Shopifyストアを運営しているみなさん、「SimGym」を使ったことはありますか?
「SimGym」は、ShopifyのAIが仮想の買い物客としてストアを回り、改善点をアドバイスしてくれるShopify公式の機能のこと。2025年12月のWinter '26 Editionで「AIリサーチプレビュー」として公開されて、日本では2026年3月中旬から利用できるようになっています。
しかも、無料枠あり。毎月更新される月ごとの無料枠があり、無料枠を使い切った後は1回ごとの課金で、1テーマのシミュレーションが0.75米ドル、2テーマの比較が1.50米ドル。実行前に金額が表示され、完了したときだけ課金される形式です。(2026年10月現在)
これ、格安だと思いませんか?やるっきゃないっしょ!と、私が運営する味噌専門店のShopifyストアで、2026年7月にSimGymを使ってみました。そして、SimGym先輩の所見をもとに施策を4つ打ち、3ヶ月後の10月に結果を振り返ってみました。
この記事はその全記録です。SimGymからどんなアドバイスがくるのか、それをどう捉えてどう使ったか、そして3か月後にストアに何が起きたかを、包み隠さず紹介します。
なお、検証の前提として、施策前の約3ヶ月の月間平均注文は数十〜百程度と、小さな店の個別の記録でありSimGymの統計的な証明ではないのでご注意ください。
SimGymでは何ができるのか
SimGymは、Shopifyのアプリストアからアプリをインストールして始められます。管理画面では「AIリサーチプレビュー」といった説明。検証を始めると、AIの買い物客150人がストアを回り感想を教えてくれます。所要時間は約10分前後。

図1: SimGymのトップ画面。AIリサーチプレビューの表示
SimGymの調査で出てくるのは以下の2種類の情報です。
- 所見:「推奨」「メニュー」「商品調査」「トラストシグナル」の4区分で、改善案や評価がテキストで出される
- 買い物客ファネル:訪問、商品閲覧、カート追加、チェックアウト到達の人数。あわせて、カート追加率と平均カート金額が出る
なお、画面上部にはこういった注意書きがあります。
「SimGymはリサーチプレビューです。シミュレーション結果の正確性を確認し、主要な結果を検証してください」。
ツール自身が、結果の検証を求めていますね。まだまだこれからの機能であることを再確認しましょう。

図2: 7月の実行の結果画面。所見の一覧と買い物客ファネル
図2は、7月にSimGymを実行した結果画面です。基本的にはすべて英語なので、翻訳機能などを別途使用する必要があります。少しめんどくさいですが、アウトプットをみるとそれくらいは全く苦にならない。このアウトプットを見た段階では期待が膨らみます。
7月にSimGymを使い、でてきたアドバイスは?
SimGymでは調査の仕方を2種類選ぶことができます。
- 今のホームページのテーマを分析するか
- 2つのテーマで構築されたサイトを比較するか
どうやらSimGymは、サイトのUIを主軸にしてAIレビューするアプリのようです。
私は「今のホームページのテーマを分析」を選択しました。サイトはDawnで構築し、CSSカスタマイズを少々していますが、基本的にLiquidはほぼいじっていないサイトです。
そしてAI顧客の買い物が始まり、待つこと12分24秒。SimGymから提案された主なアドバイスは次のとおりです。
- おやこみそ(自社商品)の通常商品ページに、定期購入の価値を伝える表示を足す
- オンラインショップのサブメニューに、「汁物」の入口を作る
- 検索で「ソース」「醤油」の結果を改善し、セット商品や加工品コレクションが出るようにする。
- セール・アウトレットのコレクションを広げるか、対象範囲を明示する
- 英語での検索語の対策をする
- 商品ページから、ブランドストーリーのページへリンクを張る
- サイト全体がセット商品に偏って見えるので、単品商品の見せ方を整える
- ブログ記事に商品リンクが少ないので、増やす
- ブログ(MISOZINE)は、発見と信頼づくりに効いている(評価)
- ブランドストーリーのページが、購入の確信を作っている(評価)
ファネルの数字は次のとおり。
| 段階 | 人数 |
|---|---|
| 訪問 | 150人 |
| 商品を閲覧 | 150人 |
| カートに追加 | 41人 |
| チェックアウトに到達 | 38人 |
カート追加率は27.3%、チェックアウト到達率は25.3%。ECサイトの実際のCV率から考えると、いい数字。良すぎる数字です。
もらったアドバイスを鵜呑みにせずに検証して却下した施策
SimGymのアドバイスは一目見るだけでも的外れに感じるものもあり、その時点で鵜呑みは厳禁とわかります。2段階で裏取りをしていきましょう。
- ストアフロントで実測する。指摘どおりの画面になっているかを、実際に開いて確かめる。
- 実注文と突き合わせる。その箇所で、顧客が実際に困っているかを注文データで確かめる。Shopify Admin APIの読み取り専用アクセスで、注文を取得し確認。
そして、SimGymで提案されたアドバイスを取り入れるか、取り入れるならどう実行するかを判断していきます。以下は取り入れなかった意見です。
英語の検索語への対応
AIの買い物客が英語で検索する癖によるものと判断しました。ストアの実顧客はGoogle経由でも日本語検索が中心で、ほぼ100%日本在住の日本人の方です。実測では英語の検索語からの流入もなくはないのですが、優先度は低いと判断しました。
汁物のメニュー階層を作る
実際のストアの顧客はGoogle検索・直接リンク・Instagramから商品ページへ直接到達するのが大半で、メニューをたどって探す行動が少ないことはGA4からわかりました。AIが迷ったことと、客が迷って離脱していることは別と判断。
セット商品への偏りの指摘
単品商品も、ページやクエリ検索で相対的に露出が少ないわけではありませんでした。実注文の内訳でも、セット商品が多く買われているなどの偏りは出ていません。これは完全に誤認。
記事に商品リンクがないという一般的な指摘
確かに記事に商品リンクがあるといいかもしれませんが、全記事に当てはめる施策としては大げさと判断しました。全記事に導線が入っていると間違いなくウザい。離脱が増えるでしょう。
一応精査すると、入れるべき記事に商品リンクがゼロの記事が2本あったので、その2本だけ対応。
SimGymのアドバイスをもとに対応した施策
ほとんどのアドバイスを却下するかたちにはなりましたが、実際に「これはいいかも」と実行した施策が4つあります。検証の3日後に実施しました。
麦味噌の再入荷
人気の定番商品、麦味噌が完売したままになっていることに、うっかりしすぎた私は気づいていませんでした。
ここは大事なところですが、SimGymの直接のアドバイスに麦味噌の在庫切れが含まれていたわけではありません。アドバイスを実注文と在庫に突き合わせる途中で、完売のまま放置され、再入荷通知もオフになっていることに気づきました。そこで発注し、再入荷通知をオンにしました。
そして今は、売り切れても予約販売で注文を受けられる仕組みに変えています。
検索の類義語を追加
7月のアドバイスで「ソース」「醤油」の検索結果を改善せよとの指令を受けて、Search & Discoveryで「しょうゆ」「ソース」「調味料」の3語を類義語として追加しました。
記事2本への商品リンク追加
前述の通り、商品リンクがゼロだった記事2本に、商品ページへのリンクを足しました。
在庫・コレクションの整理
在庫切れ商品の扱いと、商品がなくなったことに伴うコレクションの構成を見直しました。
さて3か月後、どうなった?
やりっぱなしでは全く意味はありません。すぐに成果がでるとは思いませんが、改善できてこその施策。SimGym先輩からの教えをもとに対策し、3ヶ月ほど待ちました。
売れ筋の麦味噌は再入荷後は注文が増えた。ただし他の施策と重なる
麦味噌が検証の時点では完売のまま、再入荷通知もオフでした。その後SimGymの検証を受けて再入荷を対策し、検証前後の30日あたりで比べると、注文数は約3倍、個数は2倍強です。
| 期間 | 注文数(前90日の30日あたりを1とした比) | 個数(同) |
|---|---|---|
| 前90日(4月11日〜7月10日)の30日あたり | 1 | 1 |
| 再入荷後30日(7月14日〜8月12日) | 約3倍 | 2倍強 |
| 後90日(7月13日〜10月10日)の30日あたり | 約4倍 | 2倍強 |

図3: 麦味噌の月別販売数グラフ(4〜10月)。7月と9月に山があります。
これがSimGym施策のおかげかというと、ふたつの見方があるでしょう。
7月の山には、再入荷前の7月上旬に売れた分(7月の約半分)を含みます。9月の山は半額SALE号のメルマガなど、他の施策と重なっています。再入荷だけの効果とは言えません。再入荷通知の登録者数は、アプリ側のデータで、今回は集計できていません。
その後、人気の麦味噌は10月時点で再び在庫切れになりました。ただし、商品ページのボタンは「予約販売」に変わり、注文を受け付けています。

図4:麦味噌の商品ページ。在庫切れでも予約販売ボタンで注文を受けている画面
図4は、麦味噌の商品ページです。7月の「完売のまま」から、「売り切れても予約で受けられる」状態に変わりました。
検索の類義語:「しょうゆ」は0件のまま
10月にストアフロントで検索した結果は、次のとおりです。
| 検索語 | 結果 |
|---|---|
| しょうゆ | 0件 |
| 醤油 | 7件 |
| しょう油 | 1件 |
| ソース | 24件 |
| 調味料 | 22件 |
| 味噌(参考) | 34件 |

図5: 「しょうゆ」で検索すると0件になる画面(PC)
ただし、表記が違えば結果は出ます。

図6: 「醤油」で検索すると7件が表示される画面
「ソース」「調味料」で結果が出るのは、商品説明文にその語が含まれているためと考えられます。類義語を追加した効果とは言えません。
これはShopify側の仕様変更が関わっています。Search & Discoveryのメニューに「類義語(廃止)」と表示され、説明ページにはこう書かれています。
Search & Discoveryでは、類義語を作成または管理できなくなりました。
以前に追加した類義語は、厳密なルールとしては適用されません。特定の検索語に特定の商品を出したい場合は、「商品の販売促進」を使う仕様に変わっています。

図7: Search & Discoveryの「類義語(廃止)」画面
7月に追加した3語は、管理画面に保存されていても特にルールで効いていたわけではなさそうです。なお、廃止の時期は確認できていません。気づかないうちに仕様が変わる、それがShopify。
「しょうゆ」の0件は、直さないと判断しました。以下がその理由です。
- 味噌屋に醤油を探しに来た客へ、味噌を出しても買わない。
- 0件になる検索の需要が実測でゼロ。
- 直す手段が、「商品の販売促進」という別の仕組みに変わった。

図8: Search & Discoveryの検索パフォーマンス(直近30日)。「結果のない上位の検索」はデータなし
上位の検索は、「miso soup」3回、「いいちみそ」3回、「おやこみそ」2回でした。英語の検索は、ゼロではありませんが、月3回の規模です。
記事リンクと在庫整理:単体では測れない
記事2本への商品リンク追加と、在庫・コレクションの整理は、単体で効果を測れる規模ではなかったので未計測。
結局どうなった?全体の注文数は増えた。ただしSimGym施策の効果とは言えない
施策後の物販の注文数と売上は、前90日と比べると約1.6倍でした。
ただ、注文数増えた!さすがSimGym!とは必ずしも言えなそうです。以下がその理由。
- 施策前の週次計測が2週分しかなく、平均週のばらつきがわからず、増加と通常の振れを区別できない。
- 他の要因が重なった。9月には半額SALEがあり、ワークショップの告知メールも配信。
月別に見ると、4月から9月の物販の注文数は、最も少ない月と多い月で約5倍の開きがあります。7月は、施策前の上旬にセール期間の注文が集中していました。月ごとの件数がこれだけ動くため、2週分の計測では比較の土台になりにくいでしょう。
10月にもう一度SimGymで検証を回してみたら
そこで、同じ「ホームページのレビュー」を、もう一度実行しました。7月の実行と並べると、次のとおりです。
| 項目 | 7月の実行 | 2回目の実行 |
|---|---|---|
| 所要時間 | 12分24秒 | 7分7秒 |
| 訪問 | 150人 | 150人 |
| 商品を閲覧 | 150人 | 143人(95%) |
| カートに追加 | 41人(27%) | 115人(77%) |
| チェックアウトに到達 | 38人(25%) | 6人(4%) |
| 平均カート金額 | 444.20円 | 1,039.13円 |

図9: 2回目の実行の結果画面。同じ150人でファネルの形が7月と大きく違う
2回目のAI顧客たちのアドバイスは、次のとおりです。
- 売り切れの商品ページ(味噌加工品)に、「ほかの商品も見る」導線を足す。
- ブログ記事から、本文で触れた商品へ直接リンクする。
- 「インスタント味噌汁」のコレクションを、トップのナビゲーションから見つけやすくする。
- 味噌加工品のコレクションから、主要な味噌・セットのコレクションへリンクを張る。
- 調味料や食材の一般的な語で検索しても、関連する結果が返るようにする。
- 主要な味噌の商品ページに、お客様レビューを足す。
- メインナビのSALE/OUTLETが、よく見られていた(評価)。
- 「Why We Do Miso」「About Us」のブランドストーリーが、購入の確信を作っている(評価)。
SimGymを2回を実行してわかったこと
同じ系統の所見が繰り返し出る。
調味料系の検索、ブログから商品へのリンク、汁物の入口が、2回とも出ました。7月に対応しなかった汁物の所見も戻ってきました。検索は、実際には30日で0件の検索を打った客がいなくても出ます。出る回数は、所見の正しさを保証しません。
ファネルの率は、回ごとに大きくぶれる。
カート追加は27%から77%、チェックアウト到達は25%から4%でした。3か月のあいだに施策を打っているため、変化の一部は施策の影響かもしれません。ただ、画面からは、施策の影響とシミュレーションのぶれを区別できません。率は成果指標にしません。
売り切れのページにも所見が付く。
2回目は、売り切れの商品ページに関する所見が出ました。麦味噌ではなく、別の味噌加工品の商品です。
SimGymを使うかはあなた次第
結局、SimGymは使うと効果的なのでしょうか。私の答えは、「人による」、という元も子もない言い方。
しかし、これはSimGym活用に限らず全EC運用に共通すると思っていまして、担当者のEC素養やマーケティングへの知見、商品や顧客理解の度合い、ビジネス理解によって、SimGymの読み方が変わりプラスにもマイナスにもなるということです。
その上で、SimGymを使うみなさまへ普遍的な情報として以下をお伝えしたいです。
あくまでAIの仮説である
SimGymの所見は数分で出て、動きをみていてもちゃんとストアを回遊しているようにみえます。つまり、根拠がある程度ありそう。ただし、その所見はあくまで「仮説」であること。同じ所見が2回出ても、実際のお客様が同じ場所で困っているとは限らないのです。
結局効いた施策は自分でみつけた
効いた可能性がいちばん高いのは、売れていた商品を買える状態に戻す、という当たり前の施策です。ただし前述のとおり、再入荷だけの効果とは言えません。そして、SimGymが直接指摘したわけではなく、アドバイスを裏取りする途中で見つけたものです。
結果がでるのは時間がかかる
3か月後に確かめないと、効いたかどうかはわからない。類義語のように、施策の前提がプラットフォーム側の仕様変更で消えていることもあります。
SimGymは、ストアを見直すきっかけを10分でくれるツールです。そこから先の裏取りと、施策前の計測と、3か月後の確認は、自分でやる必要があります。それができる人には役に立ちますし、所見をそのまま実行する使い方だと、効いていない施策を効いたことにしてしまいます。
SimGymの使い方をまとめてみる
私が7月から10月に踏んだ手順を、短く整理します。
- SimGymを回す。所要は10分前後。余裕があれば間をあけてもう1回回すと、同じ所見が出るか、率がどれだけぶれるかがわかる。
- 所見を仮説として一覧にする。評価の所見(良い点)も同じ一覧に入れる。
- ストアフロントと実注文で裏取りする。画面で確かめ、注文データで客の動きを確かめる。
- 対応する・しないを、理由つきで記録する。対応しない所見も、理由と一緒に残す。同じ所見は次に回したときもまた出てくるので、理由を書いておけば毎回迷わずに済む。
- 施策の前に、同じ指標を4週以上取っておく。3か月後に、同じ数え方で数える。確認は管理画面とストアフロントの両方を開いて行う。
なお、4週は厳密な根拠のある数字ではありません。2週では比較できなかったことと、月ごとの件数が約5倍動くことから置いたあくまで弊社のラインです。
10月の今のストアでは、また一段、施策を検討する段階です。SimGymのアドバイスについてネガティブなこともあげましたが、SimGym自身が言っているように、まだまだ検証の段階。私は引き続きSimGymには期待したいと思います。
SimGymを活かすも殺すも、まずは自分のECの地力をつけてこそ、です。また3ヶ月後に検証を回し、結果はどうなったか、記事で会いましょう。