供先の国・地域や、関連する案内先
GDPRと米国州法との関係
ShopifyではEEA・英国・スイス向けには広告目的に関する同意取得と撤回導線、米国の一部州向けにはオプトアウト方法の掲載を求めています。日本国内だけの販売では不要ですが、越境ECをしているストアでは顧客の住居に応じて対応が必要です。
Shopifyヘルプページ「ロケーションに応じた追加要件」にも記載されています。
EEA・英国・スイスの顧客がいる場合(GDPR)
- Cookieバナーの設置(オプトイン同意)
- 同意の撤回導線を提供する
- プライバシーポリシーに以下を追記
- Shopifyがデータを処理すること
- データが他国の第三者と共有される可能性
- Shopifyプライバシーポータルへのリンク(同意撤回・異議申し立て用)
- ShopifyコンシューマープライバシーポリシーURLへのリンク
米国の一部州の顧客がいる場合(CCPA等)
- データ共有オプトアウトページの設置
- プライバシーポリシーに以下を追記
- データの「販売」「共有」「ターゲット広告」への使用について
- オプトアウト方法へのリンク
地域問わず共通
- プライバシーポリシーに Shopifyのコンシューマープライバシーポリシーへのリンク
- ストアがShopifyでホストされ、Shopifyが顧客データを処理する旨の記載
- 利用規約にも同様の記載
同意管理ツールの確認ポイント
ユーザーへのCookieやデータ共有の同意はShopifyの標準機能、もしくは同意管理ツールで取得することができます。
Shopify Network Intelligence対応に合わせて運用体制を見直すことで、対応漏れを防ぎやすくなります。
CookieバナーやCookie同意管理ツールの実装状況
Shopify標準のCookieバナー、またはCustomer Privacy APIに連携した外部のCookie同意管理ツールを使っている場合、顧客の同意選択をShopify Network Intelligenceにも反映できます。
ただし、そのツールがShopifyのCustomer Privacy APIに対応していないと、Shopifyには「拒否された」という情報が連携されない可能性があります。Shopify Network Intelligence の設定を確認する際は、あわせて現在利用している同意管理ツールの実装状況も見直しましょう。
データ共有オプトアウトページ
米国州法対応では、データ共有やターゲティング広告に関するオプトアウトページへのリンクが必要になる場合があります。
データ共有オプトアウトページの機能を利用し、該当地域へ販売しているストアは、プライバシーポリシーからの導線や表示地域設定まで確認しておく必要があります。
Cookieバナーだけではなく、どの地域にどの導線を表示するかまでチェックすることが重要です。

Shopify管理画面:データ共有オプトアウトページ
設定方法はShopifyヘルプページ「データ共有のオプトアウトページを追加する」に記載されています。
Shopify Network Intelligenceを有効化する実務フロー
有効化に向けて、実際にストアで確認したいポイントをまとめました。
有効化前のチェックリスト
有効化前に以下の3点を確認しましょう。
- Shopify Search & DiscoveryやShop チャネルなどの対象機能を使っているか
- 米国やEEAなど越境販売先があるか
- プライバシーポリシーやCookie同意文言が設定されているか
これらを確認することで、必要な対応範囲を判断できます。たとえば複数の地域に販売しているストアの場合、顧客の所在地によって適用される法律と対応内容が異なります。
顧客の所在地ごとの対応範囲の例を以下に示します。
| 顧客の所在地 | 適用される可能性がある法律 | Shopifyが求める対応 |
|---|---|---|
| 日本 | 個人情報保護法 | Shopify公式は直接解説なし。自社で要確認 |
| EU・英国・スイス | GDPR | • Cookieバナーで同意取得 • オプトアウト導線の設置 |
| 米国の一部州(CA・VA等) | CCPA等の州法 | データ共有のオプトアウト導線の設置 |
管理画面で設定を確認する
Shopify 管理画面の設定 > プライバシー から「Shopify Network Intelligence」が現在オンかオフか確認することが可能です。

プライバシーポリシーに追記する
Shopify Network Intelligenceを有効化する場合、プライバシーポリシーにShopify Consumer Privacy Policyへのリンクを掲載し、ストアがShopify上で運営されていること、Shopifyが顧客データを処理すること、場合によっては他国の第三者にも共有されることを説明するよう求めています。
詳細な要件はShopifyヘルプページ「お客様への通知に関する要件」も合わせてご確認ください。
Shopifyの自動プライバシー設定
Shopifyではテンプレート型のプライバシーポリシーの自動更新、Cookieバナー、データ共有オプトアウトページを用意しており、Shopify Network Intelligenceの変更も自動反映の対象に含まれています。
ただし、販売地域や運用実態によっては公開範囲や内容を手動で調整する必要があるため、自動設定に頼りきらず、ストアの状況に合わせて内容を確認しておくことが重要です。

Shopify管理画面:お客様のプライバシー設定
まとめ
Shopify Network Intelligenceは、自社の運用体制や販売地域に照らしたうえで有効化を判断すべき設定です。
現在の設定状況、利用中機能への影響、販売地域ごとの法対応を順に確認することで、有効化・無効化の判断がしやすくなります。
Shopify標準機能を活かしたいストアには有力ですが、越境ECを行う場合は、プライバシーポリシーや同意管理、オプトアウト導線まで整えたうえで進めることが重要です。